会話
ローガンが目を覚ます。
自分はいつ寝てしまったのかと、慌てて起き上がろうとすると場所に違和感をもった。
「どこだ...ここは」
全くの見知らぬ部屋。怪我をした部分にローガンが施した雑な手当じゃない治療がされていた。いつの間にか顔の塗装が消えており、抱いていたはずのエオローがいなくなっていた。慌てて身を起こすとベットからほんの離れた目の前にある椅子に置かれていた。駆け寄ってみるがやはりピクリとも動かない。
それにローガンは何故寝てしまったのか分からずにいた。それとも何かの攻撃でいつ間に捕まってしまったのかとも考えた。が、ここは異様に生活感があり過ぎた。刑務所の中でもなければ病院でも無い。
ローガンは枕元に置いてあったランプを持ち、この部屋唯一である扉をゆっくり開けた。
扉の奥にはアダムズらしき背中があった。椅子に座って何やら釘を打ち込んだりと作業をしている。
他には誰も居らず、人の気配も無かった。
改めてローガンはアダムズとの立ち位置に疑問を持った。職業柄敵だろう。だが出会って後半、鬱陶しくはあったが敵意を感じなかった。だが、もし敵であるなら。ローガンを陥れる罠かもしれない。そうなのなら今うちに...
ローガンはランプを握り直した。そして1歩、アダムズに近ずいた時、ギギギッっと床が軋む音が響いた。
アダムズが振り返る。
「あぁ、起きたのか」
アダムズが振り返った。机には長方形に作られた片手で持つことができるくらいの木箱があった。
「目が覚めて良かった。気分はどうだ?怪我の方は━━」
アダムズは椅子から立ち上がりローガンに歩み寄った。
怪我の様子を見たいのか手がのびてくる。ローガンはそれを思わず払った。二人の周りの空気が凍る。アダムズは怒っただろうと部屋にランプを戻しに戻ろうとした。だが、視界の端にアダムズは哀しげに薄く笑っていた。意外なとこを見て目を丸くしたローガンだが、そのまま行こうとすると背中からアダムズの変わらない声がかかった。
「スープを作ったんだ。傷を治す為にも食べたらどうだ?」
ローガンはそのまま扉を閉めた。
2人の間の沈黙が酷く重苦しく、閉じた扉の奥から断りの返事を無言ながらも返しているような感じがしたが意外にもローガンはすぐ出てきた。
ローガンはただただランプを戻しに行きたかっただけなのだ。
2つの器にスープをよそっているアダムズにローガンは背中に問を投げた。
「答えろ。何故私を捕まえない?何故わざわざ怪我を手当した?」
「.....」
スープの入ったお玉を持つ手が止まった。
「私は今まで国のためにこの身を捧げてきた..」
そして語り出す。だが、作業は中断させずに木箱が乗ったテーブルの上を綺麗にしてよそい終わったらしいスープを2椀スプーンと一緒に置いた。アダムズは椅子に座り、ローガンに食べるように促す。続いて座るがスプーンを握ろうとしない。見かねたアダムズは毒なんて入れてないよと先に食べて見せた。
「全ては罪を犯した人外を改心させ僕らの生活に支障を出させないためだ。人外が嫌いな訳じゃない。むしろ僕なりに天然記念物達との対応を考え、いつかは互いを尊重し合うようになればいいとずっと思ってきた」
ローガンはまだスープを食べずにいる。ずっと、スプーンで中を弄るように混ぜるだけだ。
アダムズは次第にスプーンを持った手が止まり、熱を帯びるように語り口に力が入った。スープを一気飲みする。
「なのにその国が知らんぷりとは酷いじゃないか!一言物言ってやる...!」
ドンッと器を行き良いよくテーブルに叩くように乱暴に置く。幸いにも器は木製で割れることは無かった。
深いため息をついてと「おかわりする」と言って席を立ち、後ろに置いてあった鍋からスープを再度入れた。
ローガンはそんなアダムズの背中を見てほんの一口、スープを食べた。
(美味しい...)
アダムズが席に戻ってくる。具沢山に入れられた野菜に並々に入れられたスープを見てローガンは小さく吹き出した。
それが聞こえたアダムズも口角を上げる。
「君の話も聞きたいな。質問は山ほどあるんだ」
話題がローガンに振られる。急に振られたためにスープを食べる手が止まった。
「君の、その...食べてしまうような力?は、なんだ?」
先までの明るさとは反対に少しアダムズの顔に恐怖がチラつく。
そんな様子だが、ローガンはなんでもないように話した。言っても言わずとも後にはどの道知られると思った。
「これは私たちウルズという種が持つ力だ。なんて事は無いが、できるとさえ思えば食べ、留めて、出し入れする事ができる」
「どんなものでも?」
「おそらく」
「そうか...じゃあ、もう1つ」
アダムズは真っ直ぐにローガンを見つめ、至って真剣な顔をして問いた。
「そんな力を持っていてこれからどうするつもりだ」
ローガンほんの少し、考える素振りをして答えた。
「仲間に撃たれたあの男はエオローのような状態の人外を何度も見たような口ぶりだった。もし、あの刑務所では今もクズのような奴に人外が弄ばれてるんだとしたら、」
ローガンの持っているスプーンからミシッと折れる手前の音がした。
「助け出し、家に返す」




