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人外の狂涛  作者: 江華
10/15

弾丸

奥から来たのはアダムズの上官であった。彼は扉が開いているやら、人外が平気で彷徨いているやらで酷く驚いた。だが、1番最初に1番驚いたのは彼が管理しているはずだったスライム状の人外が脱走していた事だった。しかもそれを人外が持っている。上官は部下のアダムズを叱責しつつ、スライムの人外...エオローを取り上げようとローガンに迫った。


「お前ら!こんな所で何やってるんだ!その人外を今すぐ離せ!」


アダムズとローガンは突然の介入者にほんの少しの間、フリーズしてしまった。

ローガンの腕の中に向かって上官の手がのびる。明らかに脅威と感じ取ったローガンはアダムズから上官へとタゲを変更した。

その時点でアダムズが我に帰った。


「離れて下さい!やつは今危険な状態です!近付かないで!」


アダムズがそう叫んだのと同時に既に2人の距離は2mも無く、ローガンはいつの間にか持っていたゴムハンマーを手錠がついたままの腕で思いっ切り振りかぶった。上官は左肩を強く強打した。


「ぐああッッ!!!」


肩を強く押さえ倒れ込む。その時、ローガンの右足に2発の弾丸が食い込んだ。


「あ”あ”ッ!!」


一応弾は当たるんだと再確認できた。

ローガンが地面に膝をつく。その時の勢いが強かったのか、ローガンの長髪の肩の部分からエオローがベチャッという音と共に転がり出てきた。


「エオロー...!」


ローガンは血の滴る足を引き摺り、ハンマーを手放しエオローを抱き寄せた。


「ォォ、ァン...ィゲェエェ......」


心做しかエオローは先程より力無い様に見えた。

上官は今だ地面に倒れ伏している。

ローガンが這いずって上官の元に行った。エオローはその途中、地面にぐったりと伏した。ローガンは上官の胸ぐらを掴む。


「お前っ、エオロー...あの人外について、知っている事全部話せっ」


アダムズは再び銃を構えたが撃ちはしなかった。エオローの真相をアダムズも知りたかったからである。今、ここで仕事通りにローガンを片付けてしまうと、うやむやにされてしまいそうな気がしたからだ。


「なんの事だっ!おいっ、お前ぇ!早くこいつを撃てっ!」


ローガンが胸ぐらをもう一度強く引っ張る。


「とぼけるな!この人外はお前らが見てたんだろ!?こいつに一体何をしやがったんだ!言わねえと今度はドタマぶち抜くぞ」


と、ローガンはどっから持ってきたのか拳銃一丁、上官の眉間に銃口を当てた。

途端に上官は自分の腰周りに手をやった。しかし手は空を掴むだけで何もない。上官の顔がどんどん真っ青になっていった。どうやら上官が装備していた銃を奪ったらしい。

エオローの情報は知りたいが上官を見殺しにしてまですることでは無いとローガンの銃を持っている左腕を狙った。


「しっ、知らねえよ。最近上層部に人目につかないバレない場所に置いとけって命令されるんだ。渡される人外はみんな見た事ない見た目で。何聞いたって何も答えちゃくれねえよ」


ローガンが目を見開き、人間の悪というものを真に受けて絶望した。

アダムズは震えていた。拳銃を持つ手もそれに踏ん張る足も狙いを定める瞳も何もかも震えていた。


「そんな事をして許される訳が...いずれ国に知られる

そもそも天然記念物を無断で好き勝手できるはずが無いんだ...それなのにみんなというのはまさか...!?」


ローガンは怒りのまま力が向く方へと感情に身を委ねて上官を殺そうと引き金に力を込めた。

瞬間、その左腕に銃弾が1発当たった。ローガンの持つ拳銃が落ちる。


「ッ〜〜ぁ”あ”!!!」


アダムズにとって上官を守ろうとすべく撃ち抜いただけに過ぎない。だが、あまりにもエオローの成り行きが酷かったために本当に味方でいるのは人間で良かったのかと迷いが生じた。

その時、建物全体に大音量のサイレンが鳴り響いた。

アダムズは時間がきていたんだと気付いた。ローガンを追う前、同僚が倒れているところを目撃。異常を感じ取ったアダムズは防犯カメラなどの映像室、監視部に自分が10分経って連絡が無かったら救援の要請を、とお願いしていたのだ。

ローガンは妙な騒ぎを感じ、異常を知る為壁を背もたれにそばに落ちた拳銃を持って立ち上がる。人質に取られた上官も立たされる。

エオローも先程から変わらずぐったりした様子でローガンの足元に横たわっている。

その間にたちまちローガン達はアサルトライフルのような銃を持った無数の刑務官に囲まれた。


「武器を捨て両手を上げろ!」


ローガンは素直に上官から奪った銃を床に落とした。

拘束具を付けようと数人の刑務官が動いた時、刑務官内の誰かが、人質の上官に向かって撃った。1・2発、頭に命中し即死だった。

誰もが目を見張った。誰も誰が撃ったか分からなかった。

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