表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
纏物語  作者: つばき春花
水上村の化猫編
76/134

其之漆拾陸話 無慈悲  

『ぎっぎっ…ぎっ…ピシッ…ギギッ…』と群がる腕の球体から鈍く軋む音が漏れ出る。


鬼姫の御魂を欲した亡者共が凄まじい力で地獄の底へ引きずり込もうとする、しかしそれはびくとも動かない。それどころか引きずり込もうとする亡者の腕が相反する力に耐え切れず次々に引き千切れ始めた。


やがて球体の隙間から『チロチロチロ…』と白い炎が漏れ始めた、その炎は次第に激しく吹き出し!


『ブワァァァサアァァァッッ!!!』


『ボオォワサァァァァボボボッバワァァン!!!』


銀白色の炎と共に銀色の翼が大きく広がり、纏わりついていた亡者共の手を散り散りに弾き飛ばした!


そして『ブワァサッッ!』と一羽ばたきすると銀白炎が鬼姫の身体を中心に渦を巻きながら激しく燃え広がり、群る亡者共の手を一掃した。


その炎による痛みは、地獄で苦しむ亡者共に更なる恐怖と戦慄を与えようだ。何故なら亡者共は頭上に佇む鬼姫に背を向け、我先にと血の池地獄から這い出し、この恐怖から逃れようとしていたからである。


ここで鬼姫は冷酷無慈悲に右足を後へ引き、八相の構えを取りながら何かを呟いた。そしてその構えが完成すると鬼姫の背後に銀白炎球が…


『ボワッ!ボワッ!ボワッ!ボワッ!ボボボボッボボッボオオワァアァァァァァッ!!』


っと四つ現れ、その白炎球が激しく燃え上がると同時に次第に形を変え行き、それらは優を守護する四神、白虎、青龍、玄武、朱雀の姿を成した。


続けてゆっくり大きく上段の構えを取りながら鬼姫が唱える。


「四神焔舞斬……」


「グギャァァァァオォォォォッ!!!」


『ボンッバァァァァァァンンンッボッボボォォォォン!!!』


その詠唱と共に四神が雄たけびを上げながら舞い上がり、振り上げた月下の刀の切っ先上空で爆音を轟かせながら交わった! 交わったそれは恒星のように白く輝く巨大な白炎球となった。


そして鬼姫は……無表情のまま、その剣を振り下ろす………


『シュバッ…………』


銀白炎球が瞬で亡者共が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う血の池地獄を直撃した! 


『ズッ……ドオゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォン!!』


血潮が遥か上空まで柱のように舞い上がった次の瞬間、轟音を上げ凄まじい水蒸気爆発が起きた!


『ドドドドドドドドドッドドドドドドドオオオオォォォォンンンンンンンンッ!!!!!!!!』


爆炎が辺り一面を吹っ飛ばし激しい爆風が広がり、辺りが濃ゆく赤黒い血の色の煙に包まれた。


柔らかな風が吹き……霧が晴れた後の光景……そこには亡者共の姿はなく、血の池は一滴残らず蒸発し赤黒い鉄錆色の地面が剝き出しになっていた。優の一撃は亡者共と血の池を一瞬にして消し去ってしまった。


そして静かに地獄の門が閉じてゆく……。


「こ……こ……この……この力はぁぁ……おのれぇぇぇ……」


顔が引きつる黒鬼……鬼姫の思いもよらぬ……凄まじい力……地獄の底を一撃で消し飛ばした凄まじい力に、わなわなと震えながら獄漆黒炎刀を握り締め、まさに鬼の形相で振り返り上空の鬼姫を睨みつけようとした。


しかし遥か上空に居るはずの鬼姫が…いない…。そう思った次の瞬間、一瞬にして振り返った黒鬼の目の前に突如として現れた鬼姫、既に抜刀の構えを取っている!


「しゃらくさいわぁぁぁッ!!青井優ぅぅッ!!」


その速さに臆することなく素早く反応した黒鬼、怒涛の叫びをあげながら獄漆黒炎刀を交差する、すると『ブワッ』っと刀から呪蛇の群れが放たれ、黒鬼を包みこみ間合いに入った鬼姫にも餌に群がる雑魚のように襲い掛かるッ!


しかし!


『シュパパッッッ!!』


鬼姫の太刀が呪蛇を斬り祓うと同時に黒鬼の両手の五指を斬った。


獄漆黒炎刀と共に黒鬼の両手の指が宙を舞う。


「ぎやぁぁぁぁぁぁぁ!ゆゆ指がぁぁぁぁぁぁ儂の指がぁぁぁぁッ!」


返す刀で……


『シュパッ…シュシュシュッッ……』


まるで豆腐のように両腕を切り刻んだ。


「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


「……次は足よ……」


『シュッパッ……』


悲鳴を上げ、のた打ち回る黒鬼の左足首を軽く斬り捨てる。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!足ぃぃぃぃぃッ足がぁァァァ!!!ヒィヒィ……」


その悲鳴と共に黒鬼の体から靄のようなものが湧き出で、やがて人の形を成した、その者達は宮司達に捕らわれていた孫四郎と又二郎、源三郎、三人の御魂達だった。オジイ達は鬼姫…優を見ながら呟いた。


(ほほぉぉ…お主が…舞美の孫娘、青井優、何処となく舞美の面影を感じる…)


(これはこれは…凄まじい神氣じゃ…ここにきてこのような者に出会うとはのぉ……)


(鬼の力を纏うとは……その姿、まさに鬼姫…舞美が手に負えなかった鬼の力を我が物にするとは……いやはや…見事なり…)


三人の御魂は優を取り囲み舞美との面影に重ねながら懐かしく思いを馳せ……


(優よ……ありがとう……お前のその力で……日ノ本の國を守っておくれ……)


(そして…これが終わったら…榊の村を…舞美と祖父が過ごした榊の村を訪ねに来ておくれ…)


そう言いながら三人の御魂は光の粒となり緩やかな風に乗って空高く昇り行き…やがて消えていった。


(うん…これが終わったら必ず榊の街に…舞美あばあちゃんと…涼介おじいちゃんが出会った街に……必ず会いに行くよ…)

 


                            つづく……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ