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纏物語  作者: つばき春花
水上村の化猫編
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其之陸拾玖話 蘇りし鬼姫

 舞の真横に落ちてきた優の左手首は鬼弥呼の唾液で『ジュワジュワ…』っと溶け去り、後には短剣『平野藤四郎』と赤い指輪だけが残った。


「優ぅぅ!」


一早く優の元へ飛び立った嫗めぐみ、しかしその目前に妖者と化した南の守が立ちはだかる。


「嫗千里乃守……貴方のお相手はこの私ですよ。そぉぉらぁぁ!!」


髪の毛が無数の毒蛇となってめぐみの周りを渦巻くように取り囲む。即座に神楽鈴を掲げそれに対抗する。


「雷光!雷覇!」


『ババァァァンッビシャァァァバババッバァァァン!!』


雷撃が神楽鈴を直撃し、めぐみの身体から四方八方へ向け電撃が走り毒蛇を薙ぎ払った。そして神楽鈴を弓矢に変化させ南の守へ向けて無数の矢を射った。


「破蛇の矢……無双舞むそうぶ


『ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ』


「洒落臭いわぁ!嫗千里之守ぃ!!」


南の守の腕がしなる大蛇となって、めぐみが放った矢をすべて叩き落とした、そしてもう片腕の大蛇が後方からめぐみの背中に噛みつき力任せに振り回し、何度も激しく地面に叩きつけ森の中へ放り投げた!


『バギバキバギバギバギッ!!』


凄まじい勢いで投げつけられた嫗めぐみの体は何本もの木々を薙ぎ倒し、ようやく止まった。そしてその体には神氣の息を持ってしても直ぐには回復しようがない程のダメージを受けてしまった。


「ま…ま…舞……早く……ゆゆ…うを…優を………と…止めて……早く……」


「キャハッ…ハハハハハハッハハハッ!宮司の面汚し!売女!胸糞悪い嫗千里之守!今ぁぁ私の前にぃぃ跪かせているぅぅ!さぁ鬼弥呼様ぁこの憎っくき嫗千里之守を喰ろうてくださいませぇぇ!!」


そう叫びながら、動けず息も絶え絶えな嫗めぐみを指し示す南の守、しかし鬼弥呼は佇んだまま動こうとはしない。


「鬼弥呼様!何をされているのです、さぁ早く喰ろうてくださいませっ!!」


そう言いながら振り向いた南の守を、鬼弥呼のどす黒い手が『がつっ』と勢いよく鷲掴みにした。


「鬼弥呼…様?鬼弥呼様!?ななな何をされるおつもりでっ?!」


慌てふためきながら問いかける南の守の体を容赦なく握りしめる鬼弥呼、やがて骨が砕ける音が辺りに響く。


『ボギッ!ボギギッゴリボキボキボキボキッ!!』


「ギャァァァァァァァァッ!!鬼弥呼様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そしてもう片方の手を大きく広げ、ぐったりしている南の守の頭上から被せると頭から喰らい始めた。


『ボリバリッ…ボリボリバリッバリッ……」


骨を砕き貪り喰われた南の守……鬼弥呼がそれを喰い終わると同時に背中が『バキバキッ!』とまるで大木がゆっくり真っ二つに折れるような音を立てながら割れ、その身体が大きく膨らみ始めた。


その姿、頭に二本の歪な角を生やし口は耳まで裂け、まなこ)は真っ赤、どす黒い体から伸びる長い腕は異様な程筋肉隆々、そして岩石の様な拳は燃え滾る火焔に包まれていた。


鬼弥呼と南の守がそうこうしている隙に、舞は上空に佇んでいる優の元へ飛んだ。しかし優の様子がおかしい、目は虚ろで天を仰ぎ何かをブツブツ呟いている。


「優!優!大丈夫?!しっかりして!」


そう言いながら舞が優の両肩に手を掛けると『ジュゥゥゥゥゥ…』


「あっ熱っちぃぃぃぃ!!!」


余りの熱さに慌てる舞、優の体がまるで熱した鉄板のように熱かったのだ。よく見ると優の身体から黒い、真っ黒い氣が沸き立っていた。


舞にとって初めて見る光景だったがこれはかなり良くない状況という事は即座に理解できた。


そして……舞は気付いた…斬られたはずの左手が…再生している。しかもその手は血に染まった様に真っ赤、指には鋭く長い爪を生やしていた。


「ゆ…優…お前……いったい……」


その姿に驚き後退りする舞…すると…


「舞……優から離れなさい……」


その声に振り向くと心身共にボロボロの状態だった筈の嫗めぐみが優に向って弓を引いていた。神氣の息で神力が僅かばかり回復したのだ。


「ちち、ちょっと何するつもりなの?!」


「いいから…早くそこをお退きなさい…」


嫗めぐみの破邪の矢が紛れもない、青井優に向けられていた。


「こらっ嫗めぐみ!何考えてんのよ!優を殺す気?!」


「そのつもりよ……」


「!!!」


舞は嫗めぐみの正面に立ち塞がる様に手を広げながら嫗めぐみに近づいて行った。


「めぐみっ!どういうこ…と…」


舞は言葉が詰まった…何故なら、弓を引くめぐみの瞳から…大粒の涙が流れ出ていたからだった…。そして自分に言い聞かせるように小さな声で呟いていた……。


「優が……優が我を忘れ……鬼に…鬼になってしまう前に……私……の……私の手で……」


しかしその声は小さく舞の耳元には届かない……『ギリッ……ギリッ……ギリリッ……』撓る弓。めぐみは本気だ…本気で優を射るつもりだった。舞は大きく手を広げ、今にも射そうなめぐみの目の前に立ち塞がったまま問いかけた。


「めぐみっどうして!どうして優を討たなければならないのっ?!それよりもあの化け物を!鬼弥呼をどうにかするのが先でしょっ?!お願い弓を収めて!!」


「駄目……駄目なの……舞……早く、早くお退きなさい……」


そう二人でやり取りしていると真下から『ブワッ』っと熱風を伴った上昇気流が噴き上がり二人の体が上空へ運ばれそうになった。その異変に真っ先に気付いた舞が下を見ると、完全に変幻を終えた鬼弥呼が繰り出す火焔に包まれた真っ赤な拳が凄まじい勢いで二人に向かってきていた。


「めぐみっ!下ぁぁ!!」


舞は叫びながら嫗めぐみを突き飛ばした!


『ゴバアアァァァァァァァァァァァッッ!』


間一髪、拳は轟音を響かせながら二人の間を突き抜けた、しかし…体勢を崩しながらもめぐみの鏃は優の頸を正確に捕らえたままだった……。


「舞美……ごめんなさい……私……優を守ってあげる事が出来なかった……」


そう呟きながら弦から指を放し矢を解き放った。


『ビィンッ!……シュッ………』


そして……その鏃は…正確無慈悲に優の頭を捉える。


                       

つづく……


次回予告……「其之漆拾話 詠み人知らず」


ご期待ください…

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