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纏物語  作者: つばき春花
鬼一法眼編
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其之伍拾参話 剣術神 鬼一法眼 

 鬼一法眼…全ての流派の祖、京八流の創始者でありながら陰陽師でもある僧武人。


 劣勢な状況の中、嫗めぐみが修復を終えた『月下の刀』を持って現れた。それは、『真・月下の刀』となって更に神力が増した刀へと生まれ変わってきた。


 嫗めぐみがかつての『師』と呼ぶ鬼一法眼。優は嫗めぐみの力を纏い立ち向かう。


 不敵な笑みを浮かべる鬼一法眼は、虜にした三神、朱雀、玄武、青龍を呼び出し自らの身体に取り込んだ。


 凄まじい妖氣を放つ妖者、鬼一法眼に優は如何に立ち向かうのだろうか?

 (我が師……鬼一法眼、その剣術に形はありません。構えも無い……そして…その振りは、何処から現れるか判らない……消える刃筋。迂闊に間合いに入ってはいけません……)


 動く事が出来ずにいる優、徐ろに右腰の『平野藤四郎』を『スラッ…』と抜き、右手に月下の刀、左手に平野藤四郎の二刀を構えた。


(消える刃筋か……とにかく、このまま睨み合いでは埒が明かない、妖者を守る陣は、この二刀共斬る事が出来る! ならば……こちらから仕掛けていきます!)


(ま、待ちなさい、優!)


『ドンッ!』


「氷雷蛇……」


『ピシャァァァァァァッ!!』


 嫗めぐみの静止の言葉を無視し鬼一法眼目掛け、斬り込んで行くと同時に雷撃を纏った氷蛇を周りに作り出し、身を守る盾とした。


「氷蛇よ……私を守りなさい……」


『ビギァァァァァァッ!!』


 それに対して鬼一は、腰を深く落とし大きく手を広げ、空気が震える様な重い拍を打った。


『パァァァン!』


 「極炎呪爆柱!」


『バボオオォォォォォォォォン!』


 鬼一の背後に朱雀が現れ、大きく羽を広げたかと思うと、狂風と共に火炎の柱を優目掛け放った!!


 氷蛇が優を囲み守ろうとするが、荒れ狂う爆炎柱により次々と溶解する。しかしその火炎の柱に、臆すること無く突っ込んでいく!


 そこから刀を一振する!


『カキィィィィィンッ!!』


 甲高い金属音と共に衝撃斬が放たれ、火炎の柱が、真ん中から真っ直ぐに割れ広がり、その先の鬼一法眼を視界に捕らえた!


 続けて脇構えから一撃を繰り出す、同時に月下の刀が妖しい氣を発する。


「氷狼牙斬……」


『シャキィィィィィィン!』


 斬撃が凍てつく白銀の狼となり、鬼一法眼を狙って真っ直ぐ突き進む!


『ガアオアァァァァァァァ!』


 鬼一法眼は、再び拍を打ち、唱える


「武羅絶凶殺!」


 鬼一は玄武を召喚! 亀頭が大きく口を開けたと同時に、凄まじい衝撃波を放った!


『ガハァァァァァァァァ!!!!!!』


 その衝撃波は一瞬にして白狼を粉々に粉砕し、突っ込んでくる優を一瞬にして市房山上空まで吹っ飛ばした。


 『ふんっ…』鼻で笑いながら体制を整える、(優、後ろです!)めぐみの声が頭中に響く、既に先回りしていた鬼一法眼が刀を振り上げ斬り掛かってくる寸前だった。二刀を構え迎え撃つ優。


(正面か?いや…右…?)


『カッキィィィンッ!ギギギッギリリッギギギギリリッ……』


 鬼一の剛剣が真上から繰り出され、二刀で受け鍔迫り合いに持ち込むと薄ら笑いを浮かべながら言い放つ。


「ふっふっふっ……いいぞ……青井優!これぞ儂が臨む斬り合い!さぁ千里之守と共に儂を楽しませよっ!はぁぁぁぁぁぁっ!」


『キンキンキキキンキンキン!』


(何処から来るか分からない刃筋……しかも速い……ならば!)


 『キン!ガキンッ!』

 

 鬼一法眼の剣を月下の刀で受け、それを上から平野藤四郎でがっちり挟み込んだ!


「おりゃぁぁぁぁぁっ!」


 そしてそこから渾身の蹴りを鬼一法眼の腹へ見舞った!


「ふぐうおっ!!」


 虚を突かれた鬼一は、後へ吹っ飛飛ばされ、二刀で挟まれていた刀が鬼一の手から離れた。


 優は取り上げた刀を暗闇の中に無言で投げ捨てた。


「鬼一法眼……覚悟……」


 「ふふっ…なかなかやるではないか、しかし刀が無くとも二本の手があるぞ…はあっ!!」


 そう言うやいなや、一瞬で優の目前に飛び込み、右の拳が顔面に放たれた!不意を突かれたが何とか身体をのけぞらせ、その一撃を避ける事が出来た、が二撃目が鳩尾に入った!


「ぐはっ!」


「そら!そら!そら!そら!そら!そら!そら!そらぁぁぁ!!」


『ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッ!ドカッッッッッ!!』


 怒濤の如く、速く重たい拳が繰り出される! 防戦一方の優だったが……


(このぉぉぉぉぉ……調子に乗るなぁぁぁ!)


 月下の刀を横一閃で振り抜いた!


『ガキィィィィィィィン……』


 しかし優の剣は、鬼一法眼の腕にぴたりと止められた。その腕をよく見ると亀の甲羅のように硬い鎧が備わっていた。


「こ…これは?……」


「ふっふっふっ……儂の身体の中には虜にした三神がおる。その神力は儂の思うがまま……いくら月下の刀でも神獣を斬る事はできまい?……」




 そう言いつつ優を蹴飛ばし、再び大きく拍を打つ!


『パンッッッ!』 


「青渦切斬流爆ぅ!」


『ゴッ……ゴゴゴッ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!』


 ふたりの真下にある市房ダムの湖面が揺らぎ、大きな渦を巻き始める、そしてその渦の中心から龍が勢いよく昇り来た。其れは三神の中の一神、青龍。


 青龍は、合掌する鬼一法眼を中心にぐるぐると回り始め、その回る勢いによって幾つもの水円刃が鬼一の形成された。


「優……地獄の業火…受けてみよ……ハァァァァ!」


怒号と共に水円刃が優目掛けて放たれた!


『シュバババババババババッッ』鋭い風切り音を纏いながら向かって来る水円刃。


「こんなもの……」


 と優は二刀を構え、飛んでくる水円刃を迎え討ち斬り捨てた。


『シャッシャッシャッシャッ……』その瞬間!


『バァァァン、バンババババァァァン!バンッババン!』


 切った水円刃が目前で爆発!それが次々と延爆し優の周りが爆炎に包まれた!


 凄まじい爆炎の中、ピンボールの様に暴爆に弾かれる優、身体を火炎に包まれてしまった!


(この炎…辨慶の時と同じ呪いの炎? いや…違う…それよりも重く熱い火焔…纏が焼かれている…息が…息ができない……このままだと纏が焼き崩れる…………)


「どうだ!儂がいる無限地獄の火は!?苦しかろう!ワァァァッハッハッハァァァ!苦しめ!もっと苦しめっ!弱き者など興味は無い!ワァァッハッハッハッハッハッハァッ!」


 高笑いの後、じっと優を睨みつけ静かに語りかける……。


「終いだ……青井優……そして千里之守…」


 ゆっくり大きく手を広げ、拍を打つ、


『パァァァン!…………極炎呪爆柱……」


 朱雀の翼が鬼一の背中に現れ、それが大きく広がり、激しい火炎の風を巻き起こす!


『ゴバァァァァァァァァァァァ!』


 鬼一の放った火が炎に包まれた優に、更に追い打ちをかける様に包み込む!


 炎が纏わり付き剣技が繰り出せない優、藻掻けば藻掻く程、纏わりついた火炎が纏を燃やす。


『息が……できない』次第に意識が薄れていく優………


            つづく……



 つばき春花です、其之伍拾参話お読み頂き有難うございます。『鬼一法眼編』次回で完結です、是非お立ち寄り下さいませ。


 活動報告も合わせて御訪問をお待ちしています。




次回予告……

   

 「其之伍拾肆話 成れの果て…」



『ドゴゴォォォン!!』


 低く鈍い音が辺りに響く! 鬼一法眼が放った拳を、優も同じ右の拳で迎え撃ったのだ。


 優の小さい拳に激しく跳ね返される鬼一法眼、渾身の一撃。


 余りの衝撃に蹌踉めく鬼一法眼。その優の力に驚く鬼一法眼に向って、優が言い放つ。


「鬼一法眼……三神の力に溺れ、武人の魂を失い、妖者に落ちぶれたお前に…勝機はありません…………今…あなたを祓います……」

 

          ご期待下さい…

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