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纏物語  作者: つばき春花
鬼一法眼編
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其之伍拾壱話 京八流の剣技 

 鬼一法眼…僧侶の身なりの法師陰陽師『六韜』という兵法の大家でもあり、文武の達人とされる。源義経がその娘と通じて伝家の兵書『六韜』を盗み学んだという伝説で有名。


 また剣術においても、京八流の祖として、また剣術の神として崇められている。


 京八流とは…平安時代末期に鬼一法眼が京都の鞍馬山で8人の僧に刀法を伝えたところを始祖として、多くの剣術の源流になったとされる流派の一つ。


 ただし、京八流に関する文献は室町期以降ほぼ消失しており、現代ではその実態をつかむことは難しい。京に伝わる八つの流派の総称と考えられる。

                       ウィキペディアより抜粋


 腰の刀を抜いた鬼一法眼…しかしそれを構えること無く佇んでいる。優は、短刀を逆手に持ち相対する。


(なに……これで構えてるの? 隙だらけ?……いや…全く隙がない……どっち?……私を誘っているの?)


 佇む鬼一法眼、一見隙だらけであるように見えるが何か違和感を感じた優は、迂闊に斬り掛かろうとはしなかった。すると…


「どうした? 青井優、清き力を持つ者よ……お前から来なければ儂から行くぞ!」


 そう言いつつ鬼一は、刀を振りかざし上段の構えを取った。そして『どすどすどすっ!』と攻め入ってきた!


(そんな大振り! 隙だらけじゃない!)


 優は、右腰の『平野藤四郎』に右手を添え、抜刀の構えで鬼一を迎え討った。


 『先ず、一の太刀を左へ振り払い、戻す刀筋で鬼一の銅を一閃する!』 


しかし!


『首……』


「えっ…」


 頭の中に突如聞こえてきた声に、咄嗟に短刀を顔の横に立てた。そして!


『ガキィィィンッ!』


 「キャァァァ!」

 

 上段から繰り出された筈の鬼一の初太刀が何故か真横から、しかも正確に優の首を目掛け、斬り掛かってきた!


 何とか受け流す事が出来たが、その太刀の威力にふっ飛ばされ、河川敷に叩きつけられた。


「其の太刀…其の気配……やはり『平野藤四郎』か……忌まわしい刀め……」


(何いまの? 上から来ると思ってた刃筋が、突然真横からきたっ! あの『声』が聞こえてなかったら頭が飛んで逝ってたよぉぉ)


 優は、立ち上がり刀を逆手に持ち直し、構え直した。じりっ…じりっっと間合いを詰めてくる鬼一。


(この間合いでは、私に分が悪い…。懐に飛び込んで接近戦で行くしか……無いっ!)


 「でぇやぁぁぁぁぁぁ円神斬ン剛ぉぉ!」


 瞬で懐に飛び込む! そして鬼一の周りを幾人もの優の分身が取り囲む!


「だぁぁぁぁぁぁ!!」


 前後左右頭上から一斉に斬り掛かる!


「辨慶!私に力を貸せぇぇっ!」


 優の体に紫の氣が沸き立ち、更に力が増す!


『ゴギンッゴギンッゴギンッゴゴゴゴギンッゴギンッ!』


 辨慶の剛力が『平野藤四郎』に宿り、速く重い斬撃を繰り出す! 正面から迎え撃つ鬼一法眼、重い斬撃を受け流しながら言い放つ。


「優! このような陳腐な技など儂には、通用せんぞっ!はあぁぁぁっ」


『キンキンキンキンキンキンキンッッッッキンキンキンッキンキンキンッ』


 優の剣速をはるかに上回る速さで斬撃を跳ね除け、幾人もの分身を全て斬捨て、最後に残った本体に斬りかかった。


「優……終わりだ……」


 鬼一法眼の剣が優を横一閃で斬捨てた!


『シュパッッッ……」


 しかし手応えがない! 『むっ!?』っと思った瞬間、真後ろから優が斬りかかる!


「月光閃、十文字斬っ!!」


 五振の『平野藤四郎』が鬼一法眼の首筋に入るっ! しかしその瞬間!『ガキッッッ!!』幾えもの陣が鬼一を囲み、全ての刀筋が止められた! 

 

 そして再び消える太刀筋が優の首を狙い繰り出された!


『ガキンッッッ!』


 この一撃も何とか受け流す事ができたが、その衝撃で身体が村山の斜面まで吹っ飛ばされた!


「キャァァァァァァァァ!」


 錐揉みしながら雑木林に叩きつけられた優。その身体には、かなりのダメージを負ってしまった。


「痛ぁぁ………辨慶の怪力が跳ね退けられるなんて……」


 斜面にめり込んだ優は身体を起こそうとするが全身に力がはいらない。


「か…刀が無い……何処に…?」


 上半身を起こすように周りを見渡すと手が届かない所に突き立っていた。取りに行こうとするが…………


「やばい……か、身体に力が入らない…しかも、体中が軋むように痛い……は、早く息を……神氣の息で…回復を……しなくちゃ……」


 そう言いつつ神氣の息を始めたが神力が思った以上に消耗しているのか回復が遅い。


「やばいぃ……何で…神力が回復しないの…うぅぅぅ…」


 必死に回復を図るが何とか身体をうつ伏せにするのが精一杯だった。


『ザクッ…ザクッ…ザクッ…』


 鬼一法眼がゆっくりと歩み寄り、そして言い放つ。


「優よ……儂は今…怒りに震えておる………………何故かっ!……其れはお前が余りにも未熟だからだ!


  儂は生前、多くの命を……この刀によって奪ってきた……余りにも残虐非道の所業……その儂が死んで行き着いた先は無論…無限地獄。そしてその無限地獄の底深くで我に課された試練は、何百何万何億もの鬼を相手に、終わる事の無い無限の切り合い。 だが儂には実に退屈な試練。何故なら…ひ弱な鬼共が何万、何億と来ようが儂の剣の前では、虫けら同然…欠伸が出る程退屈な試練だったのだ! 


 しかしある時、面を着けた宮司の魂が儂の前に現れた……不思議な事に、地獄の時を止めておった。


 その宮司は言った…『現世にお前を満足させる剣士がいる、斬り合ってみよ、その剣士はお前より強い者だ』……と。


 其れが青井優……お前の事だったとは。妖者という汚らわしい姿になって迄現世に戻ってきたというのに……全くの興醒めだ。

 

 儂の望みは只ひとぉぉぉぉつっっ! 

 

 強き者との斬り合いぃ‼ それだけが望みぃぃっ‼………………が、お前がこの程度ならば、地獄での斬り合いの方が余程まし……だったと言う事か……さっさと終わらせて…地獄に帰らせてもらうとしよう……」


 そう言いながら腰の刀に手をかけ、ゆっくり『シュラッ…』と抜き、優の顔を指し示し


「始めに言ったはずだ……儂は武蔵坊の様に、慈悲もなければ情もないと……覚悟……」


 大きく刀を上段に構える鬼一法眼、人を斬るその目は、死んだ魚の目をしていた。


 抵抗しようにも身体が思うように動かないし刀にも手が届かない……万事休すか…覚悟を決めた優……。


「駄目……私……死んじゃう……お…お母さん……舞美ばあちゃん……ごめんなさい…ごめん…なさ…い」


 涙を浮かべ静かに目を閉じて呟いた……。


 そして……無常にも鬼一の刀が、優の首目掛けて振り下ろされた……。


つづく?……

 つばき春花です、『纏物語』お越し頂き有難うございます。


 今話で登場しております『鬼一法眼』、ちょっと難しかったでしょうか?


 宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ!


 活動報告に執筆秘話(笑)を書いておりますので是非お越しください!



  次回予告……『真月下の刀』 ご期待下さい…

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