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纏物語  作者: つばき春花
般若面の女編
48/126

其之肆拾捌話 正体

 刀を失った優に向かって無慈悲に斬り掛かってくる般若!


 その時優は、何かの気配を感じ取った。其れは右の腰に刺してある辨慶から譲り受けた短刀…からだった。


「くっ!」


 優は無意識に右手で短刀を抜き、そのまま般若の三の太刀を迎え討った!


『シュキィィィィンンンン!』


 今まで聞いたことのない不思議な音が響く……すると交わった般若の陣刀の術が短刀によって解かれ『パラパラパラ……』と崩れ始めた。


 そして斬ったのは陣刀だけではなかった……背を向け、佇む般若の面が『パキッ』と乾いた音を立て……半分に割れ落ちた。


 ゆっくりと優のいる方へ振り向いたその素顔……面の下から現れた素顔を見た優は、愕然として呟いた。


「う…嘘でしょ…………み……つき?……」


 般若面の正体、其れは美月……優の親友、神酒美月だった。しかし其の顔つき、眼差し……いつもの美月とは別人のように、冷たく鋭かった。


 額から流れ落ちる一筋の赤い血が口元に達すると、それをペロリと舌で舐め取った。


「美月……あなた……美月な…の?」


 半信半疑で問い掛ける。


 名を呼ばれた美月は、親友である優の声を無視し、くるりと背を向け、飛び去った。


 「待って! 美月ぃ!」 


 追う事を躊躇った優。折れた『月下の刀』を鞘に戻しながら美月が飛び去った方を見つめ、静かに呟いた。


「どうして……美月が…私を……」




【何時もと変わらぬ親友】


 次の日の朝、昨夜の事を引きずっていた優は、美月と顔を合わせるのが怖かった。


 般若の面の正体が美月だった……その現実が重く、優の心に伸し掛かっていた。


「どんな顔をして美月と合えばいいの……辛い、辛すぎるよ……」


 そう呟きながら、大橋を渡っていると……


「ゆうぅぅぅぅっ!!」


 後ろから自分を呼ぶ大きな声が……振り向くと美月が手を大きく振りながら走って来ていた!


 息を切らしながら追い付いた美月は、呼吸を整え言い放った。


「こらっ優!なんで先に行っちゃうの!私待ってたんだからね!薄情者!」


 と言って笑いながらカバンで背中を軽く叩いた。呆気にとられた優は、暫く美月の顔を見つめた。


 そこに居るのは、何時もと変わらない、明るくて眼鏡が似合う笑顔が可愛い美月だった。


「ほら!何やってるの、行くよっ!」


「あ、う…うん!」


 呆気にとられ、佇む優に向って声を掛ける美月。『昨夜の般若は、美月じゃなかったんだ、きっとそうだ!』と自分に言い聞かせながら…


「待ってよぉお!!美月ぃぃ!!」


 美月の名を叫びながら走り出した。


つづく……





 つばき春花です、『纏物語』毎話ご覧いただき感謝感謝でございます。次話も宜しくお願い致します!


次回予告……


『其之肆拾玖話 四神の子』


ご期待下さい…

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