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纏物語  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之拾肆話 凍てつく神楽舞

 「纏……」


(えっ?)


 舞美は一瞬戸惑った。嫗が『てん』と呟いたからである。呟くや否や眩しい光が嫗を包みこみ、その中から白衣に千早、紫色の緋袴を纏った嫗の姿が現れた。そして手に持った神楽鈴を胸に当て言の葉を唱えはじめた。


 嫗の周りの空気が凍て付き始め、白く霞み始める。次に神楽鈴をゆっくりと頭上に掲げる嫗。すると冷気の風が嫗を中心に渦を巻き始める。


 次第に大きくなる渦の中で神楽鈴を打ち鳴らしながら舞いを始める嫗。すると渦の中に幾つもの鋭く尖った氷の塊が形成されていく。


 そして嫗が神楽鈴を舞美の方へ振りかざす!


『シャン!』


 その音とともに渦の中から氷の塊が舞美めがけて放たれた!


 舞美は、その攻撃にすぐさま反応した!


「茨の鞭!」


『パンッ! パパパパパパパンッ! パパパンッ!』


「緑珠」を纏い、鞭で全ての塊を叩き壊した!


(くっ! 鋭い刃! しかも凄い数! 速過ぎて落としきれないぃ!)


 神楽鈴が『シャン!』『シャン!』『シャン!』と鳴るたびに無数の氷塊が舞美に放たれてくる。次第にその数も増え、さらに渦の風で加速されて放たれる、その速さに戸惑う舞美。


「このままでは防ぎきれない!」


 そう考えた舞美は、羅神に攻撃を命じた。


「羅神! お願い!」


 羅神が舞美の前へ出る、体を低く構え唸ると同時に激しい雷撃を広範囲に放ち、飛んでくる無数の氷塊を一瞬にして貫き破壊する。


 そして嫗に向って雷鎚を放つ! 


 直撃! と思われたその瞬間、一瞬して冷気の渦が嫗の周りに厚い氷鏡を作り出し、羅神が放った雷鎚をすべて跳ね返した。


 跳ね返った雷鎚は凍てつきながら四方に飛び散り、その一撃が羅神の体をまともに捉えた!


「ギャワ――――ン!」


 羅神は自分が放った雷鎚で大きなダメージを受け地上に落ち、そのまま動けなくなっしまった。


「羅神⁉ おのれぇぇぇ――!!」


 舞美は、怒りの感情を抑えきれず獣のように叫び拍を打った!


「黄纏!」


金色こんじきつち!」


 舞美は、鞭を黄金に耀く巨大な槌に変化させ高速で突っ込みながら氷鏡の壁を横からぶっ叩いた!


「おりゃァァァァァ――!」


『ガッゴオォン!』

と鈍く野太い音をたて鏡氷に『ピシッピシッ』っとヒビが入った。


「そらぁー! もういっちょおぉぉ――!」


 更に今度は上空に高く舞い上がりもう一撃放った。


『ガッゴオォ――ン!』


『ピシッピシッピシッ…………パリ――――ン!』


 すざましい力で氷鏡の壁が粉々に砕けちり、破壊時の衝撃破が強大な風の渦となり嫗を上空へ激しく巻き上げた。


「キャァ――――――!」


 次に舞美は間髪入れず赤珠を召喚した。


「赤纏!」


 舞美の纏が赤く変わり槌の形が変化する


ほのおの破魔弓!」


 焔の弓に火焔の矢を装填し吹き飛ばされ錐揉みしながら落ちて来る嫗に狙いを定めた。


「悪霊ぉぉ! こぉれでぇぇ! 蒸発しちゃえぇぇ!」


 悪を一瞬で焼き尽くす火焔を纏った破魔の矢! 力いっぱい弓を引きとどめの一撃を放とうとした、


 その時!


 (舞美! 放つな!)


 と彦一郎の叫び声が聞こえた!舞美は


「えぇっ⁉」


 と言いつつも放つ瞬間、少しだけ身体を右にずらすことが出来たので破魔の矢は、上空から落ちてくる嫗の右側をかすめてはるか彼方に消えていった。


「どういう事よ? オジイ?」


(詳しいことは、後ほど話すので儂を纏ってほしい……)


 「白纏」


 言われた通り舞美は白珠を纏った。そして気を失い上空から力なく落ちてくる嫗をそっと空中で受け止め地上に降り地面に寝かせた。


「生命の指嵌……」


『指嵌』の力で嫗の生気と傷を治し気が付くまで待つことにした。そして彦一郎が語り始めた。


(この娘は……嫗は、私の女房だった人だ……)


「えぇぇぇぇぇ!!!!!」


 ひっくり返るくらい舞美が驚きの声を発すると同時に(ワーァハッハッハッハッ!)とオジイ達が大笑いしながら舞美と嫗の周りに現れた。


 (とうとう摑まりおったわい)

 (いい加減観念せい!)

 (これも運命さだめ……)

 (じたばたするな! 阿呆が!)


 と彦一郎は、オジイ達から激を受けた。オジイ達だけで盛り上がりこの状況がどうなっているのかさっぱりわからない舞美。


「もう! 私にもどうなっているのか教えてよ!」



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