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纏物語  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之拾参話 敵か味方か 嫗めぐみ

 遥か昔の話。遠く東の方角から恐ろしく強大で凶悪な力を持った者が日ノ本の國を我が物にせんと如く現れた。その者の名は蛇鬼。村々を焼き尽くし民を喰らい、モノノ怪や妖かしをも喰らい己の悪力にする極悪非道の鬼だった。この危機に日ノ本の宮司みやづかさ、陰陽師、神守達がその神力を結集させ封じようと戦った。凶悪な蛇鬼の力に次々と倒れていく神に使える者達。しかし長い戦いの末、ついに蛇鬼を封じの岩に閉じ込める事が出来た。しかし……

 朝、登校すると教室の中が騒ついていた。


「おはよう、夏美。ねぇ、なに、この騒ぎは? 何かあるの?」


「まぁみぃぃ、何いってんの⁉ 今日は、このクラスに転校生が来る日だよ! 何日も前から楽しみだねって二人で話してたじゃん!」


「そんな話したかな?」


 しかし周りのクラスメイトも今日転校生が来る事を知っていた。


 その時は『聞き忘れかな』と思いあまり気にはしなかった。


そして夏美はと言うと 


「女の子かな⁉ 男の子かな⁉ イケメンだったらいいなあ!!」

と一人でかなり盛り上がって

いた。

 

 始業のチャイムが鳴り、朝のHRの時間になった。 


『ガラガラガラ』と教室の引き戸が開き少し笑みを浮かべた教師が顔だけを出して室内を見渡した。

 その後2、3歩教室内に歩みを進めて話し始めたと同時に手招きをした。


「皆、知っていると思うが……めぐみさん、入りなさい」


「はい……」


『めぐみ』と聞こえた途端、後ろから『ガタンッ』と音が聞こえた。後ろの夏美が、がっかりして机にへばりつく音だった。


「めぐみぃ〜? 女子かよぉ〜あ〜あぁぁ」


 そした転校生が静々と教室に入室してきた。見た感じは、色白で髪の長い小顔の女子、和人形のような美人で何処か妖しげな雰囲気を醸し出していた。

 

 そして教卓の後ろに立つと一礼をして自己紹介を始めた。


「嫗めぐみです……皆様どうぞよろしくお願い致します……」


 ゆっくりとした口調でかぼそい声だった。すると後ろの夏美が舞美に耳打ちする。


「『よろしくお願い致します』なんて普通のJKが言うかぁ? この只者んじゃないね!」

とクスクス笑った。


「じゃぁ……東城の隣にいいか?」


「はい……」


 その転校生は、教室に入ってきたと同じように静々と歩み、舞美の隣の席に座った。

 

 舞美は、転校生を目で追いながら席に座ったと同時に声を掛けた。


「東城舞美です、よろしくね!」


するとにっこり微笑み


「嫗めぐみです、よろしくお願い致します……」


 さっきと同じ、丁寧な挨拶が返ってきた。


「『おうな』って珍しい名字だね!」 


「ええ……よく言われます……」


 会話の糸口を探して話しかけたが即答で会話が終わった。ここであまり喋らない寡黙な彦一郎が頭の中に語りかけてきた。


(舞美……)


(何?)


(あのなぁ……舞美……だからなぁ舞美……)


(だから何?)


 と何かを言いたげだったが、しどろもどろで何を言いたいのか分からない。

 

 いつもと様子が違う彦一郎を舞美が心配していると何故か他のオジイ達は……


『プッ……クックッ……クッ……』


 今にも吹き出しそうと言うか何か笑いを我慢しているような感じだった。


 そして放課後の部活動が終わり帰路に着いた舞美。辺りは、もうすっかり日が落ちて薄暗かった。


(今日のオジイ達、様子がいつもと違ってた。何かあるのかなぁ……)


 色々考えながら歩いていると前を行く羅神が急に『ウゥゥゥゥ……』と姿勢を低くして唸り声を上げ始めた。何かに警戒している。


「どうしたの、羅神?」


 そう思い正面を見ると薄暗い路地の先の暗がりの中。何かいる? いや、誰かがいる……その誰かが街灯の下へゆっくりと歩み出てきた。街灯の明かりに照らされた人影。舞美と同じ学校の制服、髪の長い女性。

「嫗さん?」

 その人物は、『嫗めぐみ』だった。舞美は、安心した、何故なら悪霊だと思っていたものが知り合いだったからである。

「嫗さんかぁ!びっくりしたぁ、奇遇だね、どうしたのこんなところで、家この辺なの?」 


 そう声を掛けたが返事がなかった。何か様子がおかしい。しかも羅神が警戒を解かない、ずっと唸り声を上げている。しかも近づいて来る嫗に益々警戒を強める羅神。舞美もこの状況の異変に気付き右手を胸にかまえる。


「嫗さん……あなた何者なの?」


 との問いかけに


『やっと……やっと……見つけた……』


 俯いたまま低い声でゆっくりと呟いた。明らかに人ではないこの雰囲気。


(この子やばい!何かに取り憑かれてる⁉)と感じた舞美は、すぐに『神氣の息』を始めた。


(悪霊に取り憑かれてるのならば白珠の力でその身体から追い出してやる!)


 舞美は、大きく拍を打ち白珠の力を纏おうとした。


「白纏」


「……………………」


「白纏!」「………………………………」


「えぇっ? なんでえぇ? こら!彦一郎なに拒否ってんのよ!」


 白珠が纏えない事で舞美があたふたしていると嫗の周りに凍えるような冷たい冷気が集り始めた。しかも尋常ではない力が備わった冷気だった。そして嫗は目を閉じ息をする。

 

 冷気がゆっくりすぅーっと口から吸い込まれていくのが見える。それを見た舞美が呟く。


「このそくは⁉」


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