其之拾弐話 未熟者への罰
舞美の住む榊市。何事もない、いつもの日常。舞美にもそういう日が来るのであろうか。当分は無理な話だ。というのも『五珠の力』を十分に使いこなせていない舞美に、焦ったオジイ達から連日厳しい稽古を受けていたからである。今日もオジイ達が悪霊に成り代わり、舞美を襲うという掛り稽古を行っていた。
(舞美! 悪霊に囲まれたぞ!)
「綠石の斧!」
(囲まれたら斧では、対応し切れんぞ!)
「茨の鞭!」
(そうじゃ! それならば一掃できる!)
(次は、とてつもなく大きな奴が上から攻め入ってくるぞ!)
「茨の槍!」
(舞美……それでは……対応できぬ)
(遅い舞美! もっと早く対応せんか!)
「白纏!」
(馬鹿たれ! でっかい悪霊に白珠でどう対応するか!)
「赤纏!」
(ここは、力技じゃな。黃珠じゃ!)
(いや! 赤珠だ!)
(青!……浄化!……黃珠!)
様々な悪霊を想定しての掛り稽古だか、次第にオジイ達五人の意見が対立してしまう。そして皆苛立って最後には五人で喧嘩になってしまい稽古が終わると言ういつものパターンである。そんな退屈な訓練に飽きたのか舞美が意気揚々とオジイ達に意見した。
「オジイ! 今日は羅神を纏ってみたい!」
(まだじゃ、舞美。お前は、まだ我らの力さえ完全に使えておらん。それに羅神……雷珠の力がどんなものか儂らも判らん)
(そう……時期相応……お前の身が心配だ)
「いいって、いいって! 大丈夫!」
舞美は、オジイ達の忠告に軽く返事を返し、山の巨石の上で寝ていた羅神を呼び寄せた。
「羅神、おいで!」
羅神は、すくっと起き上がりあくびをしながら体をググッと伸ばし舞美の方へ飛び立った。
呼吸を整え、飛んでくる羅神に向かって舞美が呼吸を整え拍を討つ。
「雷纏!」
羅神の体が輝き一筋の光の矢にかわる。そして舞美に交わったその途端!
『パンッッ!』 『バジッジィバジィィィバジッィィ!』
激しい雷鳴とともに一閃の雷鎚が舞美を貫いた!
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!…………」
強烈な雷鎚をまともに受けてしまった舞美の意識は、遥か遠くへ飛んでいってしまった。
(ほうら、言わんこっちゃない)
(調子に乗るからじゃ未熟者め!)
(おい舞美、大丈夫か?)
暫く気を失った舞美。気がつくと五人のオジイ達と羅神が心配そうに舞美の顔を覗き込んでいた。
虎五郎が語る。
(羅神の力は、思った以上に強力みたいじゃなぁ、今の舞美には、到底手に負えぬ力じゃ)
起き上がった舞美は、羅神を抱きしめ嬉しそうに語りかけた。
「お前凄いな! この力絶対! 絶~対っ! 使えるようになるからね!」




