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纏物語  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之拾壱話 雷獣 羅神

 ここしばらく悪霊どもの姿も鳴りを潜め、影も形も見ない日が続いていた。この辺りに巣食っていた悪霊もどきも、羅神が食べ尽くしてしまったのか殆ど見なくなった。


 その羅神だが普段は、狼犬位の大きさなのだが、舞美が背中に乗れる位大きくなったりと体の大きさを自在にできる事がわかった。


 普段は舞美の傍らにいる羅神。学校には古から悪いものが多く巣食っているというが、それも羅神が全部食べてしまったようだ。


(暫く喜んで学校に付いてきていたのは、此等を食べる為だった)

 

 たまに血だらけの侍の生首を嬉しそうにくわえて持ってきたりする。その度に『そんなの拾ってくんな!』と舞美に怒られる。

 

 ある日の事、いつも舞美の傍らに居るはずの羅神が、珍しく朝から何処かに行ってしまって見当たらなかった。舞美は、『何処かに散歩に出かけたのだろう』と気にもしていなかった。


 その日の午後の授業は数学から始まった。お腹が満たされた昼食直後。ゆっくりとお経のような語り方で授業を進める先生。日差しが穏やかで、吹き込む風が心地く感じる気持ちの良い日和。もうすべての条件が揃っていた。


「眠い……眠いよ……眠すぎるぅぅ……」


 そう、舞美は今、悪霊とではなく眠気と闘っていた。気を抜くと意識がすぐにでも眠りの世界へ持って行かれそうであった。ただでさえ数学の成績が芳しくない舞美。


『今寝てしまったら確実に単位を落とされる』と必死に目を見開いていた。そしてこの耐え難い眠気を覚ます為、一旦五階から見える遥か遠くの山々へ視線を向けた。

  

 するとその遥か向こうから建物の屋根伝いに何か白い物が飛び跳ねてくるのが見えた。羅神だ、羅神が建物の屋根を『スタッ、スタッ、スタッ』とリズムよく飛び渡り、舞美のいる学校へ向かってくる。

 

 そして最後にひときわ高く飛び上がり、舞美の居る五階からよく見えるグランドの場所に降り立った。

 

 お座りをして顔を上げる羅神。よく見ると口になにかを咥えている。それは『悪霊もどき』だった、五匹の悪霊もどきの尻尾をがっちりと口で捕らえている。

 

 その後、どうするのか見ていると羅神が咥えている悪霊もどきを、グランドに放りだした。


 一斉に逃げ惑う5匹の悪霊もどき達、すると羅神は姿勢を低くし唸り声を上げ始めたた。


「ガァァゥゥゥゥゥ……」


唸り声とともに雷雲が羅神の頭上に渦を巻く、


『ゴロゴロゴロ……』


そして次の瞬間!


『ピカッッ! バババババァァァァン!!』


 眼の前に閃光が走り五本の稲妻が悪霊もどきを貫き粉々に粉砕し、真っ赤な炎が上がり砕けた破片を全て焼き尽くした! 


 舞美は、突然の出来事に驚き


「ううわっっ!」『ガダダンッ!』


 驚きの余り席から立上り、その勢いで椅子が後ろに飛んで行ってしまった! 


「こらぁ! 東城ぉ! 何寝ぼけてんだ! 目を覚ませ!」


 と先生から激が飛ぶ。


「すいません……」


 しかし、おかげですっかり目が覚めた舞美、そして又二郎が頭の中に語りかけてきた。


(ほう、この獣は雷獣の力があるみたいじゃな。普通は従えている者が教え込むのじゃが何処で覚えたのか判らんがこ奴、相当賢いぞ)


(雷獣! これは好機! 此奴が居れば悪霊退治も百人力じゃ! なにせその雷撃は、山をも消し飛ばすと言われているからな!)


(羅神が雷獣?)


 朝から行方がわからなくなっていたのは、この力を舞美に見せる為、近所にはいなくなった悪霊もどきを捕まえに行ったからだった。

 いかずちを自在に操る雷獣羅神、雷珠として召喚できる事も分かった。未熟な舞美にとって頼もしい愛犬、いや相棒ができた。

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