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纏物語  作者: つばき春花
第参章 月姫と月読尊
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其之玖拾玖話 真真(まことまことし)月下の刀 二之話

(舞、牛面の者が自分達の事を『神面衆』と言っておった。ひょっとして奴等は、神社に仕える者達かもしれん)


「神社に仕えるっていう事は……神様に仕えてるって事?」


(うむ……例えば舞が祓った猿面の妖者、そ奴は日吉大社に仕える者、狐面は稲荷神社、昨日現れた牛頭は、天満宮……)


(それと、月姫を救えと言った鶏面の者は、伊勢神宮。他にもからす、蛇、鼠、沢山の神使がいるとされるのじゃが……)


その話を黙って聞いていた舞が口を開く……


「たとえ神の使いであろうとも、月下の刀を理由も告げず問答無用で奪おうとする輩は、私にとってすべて妖者、悪しき者。現に私達は、奴等のせいで大切な……大切な家族を失っている」


(神に仕える神面衆達……だが、その事が事実とすれば……その者達が挙って月下の刀を奪いに来たとしたら、どうする?)


(ううむぅ……この先、その様な事態になる可能性は、大じゃ……)


「では、その前に月下の刀を……」


(うむ……なるべく早くこちらの手の内に入れておく方が良かろうと、儂は考えているのじゃが……)


(では月下の刀は、やはり舞が継承するか……)


(月下の刀の宿命……若い一縷には、荷が重すぎるかのぉ、儂はとても面白いと思うのだが)


(面白いという問題ではないぞっ! 若い女子と言うが、若いどころか一縷はまだ幼子じゃ!)


言い合うオジイ達に割って入った舞が自身の意見を述べる。


「いいえ……月下の刀は、一縷に託します。一縷は、まだ幼いけれど内に秘めたその清い力は、舞美や優と互角……いやそれ以上のもの……かも知れません。それでよろしいでしょうか?


彦一郎が頷き声を上げる。


(異議なし! 月下の刀は一縷に託す!)


(おうおう! 異議などある訳なかろう!)


「もう! ちょっと待ってよ! 私に託すとかどうとか勝手な事言わないでよ! それに月下の刀って半分に折れてるんでしょ? 其れを私に託すって、折れた刀をどうしろって言うの?!」


その言葉に舞が説明をする。


「一縷、月下の刀は折れていない、いいえ、正確に言えば折れた刀を元通りに修復したの……でも……」


「でも?って……それでその刀、月下の刀は何処にあるの?」


そう一縷が尋ねると、舞はキッと出入り口の方を睨み、人差し指を立て口元に当てた、そして抜き足差し足で音を立てない様にゆっくりと戸の方へ行き取っ手に手をかけると『ガラッ!』っと勢いよく開け放った。するとそこには、巫凛が聞き耳を立てている姿があった。


驚く凛と一縷。


「あっ……しまった……」


「あぁぁぁぁぁ!! 凛、じゃなくて野弧! あんたここで何やってんの!!」


舞はその名を聞くと同時にすぅぅぅ…っと目が座り、野弧を見下ろしながら静かに呟いた。


「貴方……あの時の狐……今度は逃がしません……」


そう言いながら体から焔を奏でると瞬で火焔を纏い、腰の刀の柄に手を据えた。


しかし野弧は慌てる事もなく、今にも抜刀しようとする舞の目の前に、ゆっくりと立ち上がり宣った。


「ねぇ、その刀がある所……私も連れて行ってくれない?」


舞は、野弧の言葉に耳を貸さず、刀を抜刀し斬り捨てようとした……その時! 野弧は、急に呼気を荒げ、舞の顔を見つめながら叫んだ。


「何故っっ!!」


抜きかけた刀が途中で『ピタッ』と止まる。


「……何故、私達が月下の刀を、欲しているのか……貴方達、知りたくないの? 連れて行ってくれたなら、その訳を……教えてあげる……ふふふっ」


抜刀の構えをとったまま、暫く微動だにしなかった舞だったが、その言葉を聞き終えると、 抜きかけた刀を『カチン』と鞘に戻しながら構えを解いた。


「ふふっ……いい子ね。こんな事、話してくれる神面衆なんて……私くらいのものよ……ふふふっ」


「その笑い方……いちいち、むかつく……今度から止めないと祓うわよ」


「あははっ! 貴方やっぱり怖いわね!」


「ちっ……」


舌打ちする舞。隙あらば斬り捨ててやろうと思っていたが後に一縷から野弧は、凛の身体だけではなく、心にまで憑依しているという事を聞き其れを躊躇った。


そして出発は、満月が天高く昇る時、三日後の丑三つ時に決まった。


つづく……



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