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霊能力美少女の家 ―逝かせてあげる♡―  作者: 如月るん
第十話 おうちに帰ろう
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おまけ 長野の夏休みについての会話

 新潟県の花火大会へ向かう車中、茉莉花は雅に訊いた。


「明日は大輝くんとどこへ行くの?」


 雅は答える。


「まだ決めてない。大輝くんも考えとくって言ってた」


「来週帰っちゃうなら、一緒にゆっくり過ごせるのは、たぶん最後だもんね」


「うん…」


 桜子が今さら言った。


「大輝くんって八月いっぱい夏休みなんだね」


 頷く雅。


「うん。東京の高校だからね」


「いいなあ。わたしの実家も長野と同じで十日ぐらい早く夏休み終わってた」


「年間通したら休みの日数は変わらないんじゃないかな」


「それでももう少し夏休みが欲しかったよぉ」


「そのかわり、東京の学校は途中に登校日とかあったよ。長野の学校は無いよね、茉莉花」


 茉莉花が首を傾げる。


「どうなんだろ。他の学校は知らない。わたしは小学生の頃から登校日なんて無かったけど」


 桜子が質問する。


「じゃあ大輝くんは登校日、サボってるの?」


 雅は首を横に振った。


「知らない。考えたこと無かった。あした訊いてみよ」


「そういえば大輝くん、夏休みの課題は?」


「知らないけど、やってるんじゃないかな。去年も一昨年おととしも長野に来たけど、やってなかったら来ることを許してもらえそうにないじゃない?」


「そっか」


 そこで茉莉花が雅に質問した。


「もしかして東京の学校って夏休みの課題とか宿題って長野より多いの?」


 考えつつ答える雅。


「どうなんだろ。あたし、中学の比較しか出来ないけど、確かに日数分は東京の方が多かったかも」


「やっぱりそうなんだ」


「具体的に比較したわけじゃないから、あくまで感覚的によ」


「いや、わたしもそこまで正確なデータを求めてるわけじゃないから」


 桜子がニヤけた。


「でも日数が少ないと、小学生の時の天気つけは助かるよね。最後の日にまとめてやるとき少なくて済むし」


 呆れる雅。


「毎日コンスタントにやりなさいよ」


 苦笑いする茉莉花。


「わたし、桜子を笑えない。小学生の時に一度だけすっかり忘れてて、最後に信毎しんまいを見ながらつけた事ある」


 首を傾げる桜子。


「シンマイ……?」


 説明する茉莉花。


信濃毎日新聞しなのまいにちしんぶんっていう長野県の新聞。略して信毎しんまい


「へぇ~」


 雅が首を傾げた。


「新聞なんて見るよりネットで調べれば一発でわかるじゃない」


 渋い顔をする茉莉花。


「母親に、サボったんだからそのぐらいの苦労はしなさいって、わけのわからない教育論を押しつけられてネットを見せてもらえなかった」


「あらま。さすがは教育者」


「苦労は買ってでもしろなんて古いのよ。どれだけ効率的に事を行えるかに頭を使う方が、よっぽど将来のためだと思うけど」


「そうかもしれないけど、そもそも毎日の天気を自分の目で見て記録しないと意味が無いんだから、最後の日にまとめて効率よくやっつける事を覚えてほしくなかったんじゃないの?」


「ま、まあわかるけど…」


 そこで桜子が甲高い声で勝手に話題を変えた。


「あれ?でもさ。長野の夏休みは終わってるのに、大輝くんは何でまだホテルのお仕事してるの?」


 笑う茉莉花。


「長野の夏休みが終わってたって、他県から来る観光客の夏休みは終わってないでしょ?」


「あ、そっか」


「むしろ八月いっぱい夏休みって所の方が多いんじゃない?」


 雅がそれを否定する。


「それが、そうでもないかもしれないのよ。アニメとか見てると九月一日に新学期が始まる場面をよく見るからそれが標準みたいに思っちゃってるけど、全国的には夏休みが短くなる傾向にあるみたいよ」


 目を丸くする茉莉花。


「え?そうなの?それって寂しくない?」


「いやいや、長野は元から短いんだからいいんじゃないの?別に」


「そうなんだけど、なるべく長く女の子の水着や浴衣を見てたいじゃない?」


「価値観、オッサンか。――考えてごらん?八月の後半なんてクラゲが出て海は終わりだし、今日のは例外だけど、花火大会やお祭りだって七月から八月のお盆くらいまでがピークよ。夏休みが少し早く終わったところで変わらないわよ」


「ううむ。そう言われると、そうなのかもしれない気がしてきた」


「そうなの。そのかわり、他の時期の休みが多いんだから夏以外の季節を楽しめばいいのよ」


「そうなんだけど……」


「だいたい茉莉花は夏が好きじゃないでしょうに」


「そうでした」


「それともキャンプや海が楽しかったのかな?」


 不敵に笑う雅に対して、けれども茉莉花は正直に答えた。


「……そうなのかも」


「あら珍しく素直。じゃあ来年はもう少し早く遊びの計画を立てようか。長野の夏は観光客が集まって来るくらい魅力的な所がいっぱいあるんだから」


「雅、行きたいとこでもあんの?」


「そりゃあるわよ。長野に来てからまだ行ってない名所もたくさんあるし。ちょっと行けば標高が上がって涼しいのも魅力よね」


「まあ善光寺平ぜんこうじだいらは暑いからね」


 桜子が質問する。


「善光寺平?」


 茉莉花が答える。


「長野盆地の事ね。山に囲まれてるから夏は暑いのよ」


 雅が補足する。


「でも、ちょっと行くだけで標高が倍以上になるのよね」


 桜子が感心する。


「へぇ~」


 雅が説明する。


「長野市からアクセスしやすい所に高原って名前の付く場所がいっぱいあるの。例えば飯綱高原いいづなこうげんとか黒姫高原くろひめこうげんとか斑尾高原まだらおこうげん志賀高原しがこうげん菅平高原すがだいらこうげん聖高原ひじりこうげん白馬村はくばむらの方にもいくつか高原があるし、県境を新潟へ入ったすぐの所には妙高高原みょうこうこうげんもある。どこも名所や絶景スポットや美味しい物やアクティビティなんかが多いから、避暑にはもってこいなのよ」


 目を輝かせる桜子。


「わたし、牧場の美味しいソフトクリームが食べたい」


「牧場もいっぱいありそうよね」


 茉莉花が苦笑いしながら頷く。


「あるある。高山村の方なんて、道路に牛がいっぱい歩いてるよ。て言うか、牧場の中を道が通ってるのかな?」


 興味津々の雅。


「なにそれ。見てみたい」


 大きく頷く桜子。


「うんうん」


 茉莉花はマンチカンに向かって言った。


「だってさ。車よろしくね、マンチカン」


 マンチカンは運転しながら渋い顔をした。


「いいけど、寺の用事も色々あるので、セバスチャンにも頼んでくれよ」


 茉莉花は前に乗り出し、運転席の後ろから甘い声で囁いた。


「美少女三人に囲まれる権利を手放しちゃっていいの?」


「それで色香に惑わされて寺の仕事を放棄してたら、坊主としてどうかと思うだろ?」


 茉莉花はシートにふんぞり返り、大きく舌打ちをした。



おまけ 長野の夏休みについての会話

――終わり――


次回「第十一話 おじさまはコーヒーの香り その1 あるわけのない記憶」は7/25(金)に投稿する予定です。

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