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逝かせてあげる♡  作者: 如月るん
第一話 落とし物
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おまけ 舞台になっている長野県についての会話

 リビングのソファで雅の入れてくれたコーヒーを一口飲むと、桜子は茉莉花に訊いた。


「長野県って中部地方だよね」


 茉莉花もコーヒーを一口すすってから答えた。


「そ。本州の中部地方」


信州しんしゅうって聞くけど、長野県のこと?」


「うん。昔は信濃国しなののくにって呼ばれてて、そこから今は信州っても呼ばれたりするよ」


「でも長野の人って、長野県を『長野』って言ったり『長野県』まで言ったり『信州』って言ったり『信濃しなの』って言ったりするでしょ?どう使い分けてるの?」


「え?考えたこと無かった。たぶん文脈でなんとなく使い分けてるんだと思う。例えば『長野』だと『長野市』と混同するから『長野県』まで言うとか?でも、こんなの県名と県庁所在地名が一緒の県にはよくある話じゃないの?」


「あ、そっか」


「あとは、例えば文化や生活に関する話題の時は日常的に『信州』も使うかなぁ。自分たちの事を『信州人しんしゅうじん』っても言うし。旅行に関する事なんかだと他県の人も『信州』って言うよね。そういう風土的なものを求めて来るんだろうね」


「あっ、わかる気がする」


「あと『信濃』って言うとなんとなく地理的な事で使ってる気がする。長野県に通じる道を信濃路しなのじとか言うでしょ?」


「そうなの?それは知らなかった」


「ぜんぶ長野県の事だけど、意識せずに普通に使ってるなぁ」


 桜子はコーヒーに砂糖を追加してから訊いた。


「長野県って広いよね。北海道よりは小さいけど」


 茉莉花はコーヒーをまた一口すすってから答えた。


「でも、全国で4番目よ。北海道の次に岩手県、福島県って続いて、その次だもん」


「広い都道府県ってみんな北国ね」


「長野県って寒冷地ではあるけど、北国って言えるのかなぁ」


「なんで?東京から見たら北の方じゃない」


「知ってる?長野県の南端って東京23区よりも南なのよ」


「うそぉ!」


「ホント、ホント。南北に長い県なのよ。だから南信なんしんへ行くとなるとちょっとした旅行気分よ」


「南信?」


「あ、知らない?長野県は大きく4つの地域に分かれてるの」


「知らない」


「あのね。この辺は北信ほくしん。だいたい長野市周辺と飯山いいやまとか野沢温泉のざわおんせんとか湯田中ゆだなかしぶ温泉郷おんせんきょうとか志賀しが高原とか、北の方面一帯が北信ね。東の方、上田市周辺とか佐久さく軽井沢かるいざわ方面とかを含むのが東信とうしん。松本市周辺と木曽きそ方面と大町おおまち白馬はくば方面とかを含むのが中信ちゅうしん諏訪すわ方面と伊那いな方面と飯田いいだ方面とかを含むのが南信。地域によって方言や文化にも違いがあったりするよ。周囲の県の方が文化が近かったりすることもあるみたい」


「へえ。周囲の県って?どこ?」


「8つあるよ。北に新潟県があるでしょ?そこから時計回りに群馬県、埼玉県、山梨県、静岡県、愛知県、岐阜県、富山県まで」


「そんなにあるんだ」


「富山の隣が新潟だから海には面していない内陸県って事ね」


「それは知ってる」


「あはは。じゃあ、海が無いから長野県民は魚介類が好きって言われてるの、知ってる?」


「それは知らない。でも、なんとなくわかる」


「ご馳走と言えば海鮮ってイメージあるなぁ。わたしも好きだし」


「でも、山だって美味しいものたくさんあるでしょ?」


「まあね。標高が高いからこそ美味しく育つ作物も多いしね」


「長野県の標高ってどのぐらい高いの?」


「またざっくりとした質問するね」


 そこへ台所仕事を終えた雅が自分のコーヒーを持って入ってきて言った。


「平均標高を答えてあげればいいんじゃない?」


 茉莉花がしかめっ面をする。


「そんなの覚えてないわよ。雅は覚えてるの?」


「正確には覚えてないけど、確か1100メートルちょっとだったと思う」


 驚く桜子。


「1100メートル?!それって、もう長野県が山じゃない?」


 笑う雅。


「あはは。そう言っても過言じゃないかもね。何しろ日本一高いから」


「あ、でも人が住んでる所は低いのかな?」


「それがね。居住地域の平均標高も600メートルを越えてるのよ。2位の山梨県が500メートル弱なので、全国でもダントツ1位なの。いかに高いところにある県なのかがわかるでしょ?」


 茉莉花が感心すると言うよりも呆れた調子で訊いた。


「雅、長野県出身でもないのに、なんでそんなに詳しいの?」


「来たばっかりのころ興味があって調べたもん。なにしろ景色が山だらけだったから」


「まあね。山の見えない景色なんて県内には無いんじゃないかな」


「かもね」


「逆に信州人が東京へ行くと『山が無い!』ってなるもんね」


 桜子が訊く。


「ねえ、高い以外に長野県の特徴って他にどんなのがあるの?」


 茉莉花が答える。


「そりゃいっぱいあるだろうけど、それが当たり前だと思って暮らしてるからパッと出てこない。なんかある?雅」


 雅は考えながら答えた。


「そうねぇ。例えば博物館と美術館の数が日本一多いとか?」


 驚く茉莉花。


「え?そうなの?」


「そうよ」


「まあ、確かにそこら中にあるけども」


うつくしがはら高原美術館は有名よね。長野に来る前から知ってた」


「他にもあるわよ。変わったのがいっぱい。長野らしいのだとスキーの博物館とか?あと、あかりとか、絵本とか、テディベアでしょ?ナウマンゾウに化石、蜂、忍者、刀、宿場街道、中央構造線なんてのもあったはず」


 桜子が興奮気味に言う。


「行ってみた~い!」


「まあ、そのうちね」


 雅が考えながら続ける。


「温泉も多いわよ。数え方にもよるとは思うけど、温泉地の数は北海道に次いで2位ですって。公衆浴場は一番多いそうよ」


 桜子がさらに興奮気味に言う。


「あ、ねえねえ。お猿の入る温泉も長野県でしょ?」


 茉莉花が答える。


「ああ、地獄谷じごくだに野猿やえん公苑こうえんね。そんなに遠くないわよ」


「そうなの?!どこ?!」


「車だと一時間ぐらいかな?電車だと長野駅から長野電鉄で終点まで行くと有名な湯田中渋温泉郷があるんだけど、そこから志賀高原へ向かう途中に上林かんばやし温泉ってあって、さらにそこから散策路を歩いて奥へ入っていくと着くよ」


「行きたい!お猿と温泉に入りたい!」


「あー、それは無理だわ」


「ど、どうして?」


「お猿専用のお風呂だから?観光客の目に晒されながら入る勇気とこっぴどく怒られる覚悟があるなら止めないけど」


「えー?でもお猿と入ったってネットで見た気がするんだけど」


「それ、たぶん隣の宿だ。運がいいと露天風呂に猿が来るって聞いたけど、ホントかどうかは知らない」


「いいなあ」


「うん、いいよね」


 雅がピシャリと言った。


「泊まらないよ」


 茉莉花が口を尖らせた。


「いいじゃん。夢を語るぐらい」


「茉莉花のは夢に聞こえない」


 茉莉花はさらに口を尖らせた。



おまけ 舞台になっている長野県についての会話

――終わり――


次回「第二話 愛しのジョージ その1 オフィスビルの霊」は6/25(火)に投稿する予定です。

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