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霊能力美少女の家 ―逝かせてあげる♡―  作者: 如月るん
第八話 見えざる敵と危険なバカンス
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その4 異世界のツンデレ姫はホントは勇者の言葉が欲しい

 二日目、全員で朝食を食べたあと、二グループに分かれて楽しむ事になった。

 沙羅咲と楓花、明日香、奏太、亮、颯空、穂乃莉、それに桜子と結城は昨日に引き続きビーチへ行った。

 茉莉花と雅、マンチカン、大輝、杉浦、陽葵はマンチカンの運転するミニバンで出かけた。メインの目的は鮮魚マーケットと温泉である。



 マンチカンの運転する車は、途中の大きい公園で雅と大輝を落っことし、鮮魚マーケットへ向かった。

 車中で陽葵が興味津々に訊いた。


「ねえ、ねえ、あの彼氏って、東京からわざわざ雅ちゃんに会いにきてるんでしょ?」


 助手席の茉莉花が振り向いて答える。


「そうです、そうです」


「めっちゃラブラブじゃん」


「彼の方は雅のこと、めっちゃ好きですけど、雅はただの幼馴染みって言ってます」


「そうなの?」


「遊びに来てくれてるから放置はできないですけど、単なるおもてなしだそうです」


「仲よさそうなのに…」


「そりゃ、幼馴染みですから」


「あ、それで一緒に温泉行かないの?」


 雅が温泉へ行かない本当の理由を知っている茉莉花の目が泳ぐ。


「え?」


「だって温泉だと男女で別々になっちゃうでしょ?」


「ああ。……そうです、そうです」


 安堵する茉莉花をマンチカンが横目で見て鼻で笑った。





 ビーチでは桜子と結城がレジャーシートに並んで座って、海で遊ぶ他のメンバーを眺めていた。

 結城が呆れて言った。


「あいつら、ずっと遊んでるけど、疲れないのかな」


 桜子は訊いた。


「結城くんは疲れたの?」


「いや、もう、けっこう遊んだでしょ。遊び足りない?」


「ううん。結城くんとこうしてるの好き」


「ボクも好きだな。というより、懐かしいかな?」


「懐かしい?」


「うん。昨日、夜の浜辺を歩いたって話をしたでしょ?あれ、なんとなく思い出した」


「ホントに?」


「うん」


「聞きたい、聞きたい」


「じゃあ話すけど、昨日は夜の浜辺って言ったでしょ?あれ正確には早朝だった。で、浜辺って言ったけど、海じゃないかもしれない。湖とかかも」


「うん」


「なんでそんな所にいたのかはもう覚えてないんだけど、師匠や先輩たちと一緒に泊まってた宿を朝早くこっそり二人で抜け出したんだ」


「うんうん」


「あの時は、もうお互い気持ちを伝えあったあとだったと思う」


「うんうんうん」


「だから、誰も見てないし、腕を組んでたんじゃないかな」


「ひゃ~あ」


 桜子は両手で口を覆った。





 サクラコはユウキの腕にちょこんとしがみついて顔を寄せていた。

 ユウキは余裕なく言った。


「そんなにくっつかれたら困るんだけど」


 サクラコは目だけでユウキの顔を見て、不満げに訊いた。


「何が困るの?」


「なんていうか、恥ずかしいっていうか…」


 サクラコはおもむろにユウキの胸に手を当てた。


「ホントだ。ドキドキしてる」


「ド、ドキドキなんてしてないよ」


「そっちの手を貸して?」


「な、なに?」


 組んでいる腕とは反対の手をユウキは差し出した。それを掴んでサクラコは自分の胸に当てた。

 ユウキは慌てた。


「な、なにするんだよ」


 引っ込めようとするユウキの手を強く押さえてサクラコは言った。


「ほら、わかる?わたしはドキドキしてるよ?」


 ユウキは赤くなりながらも頷いた。


「…ホントだ」


「なんでだと思う?」


「なんで?」


「わからないの?――ホントはわかってるんでしょ?」


「わ、わからないよ」


「あなたと同じ気持ちってこと」


「…………」



 しばらく歩いたあと、サクラコとユウキは岩のある所で並んで座った。ユウキはサクラコの肩を抱き、サクラコはユウキの肩に頭を乗せた。

 サクラコは囁いた。


「わたし、すごくドキドキしてる」


 ユウキが小さく頷く。


「ボクも」


「あれ?急に素直になったね」


「隠してもしょうがないだろ。ボクの気持ちは知られてるんだから」


「……気持ちって?」


「わかるだろ」


「わからないよ」


「伝えただろ」


「だって、気持ちが変わるかもしれないでしょ?」


「変わらないよ」


「ホントに?」


「ホントだよ。一生、変わらない。……いや、生まれかわったって変わらない」


「嬉しい。……でもね。ときどき不安になるの。まだ同じ気持ちでいてくれてるのかなって」


「不安になんかなるなよ」


 サクラコは少し頭を浮かせてユウキの顔を見た。


「だってしょうがないじゃない。ユウキくんの気持ちをわたしは読めないもん。思ってる事は言葉にしてほしいな」


 息がかかるほど間近なサクラコの顔にユウキの目は泳いだ。


「そ、そんなこと言ったって」


「恥ずかしいの?」


「ばっ……恥ずかしくなんてないよ」


「じゃあ言ってよ。わたしたち、ずっと一緒なのよ。恥ずかしくても、気持ちをちゃんと伝えあお?」


「だから、恥ずかしくなんてないってば」


「そうなの?」


「いいか?……ボクはサクラコ、お前が……す…………ちょっと待って」


「うん……」


 サクラコは嬉しそうにユウキの顔を見つめて言葉を待った。

 ユウキはサクラコの顔を直視できずに前を向いたまま言った。


「……………………好きだ……」


「うわっ……言われるのも恥ずかしいんだね。嬉しいけど」


「不安は無くなったか?」


「うん。わたしもユウキくん……大好きよ」


 サクラコは可愛く微笑んだ。

 ユウキはサクラコの顔をチラリと見た。頬が紅潮しているようにも見えたが、朝焼けに照らされていてユウキの目には区別がつかなかった。





「……子…………桜子」


 結城に呼ばれて桜子は我に返った。

 いつの間にか立っている結城がレジャーシートに座る桜子の顔を心配そうに覗き込んでいる。


「大丈夫か?桜子。熱にやられたか?」


 桜子は妄想で顔を赤くしていたのだが、それで結城を心配させてしまったようだ。

 桜子は大きくかぶりを振った。


「ううん、平気。ちょっと考え事をしてただけ」


「ならいいけど。――みんなそろそろ引き上げるらしい」


「うん、わかった」


 桜子は立ち上がった。



 別荘への帰り道、みんなの一番うしろを桜子と並んで歩いていた結城が、桜子に耳打ちをした。


「やっぱり桜子がいちばん可愛いな」


 桜子は、はにかんだ。


「なあに、急に」


「ふと思ったからさ。なんならビーチにいた全ての女性の中でいちばん可愛かったよ」


「い…言いすぎだよ。でも、ありがとう」


 桜子は妄想を思い出していた。思っている事は言葉にしてほしいと言ったのはサクラコである。結城はその通りにしているだけだ。だとしたら桜子からやめてとは言えない。


 ――でも、それって結城くんの空想よね。


 桜子は混乱していた。現実と空想を混同してしまっている。

 そこで桜子は急に不思議な感覚に包まれた。海の方を振り返る。早朝の浜辺を腕を組んで歩くサクラコとユウキを思い浮かべる。結城の空想を元にした妄想だったはずなのに、なぜか本当にあった事のように桜子は感じていた。





 別荘は賑やかだった。豊富な材料を使って料理係の沙羅咲と楓花と雅と桜子の作ったご馳走を全員で囲んでいた。


 楓花が陽葵に言った。


「あ、それ美味しいでしょ?あたしが作ったのよ」


 陽葵が頷く。


「美味しい、美味しい。あんたよくアクアパッツァの作り方なんて知ってたわね」


「知ってるよ、そのぐらい。今日は切り身魚だけどね」


「鯛でも買ってきてあげればよかったかな」


「いいよ。食材が余るほどあるのに」


「そうよね。鮮魚マーケットに美味しそうなものがいっぱい売られてたけど、長野に帰るとき寄っていこうって事になって、何も買わなかったのよね」


「じゃあ、何しにマーケットに行ったのよ」


「豪華な海鮮丼を食べに?」


「あー!ずる~い」


「ふっふっふ。大人の特権よ」


 楓花が膨れる。


「いいなぁ。帰りに寄るなら食べてこうよ」


 陽葵は笑いながら言った。


「別に、もういいかなぁ」


「ずる~い」


「だったら一緒に来ればよかったじゃない」


「だって、せっかく海に来たんだもん。満喫したいじゃない」


「せっかく海に来たから海鮮丼じゃない」


「ぐ……言い返せない」


 そこで杉浦が話に割り込んだ。


「小林さん。海を満喫するのはいいけど、水分はしっかり取りなさいよ。あと、定期的に日陰で休憩すること」


 楓花は頷いてから言った。


「さすが保健の先生」


「茶化さない」


「でも、ごめんね。休みの日なのに仕事みたいなことさせて」


「なにが?」


「このあと」


「別にいいわよ。このあとに限らず、目に入る所で誰かに何かがあれば助けるのが人間でしょ?たまたまあたしには多少の知識があるってだけで」


「そうかもしれないけど」


「どっちみち一人あまるんでしょ?いちばん大人なあたしが何かあった時のために待機してるのが妥当よ」


 そこで桜子が質問した。


「このあと、何かやるの?」


 楓花が答える。


「ああ、肝だめしをしようかと思って」


「き、肝だめし?」


「ここから少し上に行くと神社があって、その周辺に遊歩道とか雰囲気のある道路とかがあるから肝だめしにちょうどいいかなって。ここは何回か来たことあるから地図はもう作ってあるの。そこを二人組で回ったら楽しそうでしょ?」


「こ、怖そうだけど」


「あはは。心霊研究会が怖がってどうするの?」


「だって、お化け屋敷とかでおどかされるのとか、苦手だもん」


「別に何も仕掛けはしてないよ。雰囲気あるコースを歩くだけ。それに高遠さんは結城くんと一緒でいいよ」


 急に明るくなる桜子。


「ホントに?」


 楓花は大きく頷いた。


「もちろん。基本はくじ引きにするけど、高遠さんと結城くん、香月さんと大輝くん、桐生さんとマンチカンさんは一緒の方がいいでしょ?」


 そこで茉莉花が立ち上がった。


「ちょっと待って!!なんでわたしがマンチカンと一緒なのよ!」


「だってマンチカンさんを海に誘ったのって桐生さんでしょ?」


「違うわよ。雅が誘ったのよ」


「そうなの?――でも仲が良さそうだし」


「仲良くない。ただの腐れ縁。てかマンチカンと一緒に肝だめしなんて嫌よ、絶対」


「あれ、困ったわね。そうすると、桐生さんは他の誰かと組んでもらうけど…」


 茉莉花は全員をぐるりと見渡した。そして自分のミスに気がついた。他の誰と二人きりになっても気まずい。気まずくない桜子と雅はもうペアが決まっている。だったらマンチカンで我慢しておけば、まだよかった。

 茉莉花が取る策は一つしかなかった。


「わたしは待機してるわ。杉浦先生が参加して」


 杉浦は苦笑いした。


「別に気を使わなくていいのよ?」


「いえ。肝だめしをするんですから、保健の先生より心霊研究会の会長が待機してた方がいいと思うんです」


 楓花も何かを察して苦笑いした。


「よくわからない理屈だけど、桐生さんがそれでいいならそうしましょ?――じゃあ、八人分のくじしか作ってないし、杉浦先生は桐生さんと交代ってことでマンチカンさんと一緒でいいかな」


 杉浦は頷いた。


「いいわよ、全然」


「マンチカンさんもいいですか?」


 マンチカンは楽しそうに笑顔で答えた。


「もちろん」


 マンチカンは茉莉花に睨まれている事に、このとき全く気付いていなかった。



 食事のあと、くじ引きが行われた。女子と男子のペアになるように、女子は女子で男子は男子でくじを引いたが、穂乃莉は男子と一緒のくじを引いた。穂乃莉と男子をペアにしないためだ。

 奏太が亮に囁いた。


「すごく期待してたのに、これじゃ颯空ちゃんと絶対ペアになれないじゃん」


 颯空はもちろん男子の方のくじを引くので、必然的に女子とペアを組む事になる。奏太とペアになる事は無い。

 亮は女子とペアになれるという事に浮かれていたので、奏太が颯空と親密になれるように協力するという約束をすっかり忘れていた。

 亮は興味なさそうに言った。


「颯空ちゃんを女子に含めるように提案してみたら?」


「今さらそんなこと出来るわけないだろ。人数的にも合わなくなるし」


「だったらしょうがないじゃん」


「なんだよ。取り持つとか言っといて」


 亮は面倒くさいという気持ちが顔に出ていた。


「まだ二日目だろ。チャンスは必ずあるって」


「…………」


 男の友情は儚かった。


 結局ペアは、楓花と亮、沙羅咲と奏太、明日香と颯空、陽葵と穂乃莉に決まった。


次回「その5 千社札」は金曜日の朝の投稿が難しいため、前日2/20(木)の夜に投稿する予定です。

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