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霊能力美少女の家 ―逝かせてあげる♡―  作者: 如月るん
第八話 見えざる敵と危険なバカンス
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その1 デッキチェアーの水着の彼女

 いつもならセバスチャンが運転しているミニバンを、今日はマンチカンが運転している。

 このミニバンに乗るときは、運転席のすぐに後ろの席には茉莉花が、その左側には桜子が、茉莉花の後ろの席には雅が座るのが、いつものお決まりだった。けれども今日は、雅の左側には大輝が座っていた。


 大輝は言った。


「なんか、ごめんなさい。余計なのがついてきちゃって」


 茉莉花が楽しそうに答える。


「気にしないで。雅がどうしても大輝くんと離れたくないって泣くから…」


 もちろん雅は反論する。


「あたしがいつ泣いたのよ」


「あれ?泣いてなかったっけ?」


「泣いてないわよ。マンチカンを連れていくんだって駄々をこねる茉莉花なら見たけど」


「ほう。わたしと戦争しようってんだな?」


「先に宣戦布告したのは茉莉花じゃない」


 茉莉花と雅にとってはいつもの言葉遊びなのだが、桜子は本気にしてしまった。


「やめて。ケンカしないで」


 茉莉花は薄ら笑いを浮かべながら答える。


「だって、雅が素直じゃないから」


「でも泣いたなんてウソでしょ?それはよくないよ。雅ちゃんも、茉莉花ちゃんが駄々をこねたなんてウソ言っちゃダメでしょ?マンチカンに運転を頼んだの、雅ちゃんだし」


 雅は苦笑いをしている。


「だって茉莉花が素直じゃないから」


 桜子は大きく頷いた。


「わかった。わたしは素直にホントの事を言うね。クラスのメンバーが何人かいるからって、あまり乗り気じゃなかった結城くんを、甘えた声で説得して参加してもらったのはわたしよ」


 茉莉花が冷めた声で言う。


「いや、訊いてないから」


「だって結城くんと海に行きたかったし、新しい水着を見せて結城くんに可愛いって思ってもらいたいんだもん。いつも余裕な結城くんをどぎまぎさせたいの」


 茉莉花は苦笑いしながら雅に言った。


「ダメだ、雅。桜子の脳みそに花咲いちゃったよ」


 雅が笑う。


「なに言ってるの。もともと咲いてるじゃない」


 桜子は膨れた。


「茉莉花ちゃんも雅ちゃんもひど~い」


 その時、誰かの鼻をすする音が聞こえた。大輝だった。

 雅は大輝を見て唖然とした。


「ど、どうしたの?」


 大輝は静かに涙を流していた。


「なんでもない」


「なんでもなくはないでしょ?」


「うん、ちょっと……ごめん…………雅が幸せそうだったから……」


「…………」


 車内が沈黙に包まれた。

 そんなしんみりした空気を打ち消すように、マンチカンが言った。


「サービスエリアに着いたぞ。ちょっとトイレタイムな」


 車はサービスエリアに向けて徐々にスピードを落とした。





 別荘に着くと、結城以外の他のメンバーは既に到着していた。


 雅は楓花に訊いた。


「このあとスーパーに買い出しに行くんでしょ?」


 楓花は首を横に振った。


「それがね。ここ貸してくれた伯母さんがね。大きい冷蔵庫がいっぱいになるほどネットスーパーに食材を注文してくれたのよ。あとお菓子とか飲み物とかスイカまで」


「え?それは悪くない?」


「って言ったんだけど、いいからいいからって。さっき届いたから、もう片付けたよ」


「ありがたいけど、申し訳ないよ」


「うん。ただ伯母さん、こうと決めたら引かない人だから」


「そうなんだ」


「歩いて行ける所にコンビニあるから、足りない物があったらそこで充分だと思う」


 とりあえず買い出しの予定が無くなったので、さっそく全員で海へ行こうという話になった。



 別荘から海へは歩いてすぐだった。階段を数段くだり、海沿いの道路を渡ればそこはもう海の家が並ぶ海水浴場である。

 パラソルを三本立て、レジャーシートやデッキチェアーを並べる。人は多かったが、場所を充分確保できるほど広い砂浜だった。


 茉莉花たちは、結構な団体さんだった。

 女性は茉莉花と雅と明日香、島崎しまざき沙羅咲さらさ小林こばやし楓花ふうか、それに楓花の姉で大学二年の陽葵ひまり、予定には無かったが急遽参加する事になった沙羅咲の妹で小学四年生の穂乃莉ほのり、あと養護教諭であり天文部の顧問でもある杉浦すぎうら先生の八人である。

 男性はマンチカンと大輝、神谷かみや奏太そうた赤坂あかさかりょう、それに北山きたやま颯空そらの五人だった。

 結城はまだ来ていない。桜子は結城を待って別荘に残った。


 当然ではあるが、全員が水着に着替えていた。

 マンチカンは目が回りそうなサイケデリックな柄の水着を、大輝と奏太と亮は無難な柄の水着を着ていた。もちろん颯空はレディースの水着を着ている。ただしボトムスは股間が目立たないようなゆったりしたキュロットスカートタイプの水着だった。

 茉莉花はノンキボーテで買ったばかりのアシンメトリーな凝ったデザインの大人っぽい黒ビキニを、雅は去年に買った白いヒラヒラ多めなワンピースを着ていた。明日香はスポーティな水着を、沙羅咲と楓花はショートパンツとラッシュガードがセットになった水着を、陽葵はミニスカートとラッシュガードがセットになった水着を、穂乃莉はリボンとスカート付きのワンピースを、杉浦先生は肌面積多めなセクシービキニを着ていた。


 奏太と亮の目は女性陣の中をさまよっていた。もちろんそこには颯空も含まれている。

 楓花がそれを批判する。


「ちょっと男子ふたり。目がエロい」


 奏太が反論する。


「べ、別にそんなつもりじゃないし」


 亮が笑う。


「バカおまえ。うろたえたら認めてるのと一緒だろ?」


「でも、そんなこと言ったって…」


 亮は楓花に右手でゴメンのポーズをして見せた。


「オレたち健康な男子だからさ。水着の可愛い女の子がいれば、つい見ちゃうんだよ。許してくれない?」


 楓花は可愛いと言われた事に照れながらも笑った。


「しょうがないなあ」


 茉莉花以外の高校生と沙羅咲の妹の穂乃莉は、荷物を置くとさっそく駆け出した。海に入って大はしゃぎである。


 茉莉花と杉浦先生と陽葵はパラソルの下から出たくない。各々レジャーシートやデッキチェアーに寝そべった。

 杉浦はサングラスをかけながら茉莉花に訊いた。


「桐生さんは行かないの?」


 茉莉花はデッキチェアーにふんぞり返って左隣の杉浦に答えた。


「えー?嫌ですよ。焼きたくないもん」


「じゃあ、なぜ海に来たのよ」


「水着を着たいからに決まってるでしょ?」


「着たいだけなら家でいいじゃない」


「なに言ってるんです。女の子の水着は人に見られて初めてファッションとして完成するんです。杉浦先生ならわかってくれると思ったんだけどな?」


 茉莉花は杉浦の大人な水着を舐め回すように見た。しかし杉浦は不敵に笑った。


「わからないわね。わたしが見せたいのは水着じゃなくて体の方だから」


「うわっ。なに生徒にエロいことぶっちゃけてるんですか。露出狂?」


「勘違いしないでね。裸を見せたいんじゃなくて、完璧に作り上げたプロポーションを見せて優越感に浸りたいのよ」


「な、なるほど。でも先生の体ってエロいですよ。めちゃくちゃ」


「まあ、目指してるのは健康美じゃないからね。セックスシンボルだから」


「セックスシンボルって……」


「そういう意味ではエロい視線、上等なんだけどね」


「だからって学校でのミニスカートの白衣姿、アレどうかと思いますよ。男子生徒が刺激されまくって教育上よくないのでは?」


「おかしなこと言うわね。あなたド下手な落書きと美しい絵画、幸せな気分になるのはどっち?」


「言いたい事はわかりますけど…」


「別にパンツを見せてるわけじゃなし、あたしの体のラインはむしろ情操教育になってると思うんだけど。絵画のビーナスよりも美しいでしょ?」


「すごい自信ですね」


「そういうあなたのいつものガーターベルトの方があたしはエロいと思うわよ?」


 茉莉花は眉間にシワを寄せた。


「生徒をそういう目で見てるんですか?」


「だってガーターベルトって、そういうアイテムじゃない」


「違います!あれはファッションです!」


「わかってるわよ。でも、そういう目で見る男の子は一定数は絶対にいるから」


「それは理解できますけど…」


「水着も同じよ。自分がファッションって思ってても、そういう目で見る男の子は沢山いるわよ。いちいち目くじら立ててたらキリがないから」


「心得てますよ」


「だから、隣のその子も怒らないであげてね」


 杉浦は茉莉花の右隣を指差している。茉莉花がそちらをパッと見ると、マンチカンがレジャーシートに座ってこちらを見ていた。茉莉花は赤くなりつつも、マンチカンを睨んだ。


「なに見てんのよ」


 マンチカンはうろたえた。


「はあ?別におまえのこと見てねぇし。自意識過剰なんじゃね?」


「じゃあ、なに見て――」


 茉莉花はバッと左隣の杉浦を見た。こちらを見ているマンチカンが自分を見ていないとしたら……。

 マンチカンを再び睨む茉莉花。


「あんた、杉浦先生のエロい体を見てたのね」


 マンチカンは更にうろたえた。


「ばっ…見てねえよ。先生に失礼だろ」


 杉浦がマンチカンに声をかける。


「大丈夫よぉ。見たければいくらでも見て。なんならキミに日焼け止めを塗ってもらおうかな?タッチできた方が嬉しいでしょ?」


「いや、それはさすがに――」


 そこで茉莉花が割って入った。


「ダメです!」


 杉浦が不敵に笑っている。


「あら、どうして?」


「こいつは節操なしなので、先生が危険です。どさくさで変な所を触るに決まってます」


「別にいいわよ、変な所を触っても」


「なに言ってるんですか?先生なのに」


「だってその子、ウチの生徒じゃないでしょ?一時の過ちが起きたって、何も問題ないわ」


「ダメです。ダメです。一時の過ちなんて」


 それから茉莉花はマンチカンに矛先を向けた。


「ほら、あんたがエロい目で見るから先生が欲情しちゃったじゃないの」


 杉浦がツッコミを入れる。


「そこまでは言ってないけど」


 マンチカンは慌てた。


「落ち着け。そもそも先生をそんな目で見てない」


 茉莉花がさらに睨みつける。


「じゃあ、どんな目で見てたのよ」


「だから、見てない。……ホントはおまえを見てたんだ」


「――!」


 夏の暑さを感じていた茉莉花だったが、顔だけがさらに暑くなった。


「……わたしの…何を見てたのよ」


 マンチカンは少し口ごもってから答えた。


「顔も……体も……」


「わたしがファッションは人に見られて完成するって言ったから?」


「オレが女子のファッションに興味あると思うか?」


「思わない」


「水着じゃなくて体を見てたんだよ」


「あ…あんた、なにキモいことサラッと言ってんの?」


「いいよ、キモくて」


「つまり、エロい目で見てたって事ね」


「否定はしないよ。それもあるから」


「それも?それもって?」


「…………」


「それ以外に何があんの?」


「いや、あの頃よりかなり育ってるから、しみじみしてたと言うか……」


 茉莉花は一瞬だけ杉浦の方をチラリと見てから言った。


「ばっ、なに言ってんのよ!キモッ!キモッ!変体!キモッ!変体キモ坊主!」


 マンチカンは悲しげに微笑んだ。


「キモくてごめんな」


 そこで杉浦が呆れ気味に言った。


「こんな所で痴話喧嘩しなさんな」


 間髪を入れずに茉莉花は言った。


「痴話喧嘩じゃありません!」


 杉浦は笑った。





 結城が別荘にようやく到着した。


「ごめん。迷った」


 桜子が満面の笑みで迎えた。


「大丈夫。そんなに遅れてないよ」


「みんなは?」


「海に行った。わたしたちも着替えて行こ?」


「そうだな」


「結城くんの部屋に案内するね」


 桜子は結城を別荘の中へ導き入れる。

 別荘は木の素材を生かしたお洒落なつくりで、元々がペンションだったため共用部分は広い。二階建てで、部屋は主に二階にあった。

 桜子は結城と一緒に階段をのぼりながら、突然の既視感に立ち止まった。

 結城も止まって桜子に声をかけた。


「どうした?」


 桜子は少し考えてから、結城に訊いた。


「ねえ。わたしたちの部屋って二階だった?」


 結城は首を傾げながら上を指差した。


「二階なんだろ?」


「そうじゃなくて、前世のわたしたちの部屋。二階の一番奥じゃなかった?」


 結城は興奮した。


「思い出したのか?!」


 桜子は首を横に振った。


「違うの。なんとなく、そうかなって。なんとなく、そんな気がしただけ」


「そうか…」


 前世の話は中二病の結城の妄想である。桜子の中に既視感など生じるわけがない。そう思いながらも、桜子は不思議な懐かしさを覚えていた。



 桜子が水着に着替えて階段を下りていくと、下では既に水着に着替えた結城がソファに座って待っていた。結城は桜子の水着姿を見た途端、思わず立ち上がり、呟くように言った。


「可愛い……」


 桜子の水着は、ラッフルがあしらわれたブラと、ラッフルスカートが一体になったパンツの、パステルピンクのビキニである。もちろん茉莉花のチョイスだった。


 桜子の水着姿をじっくりと眺める結城。全く遠慮をする様子もない。

 桜子は赤くなった。


「は、恥ずかしいよ」


「恥ずかしがる桜子も可愛いよ」


「もう…」


 結城は、さも当たり前のように言った。


「ゆっくり回ってみて」


「え?……こう?」


 桜子は素直にその場でゆっくり回った。


「あ、そこでストップ」


 桜子は結城に背中を向けて止まった。


「これでいい?」


「ちょっと前屈みになって、顔だけこっちへ向けてみて」


「えっ?えっ?どう?……こう?」


 桜子は言われた通りのポーズをとった。必然的にお尻を突き出す形になる。それを結城が、まるで彫像でも鑑賞するように眺めている。

 結城の自然な声に惑わされていた桜子も、一瞬だけに戻って羞恥に晒された。


 ――何これ…。


 結城は大きく頷いた。


「うん。大丈夫」


 桜子はそのポーズのまま訊いた。


「大丈夫って、なにが?」


「少しエッチだけど、それを可愛いが上回ってる」


「えっ!?エッチなの?!」


「うん。だから他の男には見せたくないって思っちゃう」


「えっ?海へ行くの、やめようか?」


「でも、ボクの彼女はこんなに可愛いんだぞって自慢したい気持ちもある」


「そ、そうなの?」


「まあ何にせよ、可愛いが上回ってれば許容範囲かなって」


「な、なるほど」


 桜子はグラビア写真のようなポーズをとったまま、結城の謎理論になぜか納得させられていた。


次回「その2 それぞれのビーチの過ごし方」は1/31(金)に投稿する予定です。

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