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霊能力美少女の家 ―逝かせてあげる♡―  作者: 如月るん
第六話 夏休みの始まり
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その5 クラスメイト

 ゼバスチャンに送ってもらい、茉莉花たちはキャンプ場に着いた。


 クラスメイトはすぐに見つかった。教室で声をかけてきた二人、島崎しまざき沙羅咲さらさ小林こばやし楓花ふうかが椅子に座ってコーヒーを飲みながら談笑していた。テントの設営はとうに済んでいるようだ。

 雅が声をかけた。


「遅くなってごめん」


 沙羅咲が答える。


「大丈夫だよ。まだ来てない人もいるし」


「他のみんなは?」


「それぞれどこかへ遊びに行っちゃった。そこのお蕎麦やさんへおひる食べに行った子もいるし。三人はおひる食べた?」


「うん。食べてきた」


「あ、それ食材?」


 茉莉花たち三人は自分の荷物の他にビニールの買い物袋を持っていた。雅が頷く。


「うん」


「そこのテーブルに置いといて」


 そばには既に食材などの置かれたテーブルがあった。


「ここね」


「うん。乗る?」


「たぶん」


 それから沙羅咲は立ち上がった。


「コーヒー飲む?」


 荷物を置きながら雅は答えた。


「いただこうかな。茉莉花と桜子は?」


 二人は頷いた。

 沙羅咲はコーヒーを用意しながら言った。


「その辺の椅子、ウチのだから適当に座って」


 手慣れた手つきで沙羅咲はコーヒーを入れた。格好からして日頃からキャンプをする人のようである。楓花もアウトドアファッションがさまになっていた。


 それに比べて茉莉花たち三人は初心者まる出しだった。

 茉莉花はオーバーサイズのドルマンカットソーという火や水を扱いにくそうな格好である。おまけに下は前回のセバスチャンとのデイキャンプの時と変わらずホットパンツとニーハイソックスだった。

 桜子は前回のようなノースリーブではなく長袖のTシャツを着てはいたが、ボトムスはショートパンツだった。なにしろ茉莉花の「可愛くない」という主張からジーンズのようなロング丈のパンツを持っていない。もっとも、下に薄手のタイツを穿いて防御力は高めていた。

 珍しいのは雅だった。スカートではなくハイウエストのショートパンツを穿いていた。足にはストライプ柄の入ったオーバーニーソックスを履いている。


 桜子は雅がスカート以外のボトムスを穿いているのを体育の授業以外で初めて見た。椅子に座った桜子は、まだテーブルの上の食材を整理している雅を見ていた。そして無意識の内に雅のショートパンツを凝視していた。

 ショートパンツはタイトで、雅の体にピッタリとフィットしていた。なので後ろから見ると、雅の尻の小さくてくぼみの無いキレイな丸い形がよくわかる。

 ただ、桜子が不思議に思ったのは前から見た姿だった。雅がこちらを向く度に何度も確認しているのに、体にフィットしたショートパンツの前面中央のラインはまっすぐ足の付け根の隙間へ消えていく。それは布の内側に余計なものが何もない事を示している。桜子は脱衣場で見た光景を思い出しつつ首をかしげた。

 そこで雅が顔をこちらへ向けたので、桜子は慌てて視線をあっちの方へ逸らした。


 沙羅咲は座った三人にコーヒーを渡すと、自分も座ってから言った。


「今回ね。女子が十二人、男子が三人の十五人なのね。ホントはもっと参加してほしかったけど、部活やってる子が多くてね」


 雅がフォローする。


「十五人もいれば充分だと思うよ。逆によく集めたなって思うもん。すごいよ」


「そういってくれると嬉しいけど。男子はもう少し参加してほしかったけどね」


「女子の誘いに気おくれしたのかな?」


「だとしたら男子の協力者に誘ってもらえばよかった」


「次はそうしよ?」


「うん」


 そこで思い出したように沙羅咲が言った。


「そうそう。テントが三張りしか用意できなくてね。男子が一張り使うとすると、女子十二人で二張りのテントは無理なのよね。だからもう一張りレンタルしようかとも思ったんだけど、サイト料金と合わせたらバンガローを一棟借りるのと変わらないのよ。んで運良く空いてたし、キャンプ初めてで体調くずす子が出るかもしれないじゃない?救護室代わりに取っちゃった。よかったら香月さんたちで使って」


 渡りに船とはこの事だと雅は思った。茉莉花がキャンプの何を嫌がっているかというと、テントに泊まる事だ。バンガローならまだましだろう。


「ありがとう。じゃあ遠慮なく使わせて――」


 そこで茉莉花が割って入った。


「ダメよ、そんなの。他にもバンガローを使いたいって人がいるかもしれないじゃない。くじ引きにしない?」


 よそ行きの顔で八方美人な発言をする茉莉花にぬるい目を向けながら、雅も同調した。


「そうね。ここは公平に決めましょ?」


 沙羅咲も頷く。


「じゃあ、あとで全員集合したら決めよ」



 その後、クラスメイトがバラバラと戻ってきたりしたが、大抵はすぐにまたどこかへ行ってしまう。

 沙羅咲が言った。


「香月さんたちも自由にしてくれていいのよ」


 雅が答える。


「島崎さんと小林さんもずっと荷物番はたいへんでしょ?見てるから行きたいとこ行ってきたら?」


「わたしたちはキャンプなんてしょっちゅうやってるからいいのよ。むしろゆっくりしたいぐらいで。楓花と交代でトイレも行けるし」


 そこで桜子が前のめりに言った。


「茉莉花ちゃん、ちょっと行ってみない?」


 茉莉花はスマホを見ながら答えた。


「行かない。わたしは読書をしてるから」


 文学少女然とした顔で茉莉花が見ているスマホ画面にマンガが表示されているのを横目で見ながら、雅は仕方なく言った。


「じゃあ、ちょっと行ってみようか」


 桜子を一人で行かせると、また迷いそうである。


 ところが、そこへ結城がやってきた。

 結城は黒いTシャツの袖を肩まで捲り、ブラックジーンズに黒いレザーのショートブーツ、手には黒いレザーの指ぬきグローブをはめている。さすがに包帯や眼帯はしていない。

 結城は来るなり沙羅咲と楓花に笑顔で言った。


「こんにちは」


 高校生が同級生にする挨拶にしてはかしこまり過ぎていて違和感がありそうなところを、結城だとなぜかごく自然に聞こえる。

 沙羅咲と楓花は返事をした。


「あ、こ、こんにちは」


 ほとんど話したことも無いクラスメイトに挨拶されて戸惑うのは仕方のない事だ。おまけに結城は眼帯さえしていなければ美形の爽やか男子なのだ。それが笑顔を向けてくれば、どぎまぎするのも無理はない。


 結城は手に持った買い物袋をテーブルに置きつつ訊いた。


「食材、ここでいい?」


 沙羅咲はぎこちなく答えた。


「あ、うん、そこ、ありがとう」


 そこで雅は言った。


「ちょうど良かった。桜子、結城くんと行ってきたら?」


 桜子は照れくさそうに頷くと、結城に言った。


「ちょっとその辺を見に行かない?」


 結城は微笑んで答えた。


「うん、行こうか」


 去っていく桜子と結城の後ろ姿を不満げに見送りながら、茉莉花は言った。


「あの二人、ダイジョブなの?雅」


「あたしに訊かないで。見張ってるわけじゃないんだから」


 そこで楓花が訊いてきた。


「高遠さんと結城くんって付き合ってるの?」


 雅があっさり答える。


「そうよ」


「どうしてそうなるの?」


 疑問に思うのも当然である。

 桜子が転校してきた日の結城とのやり取りはクラス全員が見ている。当然、結城が前世の関係うんぬん言って桜子に近付こうとしていたのも知っている。けれども、それを茉莉花が防いでいたのも見ていたはずだし、何より中二病の設定を掲げて迫られたとしても普通に考えて「はいそうですか」と受け入れるバカはいない。

 それなのにいつの間にか付き合っているとなれば疑問しかない。

 雅はそれをわかっていておちゃらけた。


「前世では恋人だったみたいよ」


「香月さんって、たまに面白いこと言うよね」


「あはは。なんか街で迷子になってた桜子を助けてくれたみたいなのよ。すごく優しくされたんですって」


「でも、それで付き合うとかにはならなくない?中二よ、中二」


「桜子のノロケ話によれば、そこが可愛いそうよ」


 そこで沙羅咲が加わった。


「まあ、ぶっちゃけ結城くんて美形だもんね。ここんとこ包帯も眼帯もしてないから、女子の見かたが変わってきてる気がする」


 楓花が笑う。


「一部でしょ?中二だし、背は高くないし、本気でモテるとは思えない」


「本人にすりゃ高遠さんにだけモテればいいんでしょうけどね」


 そこで黙っていた茉莉花が口を開いた。


「よくない。桜子は騙されてんのよ」


 沙羅咲が言葉を返す。


「そんな風には見えなかったよ」


「じゃあ、あなたも騙されてんのよ。結城は信用できない」


「どの辺が?」


「あいつ、普通じゃない。なんて言っていいかわかんないけど、ちょっとおかしい」


「そりゃ、中二だもん。誰が見てもおかしいわよ」


「そういうんじゃなくて……いや、そうなのかな」


「高遠さんが心配なのはわかるけどね。――でも意外だったな」


「なにが?」


「桐生さんて、もっとクールなイメージだったから」


「……」


「高遠さんへの心配のしかたが、なんだかお母さんみたい」


 茉莉花の声のトーンが低くなった。


「…だって、近しい人を心配すんのは当然でしょ?」


「あ、ごめん。悪い意味で言ったんじゃないのよ。むしろ優しい人だってわかって親近感を持ったもの。クールに見えてた時は、なんとなく声かけにくかったし。やっぱり話してみないとわからないわよね、人って」


 茉莉花は呆けた顔で訊いた。


「わたしって、そんなに話しかけにくかった?」


「ごめん。気を悪くしないでね。わたしたちが勝手に作ったイメージなんだけど、お嬢様って感じ?一挙一動が美しいから、なんか近寄りがたくって。なんとなく住む世界が違うって思ってた」


 雅が茶々を入れる。


「お嬢様はお嬢様よ。それもわがままお嬢様。油断しないでね」


 茉莉花が口を尖らせた。


「雅!わたしのどこがわがままなのよ!」


「お嬢様は自覚が無いのよね」


 沙羅咲は笑った。


「あはは。少なくともわたしたちと同じ女子高生って事はわかったわ。クラスメイトとしてこれからもよろしくね」


 茉莉花は口をポカンと開けた。こんなに友好的で模範的な言葉をかけられたのは小学生の時以来だった。どう返事をしたらいいものかわからない。もちろん友達を作るつもりもないのだから、積極的によろしくするつもりはない。

 困った挙げ句、しかし「よろしく」に対する返事はそれしか無いと思って形だけ小声で言った。


「…あ、よろしく」


 茉莉花は自分の苦手なノリにいつの間にか巻き込まれている事に気づいた。クラスメイトと打ち解けたりなんてしたくない。

 声をかけにくかったなどと面と向かって言われたら自分が恐怖の対象にでもなっていたのではないかと危惧したが、憧れの対象として距離を取られていたのならそのままでも良かったのだ。


 茉莉花には今の状況に誘導したのが誰だかわかっていた。隣の椅子の雅に顔を近づけて耳打ちをした。


「謀ったわね」


 雅が囁いた。


「なんのこと?」


「とぼけないでよ。友達なんていらないって言ったでしょ?」


「知ってるわよ。わたしは何もしてないわ」


「わたしを会話に巻き込んだじゃない」


「自分から入ってきたくせに」


「そ、そうだけど、あんた自分の話術でわたしの結界を外したでしょ」


「なに言ってるのかわからない。それにあたしに話術なんてないわよ。ただ会話を楽しんでただけで」


「うそ」


 雅の顔から笑みが消えた。


「うそじゃない。話術にたけてたら、こんなに怯えて生きてない」


「…………」


 雅の顔に笑みが戻った。


「話したくなければ話さなければよくない?」


「そういうわけにはいかないのよ。わたしが孤立すると雅と桜子を巻き込むでしょ?」


「人のせいにしないでくれる?茉莉花が孤立しても、あたしはあたしで勝手にやるから」


「そういえば、あんたいつの間にあの二人と仲良くなったのよ」


「そりゃこのキャンプの事でLINEを使って連絡を取り合ってたから」


「そうやってこそこそと…」


「なに言ってるのかな?茉莉花もグループ入ってるはずでしょ?全く参加しなかったようだけど」


「いや、そもそも何でそんなに積極的に参加しようとしてるのよ」


「誰かさんが高らかに参加表明したからじゃない」


「ああっ!うらら系なんてノリノリで演じてた自分を呪ってやる」


「やっと元凶が誰だったか思い出したようね」


 愕然とした表情で天を仰ぐ茉莉花だったが、こちらを見ている沙羅咲に気づいてぎこちない愛想笑いを浮かべた。


次回「その6 テントの中で」は11/8(金)に投稿する予定です。

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