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あれは 乾物屋だ
またしても、独り言が聞こえてきた。
なんだよ、やっぱり歳と淋しさには勝てねえのかい、とそのまま、声のする縁側のほうにまわったのだ。
縁側には、セイベイが座布団に座り、池のほうを
――いや、新しい祠のほうを、むいていた。
「 ――いい、お顔だったろう?」
『そうさな。まあまあだ』
「おまえねえ、ありゃ、運慶の弟子筋の」
『江ノ島の弁天さんみたいのが良かった』
「あきれてものがいえないよ。そんなんじゃまだまだ仏さんは遠いねえ」
『ほっとけ。 なんてな』
「かわらずに、くだらねえなあ」
セイベイの、嬉しげな笑いが響き、ヒコイチは
―― 動けなかった。
―――― あれは、・・・乾物屋だ。
なんだか、割れがねのようにひどい声で、聞いてるだけで肌があわ立つ。
だが、乾物屋だ。
あの、セイベイと対照的な色好みな話と、くだらない、洒落、と。
思わず握りなおした和菓子の紙が鳴り、ヒコイチは緊張した。
なのに、ヒコかい?おいで、とセイベイに呼ばれる。




