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ほんとに『戻った』
「か、乾物屋だよ!乾物屋!カンジュウロウじいさんだよ!!」
ああ、とのんびり笑うお坊ちゃんは、ヒコイチのひきつった顔に気付くこともなく、どう説明したものか迷った。
「 実は、それに関しては、正直ぼくもなんとも言えないんですよねえ。 セイイチさんには、あんなこと言ったけど、ぼくは、セイベイさんがボケたふりの中でしてるんだと思っていたから、それを強調したかっただけなんだけど・・・。 どうも、セイベイさんは、ボケとかのふりじゃなくていまだに本当に信じてるみたいだし。 そうなると、独り言も、『ふり』じゃあなくなるわけで・・」
「 『ふり』じゃあねえ 」
「はい?」
なぜか、ヒコイチの声は怒っている。
窓枠から布団を奪うように取ると、それを体に巻きつけて足音も荒く戻る。
「・・・乾物屋、ほんとに戻ってきやがった」
「・・はあ?」
拗ねたように、ヒコイチはそのまま布団に転がり、そっぽをむいた。
「 西堀のじじいの見舞いに、 桜餅持って 行ったらよ ――」




