ちがいの問題
「 で、お嫁さんのほうの実家は大乗り気だった。 豪農でお金はある。その一帯の有権者だけど、そういう人って、色んな人と親戚とか知り合いになるのに憧れてるみたいだからねえ。 老舗の『とめや』なんて、ちょうど良かったのかもね」
「そういうもんですかい」
「ただ、ここで問題が ――」
「嫁さんが、若くて気が利かねえってことですかい?」
ヒコイチのつまらなさそうな問に、お坊ちゃまは渋い顔をして薄い茶を飲んだ。
「―― こんどのお嫁さんの地域を指すわけじゃないけど・・・、田舎の、豪農とよばれる家では、たくさんの人を雇う。 男も女も、若い者が同じ屋根の下に寝泊りしている」
「ああ、おれも昔、旅の途中で泊めてもらったことあるなあ」
「じゃあ、わかるだろう?ヒコさんもその泊まったところで、夜、 女性に、頼まれなかったかい?」
「・・・・なんで、知ってんです? あれ?おれ、言いましたっけ?」
お坊ちゃまは声をあげて笑い、ヒコさんには意外じゃなかったんだね、と膝を打った。
「ヒコさんからは聞いてないよ。 あちこち旅する友人から聞いたのさ。 ―― まだ、ひらけてないところでは、いまだ、一夫一婦制が浸透してないって。 とくに、人手を要して子どもをみなで育てるような場所では、女の人が奔放だって」
夜、寝床に女が来たのには、ヒコイチも正直驚いた。
飯時も、少し眼が合ったぐらいで、とくになにもしゃべっていない女が、いきなりお情けいただきたいなどと、迫ってきたのだ。
―――もちろん、断りはしなかった。




