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西堀の隠居のはなし《小分け版》  作者: ぽすしち


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31/52

団子を



 母屋の裏木戸から入り、見舞いをしたいと台所にいた女に伝えれば、驚いたことに若旦那が慌てた様子でやってきて、これはヒコイチさんありがとうございます、などと頭を下げられてしまった。



「 実は、ここだけの話にしていただきたいのですが・・・」



 ―――まただよ。


 思ったが、顔にださぬようにつとめて、案内にしたがえば、母屋の奥に通されて、上座の座布団をすすめられる。


 尻が落ちつかねえと断って、先日のように隅に座って、息子の話をきくこととなった。




「 ――ご心配をおかけして、申し訳ございません。 実は・・・親父がこのたび倒れましたのは、病ではございませんで・・・」


「え?怪我ですかい?」


「いいえ、その・・・・・団子を・・」


「『団子』? ご隠居、詰まらせましたか?」



 そのとき、ふ、と。



 ほんの一瞬だけ、若旦那の口もとが、なぜか緩むのを、見る。




   「――ネズミ用の団子を、間違って、食いました」



「・・・・・・・・」


「いや、まさか、あの団子を親父が拾って食うなどと・・・まさかそこまでボケているなどとは・・・あの、あの親父が・・・」



 息子はいきなり、声を震わせてうつむく。



「 『乾物屋さん』の話も、先日お聞きして、信じられないような気持ちでしたのに、ここまでボケがすすんでいるとは、まったく気付きませんで・・・ ―― 息子として、失格です」

 


   ――― ヒコイチは、何もいえなかった。






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