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本当に戻ってるなら
どうにも言いたいことが溜まって、いろいろとむずかゆくなっていたヒコイチは、たまらずに口をひらいた。
―――が、先をこされた。
「カンジュウロウさんが、本当に戻ってきているのなら、セイベイさんはボケてなど、いないわけです」
「 ―――は?」
「・・・お坊ちゃま、なに言い出すかと思えば、また・・・」
―― ろくでもねえ。
眼を丸くした若旦那に、その、ろくでもない男と見比べられるヒコイチは、しかたなく、男の後ろ首をつかみ、帰りましょうと、ひきずった。
最後はおかしな様子になったが、上等な着物を頼んだ客として、坊ちゃまとヒコイチは、店の者総出で見送られ『とめや』をあとにした。
「ヒコさんも、そう思いませんでしたか?」
帰ってから同意を求められたが、面倒くさくて無視をきめこんだ。
―――その、二日あと、セイベイが倒れた。




