ここだけの話に
ああ、ひとりごと、ねえ。 と、お坊ちゃまは出されたお茶に手をのばす。
「―― なんでも、乾物屋さんが、戻ってきたってことですけど」
「乾物屋さん?・・・カンジュウロウさんが?・・・それを、親父が・・・セイベイが、そう、言ったのですか?」
「ええ。ですから、ヒコイチさんなどは、どこかの怪しいお坊様に、おかしなことを吹き込まれて、騙されているんじゃないかと。新しいお社のこともそのせいじゃないかって心配してるのですよ」
「・・・そうですか・・・」
「あれえ?もしかしてセイイチさん、この話、知りませんでしたか?」
息子は、どうみても驚いていて、知らなかったことがうかがえる。
だが、ふいに口を結んで顔をあげると、そこまでひどいとは・・、と小さく首を振った。
「ご心配いただいてるような、お坊様と縁はございませんが、実は、・・・」
どこかで聞いたように、ここだけの話にしていただきたいのですが ―― と語りはじめたそれに、ヒコイチは眉をよせる。
この息子は、言葉と逆のことを望んでいるようにしか思えない。




