表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西堀の隠居のはなし《小分け版》  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/52

大旦那様のせい


「――なんだって?」


「だから、若奥様が亡くなったのは、大旦那様のせいですよ。 ―― これはヒコさんだから言うんですからね」


 古い台所の土間を見下ろし、背後を気にしてお茶を飲むこの年増の女とは、この何年かで顔なじみだった。

 母屋から、お茶などを運んでくるサネという名の下女は、この家で隠居のセイベイと唯一かかわることができる人物だ。



 あっという間に二つを食べきり、残り一つを大事そうに包みなおしたサネは、「――だからって、大旦那様が悪いんじゃないよ」と、ずずっとお茶を飲みながら、上目でヒコイチをうかがった。



「なんでえそりゃ。・・・言いたいことがわからねえなあ・・」


「あんた、若奥さまに会ったこと、なかったかい?」


「ねえなあ。見かけたことはあるけどよ」



 ふうん、とさぐるように息をもらすと、じゃあわかんないねえ、と女は鼻にシワをよせ笑う。


 なにがだよ、と聞けば、口をわざと閉ざし、また、目だけをよこした。



「・・・若奥さまは、そら、かわいらしい人でさ、『農家』っていっても、人を使うほうの家で育った人だったからねえ。 手なんかも、きれいなもんだったよお」

 

 自分の手をかざすように見て、だからねえ、といったん口をつぐんだ。


「 ―― 大事に、されて育ったのさあ、 きっと。 うちのお店なんかより、よっぽど大所帯だったんじゃないかねえ・・・」


「嫁に来ても、何もできなかったって意味かい?」


「ふふ。ヒコさん、意外とにぶいんだねえ」


 じゃあね、とサネは仕事にもどっていき、馬鹿にされたように残されたヒコイチは、首をかしげながら、離れにむかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ