12/52
知っているから
その間に、お互いの呼び方も旦那さんから《じいさん》へ。
あんたから《ヒコ》へと変わり、立ち入ったことは聞かないが、よく知る相手となっていた。
お互い多くは語らないが、商売を託した息子とはあまり仲が良いとはいえず、その息子が見つけてきた若い嫁のことも、気に入ってはいないようなのも知ってはいた。
―― だからといって、じいさんは、どこぞの姑のように嫁をいびるなど、陰湿なことをする性格ではない。
どちらかといえば、客にだって平気で、似合わないものは買うなと言ってしまう商売人なのだ。
だから、ヒコイチは、目の前で草もちの最後を口に放り込んだ女のこたえに驚いた。




