3pt 心を奪い始めました
「福山さん。約束、覚えてるよな?」
「……うん」
頷く福山の目には、恐怖や安心感など色々な感情が交ざっていた。イジメから解放されたかもしれないと喜ぶ気持ちはあるだろうが、俺がどうやったのか分からなくて恐怖する気持ちもあるのだろう。そして、いつか戻っているのではないかという恐怖も。
「今日は帰り遅くなっても大丈夫?」
「あんまり遅いと困る。……でも、10時くらいまでなら大丈夫」
と言うことなので、10時まで俺の家に連れ込むことに。
因みに言っておくと、福山は非常に美少女である。いじめられていた理由が、顔が可愛いと言うことだったからな。いじめてた奴らも顔は平均以上だし、そこまで変わらないというのが俺の印象なのだが、何でも恋する先輩を取られたのだとかなんとか。恋の恨みって怖いよな。
「……ん。血が」
「ああ。私、初めてだから」
押し倒すと、どこからとは言わないが血が出てきた。どうやら福山は初めてだったらしい。正直かなり意外だ。
「イジメでそういうこともされてるのかと思ってた」
「そこまではされなかった。あの子達、自分の手で直接やるのが好きみたいで、他の人にいじめられてもいい顔しなかったから」
恨みは自身の力で晴らすのが好きなタイプのいじめっ子たちだったらしい。イジメにも色々あるんだなと感じた。
それと共に、福山の最初の相手になれたことを嬉しく思う。
「ん//そこ、弱い///」
「へぇ。じゃあ、もっとやってやるよ」
「ん!んん~~~~////」
そうして俺たちは少し激しい時を夜まで過ごした。
翌日。
「佐曽利君!」
そんな呼びかけと共に、俺の腕に絡みつく細い腕。そして、触れる柔らかい物。
俺はその少し気分よさげな声に苦笑しながら、
「あ、あの。福山さん?」
抱きついてきた福山に視線を向ける。
急に性格と色々変わりすぎてビックリだ。俺が困惑していると、
「佐曽利君!福山さんじゃなくて、朱美って読んで!」
なんて要求をしてくる。かなり俺も懐かれたものだ。
だが、
「……あのさ。福山さん。信用するの早すぎじゃないか?もしかしたら俺がだましてて、すぐにあいつらが帰ってくるかもしれないんだぞ」
俺は呆れながら言う。
福山の信用するまでの時間があまりにも短すぎると。もっと相手をよく見て、もう少し時を経てからそういうのは決める物だろう。
と、思ったのだが、
「それならそれで仕方ないよ。でも、佐曽利君は私に夢を見せてくれて、凄い嬉しかった。昨日のももっと痛いだけかと思ってたのに凄い気遣ってくれたし」
そこまでいって、頬を朱に染める福山。そして、
「だから、例え短い夢だったとしても佐曽利君には希望を貰えたから、私はそれでも良いよ」
そう言って、綺麗な笑みを浮かべた。俺たちの様子を見てる男子が凄く悔しそうな表情をしているな。福山可愛いし。
「……はぁ。分かった。なら、好きにしてくれ。朱美」
「うん!」
福山、いや、朱美は頷いて俺に抱きつく。こうして感謝されて好意を持って貰えると、俺もポイントを溜めた甲斐があったというものだな。
そう考えながら、俺はポケットに入れているポイントカードに触れる。何かあったときのために監禁チケットをもう何枚か交換しておこうと思ったのだ。
何かあったときのために。
「ねぇ。佐曽利君」
俺がチケットに交換していると、抱きついている朱美が呼びかけてくる。距離が近くて、少しドキドキしてしまうな。昨日あんなに近くに感じたのと言うのに。
「ん?どうした?」
「今日も、する?」
かわいらしく首を傾け、問いかけてくる朱美。
勿論俺は、
「する」
と、即答した。それから暫く、夕方から夜にかけて朱美と運動をすることになる。数日後にはお互い慣れてきて、恥ずかしげもなく学校でキスなんかもしたりするように。
周囲からはバカプルなんて言われているが、実を言うと特に付き合ったりはしてないんだよな。あくまでも朱美を助けたお礼という形だ。まあ、求めたこと以上のことをされてはいるが、それは朱美の自由だし。
そうして1月ほど過ごした日。
「そろそろ良いか」
俺は白い部屋に集まった数人を見ながら呟く。
その翌日、
「お、おい!あいつらが戻ってきたらしいぞ!!」
「ま、マジかよ。また地獄が始まるのか?」
「やべぇ。星川のやつ、○ぬぞ」
そんな会話が聞こえてくる。学校中で顔を青くする奴らが多くなっていた。
朱美も、
「そっか。佐曽利君。これでお別れなんだね。……今まで、ありがとう。楽しい夢が見れたよ」
そう言って寂しげに笑った。
俺はそれに何も応えず、その腕を強く握る。朱美は諦めたような表情で俺の手を弱い力で握り返し、立っている。
数分後、
「き、来た!」
「あいつら、本当に戻ってきたのか!」
「マジかよ!」
そんな言葉が生徒達の口から聞こえてくる。教室の入り口には、5人の女子生徒が立っていた。朱美を1月ほど前までいじめていた、いじめっ子達である。
いじめっ子達は、無言で俺たちの方へ歩いてくる。朱美は、顔を青くしているが、どこか諦めた表情をしていた。ただ、その手は震えているな。
そして、俺たちの前にたった5人。歩みを止めたかと思った直後、
「「「「本当に申し訳ありませんでした!!」」」」
揃って頭を下げた。
膝をつき、頭を下げる。見事なまでの土下座だ。
「「「「え?」」」」
周囲からは困惑の声が、朱美も突然のことに、ぽかんと口を開けて固まっている。ちょっと間抜けな感じの表情も可愛いな。頭を撫でておこう。
「え?あ、あの。……どういうこと?」
俺に頭を撫でられて正気に戻った朱美は、疑問の言葉を俺に投げかけてくる。それは是非ともあの土下座している5人にかけてやって欲しいのだがな。とは思いつつ、
「ほら。謝ってるぞ。何か言葉を返してやったらどうだ?」
と促しておく。
「え、あの、その……二度と、やらないでね」
困惑した末、出した言葉がそれだった。今までいじめてきた相手に言うにしては優しすぎるというか何というか……いや。でも、今までいじめられてきたことを思って強く出ることができないのかもしれない。
俺は朱美の言葉に頷いてからいじめっ子達に視線を向け、
「分かったか?」
「「「「は、はい!二度とやりません!!」」」」
俺の問いかけに、激しく5人は頷く。こうして朱美のイジメに関する問題は解決された。俺もポイントカードの力を感じられて良い機会だったな。
「……佐曽利君」
「ん?どうした?」
「ありがとう」
そう言った朱美の笑顔は、1000PT分くらいの価値はありそうなほど輝いていた。
「ポイントカード生活始めました ~ポイントを溜めたら人生が彩る~」《完》
この作品は一旦ここで終了です!
この作品の他にも同じような短さの作品を投稿しているので、作者のページから「長編化予備群」のシリーズを覗いて頂ければ!!
人気があった作品は長編化します。勿論この作品も……チラチラッ(ブックマークや☆をつけて頂ければ、続きが書かれるかも……