2pt 監禁始めました
「なぁ。大丈夫か?」
「……へ?」
今からなら、行動することが出来る、いじめられていた子に俺は近づき、声をかけた。いじめられていた子は話かけられるなんて予想外だったのか、変な声を出しているな。
周囲の野次馬連中も驚愕した表情をしている。
「……あなたも、裏切るの?」
「あははっ。辛辣だな福山さん」
冷たい目をしたイジメられっ子、福山朱美。
俺へ最初にかけてくる言葉が、裏切るかどうかという物だ。なかなかにトゲがある。が、それも仕方の無いことだろう。今まで福山に声をかけた奴らは裏切ってきたからな。
「俺は声をかけただけだよ。……無償で人を助けるほど出来た人間じゃないからな?」
「そう……お金が欲しいってこと?」
どうやらそう解釈されたみたいだ。無償ではやらないと言われれば、金があれば動いてくれるのかと勘違いするよな。
……いや、こいつの人間不信ぶりを考えると、遠回しに金を払わないといじめるぞと脅されているように感じたのかもしれない。
「べつに金は必要ない。……けど、福山さんが本当に助かりたいんだったら手を貸すけど?」
「……何が目的?」
相変わらず冷たい視線のまま、福山は俺に問いかけてくる。俺はその問いかけに応えるため、他のやつたに聞かれないように顔を近づけ、
「体」
「っ!?」
俺の言葉に福山は表情をゆがめ、強く睨み付けてくる。
だが、俺はそんな表情は気にせず、
「本当に助かりたいのかどうかって話だ。一生俺の相手をするのか、それともここの一時を耐えるのか。好きに選べば良いだろ?」
「…………」
俺の言葉に福山は黙る。それから、暫く沈黙が訪れた。色々と考えているんだろうな。
そうして福山は考えた末、
「信用できない。後払いなら、良いよ」
そんなことを言ってきた。特に悪い条件ではないな。俺がその約束通りに動いたらいいわけだし。
そにに俺としては福山に相手をして貰えるかどうかは、監禁チケットの効果を検証する上でのあくまでもおまけみたいな物だし。
「分かった。じゃあ明日。楽しみにしてろ」
俺はそう言って立ち上がる。去って行く俺の背中には、冷たい視線が注がれ続けていた。一切信用などしていない、一切期待のない冷たい視線が。
「お、おい!佐曽利!何やってるんだよ!お前もいじめられるぞ!!」
福山から離れると、友人からそんな言葉がかけられる。こいつは俺の心配と共に、俺と仲の良い自分も巻き込まれるんじゃないかという不安もあるんだろうな。
その内心は分かりつつも、
「……まあ、どうにかなるだろ」
「お、お前……」
適当な感じで答えておく。呆れと恨みの混じったような視線が向けられるが、それは無視しておいた。
それよりも、早くこの事案を片付ける方が先決だな。俺は学校が終わってから素速く行動し、学校を出る。それから校舎の方を眺めて、
「……見つけた」
俺の目に映るのは、とある教室に集まる女子達。いじめっ子達は5人でとある部活に入っており、部活とは言いながらもその部室を使って遊んでいるのだ。
だが、お陰で丁度良いことに5人以外教室にはいない。ならば、
「使うか」
俺はポケットに入れていた監禁チケットを使用する、すると次の瞬間、
『対象を選択して下さい』
そんな文字が俺の前に現われた。5枚全てを使用したことで複数選択が可能医になっていたので、俺は5人全員を指定する。そして、その5人の指定を決定すると、
「……おっ。消えた」
教室から一瞬にして5人が消えた。それと共に、俺の手には先程までなかった感触が、握っていた監禁チケットはなくなったのだが、その代わりに、
「鍵、か?」
そこそこ大きいサイズの鍵が現われた。金色で見た目も豪華である。
何の鍵か気になるところではあるが、あまりこの校舎の前で立ちすぎていても不自然だ。と言うことで一旦俺は帰宅。それからカバンを片付け、制服から着替え、鍵をもう1度観察する。
「特に何も書かれてはいない、か」
ただ鍵穴に差し込めるだけ。この鍵自体に何かがあるわけではない。
と、思っていたのだが、どうやらそれだけではないことが分かる。鍵の持ち手の先端辺りを回転させることが出来た。それを回転させると、
「んおっ!?」
一瞬で景色が変わる。
俺の目の前にあるのは白い空間。そして、幾つかの扉。
「何だ、ここ……」
俺は訳が分からず辺りを見回す。だが、だからといって激しく混乱しているわけではない。これがさっきいじっていた鍵の効果でやってきたところだって言うのは分かるからな。
まずは状況把握だ。
ということで、俺は色々見て回る。そして色々理解した結果。
「……お願いお願いお願い!!許して許して許して!!!!」
壊れたように騒ぐ女子生徒。俺が監禁チケットを使う対象にした結果監禁されたいじめっ子だ。騒ぐ彼女だが、流石にまだ解放しようという気にはなれない。
と言うことで他の監禁している奴らにも色々した後、俺は放置して現実へと変える。鍵を使用すれば現実にもすぐに帰れたぞ。
そして翌日。
「お、おい。聞いたか」
「ああ。聞いた。あいつら行方不明なんだってな!」
「何があったんだよ……」
いじめっ子達が行方不明になったと学校中で話題になっていた。あいつら、学校でもかなり幅をきかせていたからな。
そういうことで、誰もがその事実を知っており、
「福山さん。約束、覚えてるよな?」