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階層世界  作者: 如月
1章 第一階層
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001 路地裏街

 初投稿です。とりあえず書いて投稿したって感じなので、何も分からないような状態です。

 ここが直してほしいとか、ここが違っているだとかがあれば、言ってもらえれば修正します。あと、ここの意味が分からないとか言ってくれれば、どっかで解説みたいなのを入れようと思うので、言ってください。

 基本前書きは書かないつもりですが、なんかあれば書くかもしれません。

「おい、有り金全部だせや。」

「やめてっ‼もう渡せる分はないのっ‼これを取られたら私……。」

「んなもん、知るかよ。さっさと出せや。」


 ある路地裏のことである。大柄なガラの悪い男がお世辞にも顔がいいとは言えない女の首を片手で持ち、恐喝していた。その女は恐怖に心を蝕まれても気丈に言い返した。

 だが男はその様子を意に介さず拳を振り上げ言う。今すぐにでも殴りかかりそうな雰囲気である。そんな男に女はより一層の恐怖を感じたが、そのお金を取られるともう後がないのか、どうにかしてお金を取られるのを防ごうと足掻く。


「お願いsっ。」

「ちっ、おらっ。黙って出せや。」

「……ごふっ!ひぃぃいいい。ご、ご、ごめんなさい。ゆ、許してください。」

「うるせぇな。殴られる前に出せば済んだ話だろ。バカが。それにしても少なすぎだろ。まぁ、いいや、んじゃあな。」


 しかし、女の抵抗虚しく男は躊躇いもなく女を殴る。それに女は顔を恐怖に歪ませながら謝り、金を男に差し出した。女が暴力に屈した瞬間であった。

 男は女の首から手を離して思ったよりも少ない金額であったのか、悪態をついて金をひったくり女に視線を向けることもなく去っていった。


「もう、ひぐっ。これから、どうしたら、ぐすっ。カイト様に貢げない。う、ううう。お金がないと、会ってくれないよぉ。」


 路地裏には醜い女の醜い泣き声が物悲しく響いた。だが、だれも助けることなどしない。なぜなら、この路地裏では当たり前のことであり、またこの世界でも常識的なことなのだ。

この世界はどのような手段であれ、金を手に入れることこそ正義であるのだから。




 路地裏の隅で先の光景を見ていた二人の男がいた。片方は年が若く身長は167cmで平均的な身長よりは少し低いくらいだろうか。その男は一見にして優し気な雰囲気をしていた。

 しかし、その目は鋭く、暗い黄色が不気味さを演出していた。ドロッとした視線は人生に絶望しているのか、世界を憎悪しているのか、どちらにせよいい色ではないだろう。


「はぁ~、相変わらずくそなところだな。ハンスもそうは思わないか?」

「そういうな、グリードよ。住めば都ともいう。慣れればどんなところであれ変わらんよ。」


 ハンスとと呼ばれた男は色の抜け落ちた白髪をオールバックでまとめた老人である。そのハンスは一見すれば好々爺とした人物に見えるだろうが、よく見れば服の上からでも分かるほどに肉体が鍛えられており、普通の老人でないことはすぐに分かるだろう。

 そのハンスは瞳の奥にこの世界で生きにいてきたもの特有の鋭さを持ち、その漆黒を思わせるような濃い黒と合わさり歴戦の猛者を思わせた。


「強者が弱者を支配し搾取する。弱者はさらに自分より弱いものを支配して搾取する。そんな世界がくそじゃないとでもいうのか?」

「ほっほっほっ。確かにそのような一面もあるわな。でもそれだけじゃないことも分かっておろう。まぁここは、路地裏街はずっとこのままであろうがな。」

「けっ。反吐が出る。」


 グリードは半ば睨みつけるようにして、憎しげな声でハンスに問いかける。そのグリードの若い反応に目を細めてハンスは笑う。ハンスは昔の自分を見ているようで、懐かしんでいるのかもしれない。

 悪態を吐くグリードにハンスはくつくつと笑っている。どこか楽し気であるのは何故だろうか。その態度に眉を潜めながらもグリードはハンスの言葉を待った。


「そんなにここが嫌なら上に行けばよい。上は世界が違うからの。強者を喰っていかねば、自分より下の弱者に喰われる定め。そんな世界だからの。」

「そんなに変わるものか?人間どこに行っても変わらないだろ?」

「そうでもない。集合団地の二つでもかなり違うだろう?それと同じようにところ変われば人変わる、だ。」


 主に第一層は五つに分かれている。一に裕福なものが済む第一集合団地。二に路地裏街と呼ばれる貧民の民家が並ぶ第二集合団地である。この二つが基本的にこの階層の住民が済む場所だ。

他は商業を生業とするものが集まる表通り。工場が立ち並ぶ工業地帯。そして、農業をする農耕地帯である。ここら辺は仕事をする場所としての地帯であり、比較的に安全な場所である。

 安全でない場所など路地裏街と街壁の外くらいである。路地裏街は住むのに金がかからないという大きなメリットもあり、多くの人間に利用されている。その分、保証のほの字も存在はしないが。


「認めよう。確かにそこにある差異はでかい。それこそ別世界のように。だけど上に行ったからって、この世界の何かが変わるわけでもない。金に支配されている限りこの世界は、人間は変わらねぇよ。」


 グリードの言葉に対してハンスは反論しない。言い返す言葉がないのか、それとも言い返す意味がないと考えたのか。それは定かではないが二人は少しの間見つめ合ったままであった。




「そうかもしれんな。しかし、こんな話を聞いたことがあるのだ。」

「何だ?」

「第十三層。そこにある神具を用いれば世界の法則を書き換えることができると。自分の思うがままに、自分の欲する世界を創れると。」


 ハンスは大真面目にそんなことを宣った。その発言にグリードはぽかんと時が止まったように口を開いたまま停止した。数瞬経った後、馬鹿馬鹿しいというように頭を振ってグリードは言った。


「馬鹿らしい。そんなわけあるか。」

「しかしなぜこの大地は浮いている?空にあるあの大きな大地は何だ?なぜ所持金が一定以上になると上の階層に行ける?誰が決めたのだ?そう考えると今の第十三層にいるものがこの世界を形作ったと考えると、面白くはないかね?それに夢もある。それでよいのではないかの?」

「……夢があるって。はっ。なんだよそれ。まぁでも、確かにその方が面白い。第十三層にたどり着ければ世界が思うままにできる。それほどに素晴らしいこともないな。どうせなら、世界を手に入れるぐらいはしないとな。面白くもない。こんなくそな世界なんだから。」

「その調子だ。どうせなら、楽しんで生きたもん勝ちだからの。特にこんなくそなところだとの。」


 ハンスは子供のようにニッと笑い言った。そのハンスの様子に毒気を抜かれたようにグリードも笑い夢を語る。滑稽無形な夢だ。普通に考えてあり得ない夢。それでも男二人は馬鹿みたいに笑った。


「ははっ、なんだよ、最終的にくそって言うのかよ。」

「まぁ、くそなことに違いはないからの。」

「違いない。」


 その言葉に二人は一層大声で笑いあった。女の泣き声がその合間合間に聞こえてきて、なんとも混沌とした空間になっていた。それに誰も突っ込まないのはそれが当たり前のことで、ただの日常でしかないからだ。




「グリードよ。お使いを頼めんかね?」

「あっ?お使いってなんだよ?」

「わし、最近腰が痛くてのぉ。ちょっくら、買い物をしてきてほしいのじゃ。」


 それからしばらくグリードとハンスは世間話を講じていたが、流れを断つようにハンスが突然に言った。腰を摩りながら言ったハンスの冗談のような言葉に、グリードは首を振りながら肩をすくめた。


「まだまだ元気なくせに何の冗談だよ。まぁ、いいけどな。で、なんだ?欲しいものって。」

「ほっほっほっ。この紙に書いたものを買ってきてほしくての。代金は後払いでの。」

「えっと、ロックバードの卵に、銀杏鳥のもも肉。麺つゆ。玉ねぎ。こんだけ?」


 ロックバードとは魔物の一種であり、ダチョウの亜種といわれている。ダチョウと全く姿形は変わらないがその脚力と跳力は比べ物にならないほどに強く、時速100㎞は優に超えると言われている。そんなロックバードの肉は硬く、食えたものではないが卵は絶品であり、よく料理に使われている一般的な食材の一つだ。

 銀杏鳥も魔物の一種である。よく銀杏の実をつついていることから名づけられた。銀杏の実のおかげかは不明だが、その肉質は非常に柔らかく風味も抜群にいい。それに魔物にしては弱く簡単に狩れることから、よく料理に使われる。こちらも一般的な食材だ。


「うむ。それだけだの。」

「……まぁ、分かった。買いに行ってくるよ。代金は後で、ちゃんと払ってくれよ。期限はいつまでだ?」


 自分で買えば済むものをわざわざ頼むことに釈然としないながらも、グリードは頷いてハンスの頼みを引き受けることにしたようだ。


「明日の昼までに頼むの。」

「昼か。今が12時過ぎだから、明日のこの時間か。まぁ、問題ないだろう。」

「じゃあ、よろしく頼んだ。場所はここでよいかの?」

「ああ、じゃあな。」

「うむ。またの。」


 そうして二人は会話を終わらせ、グリードはその場を去った。その後ろ姿をハンスは何も言わずに見送った。




「さて。」


 グリードの姿が完全に消えるまで見送ったハンスは腰が痛いという言葉とは裏腹に俊敏な動きで立ち上がる。その立ち姿は完全に年の食った爺さんのものでなく、一人の大人のものだった。

 先ほどまで浮かべていた優し気な表情は息を潜めて、強欲で、傲慢で、意地汚い一人の大人の顔が笑みを作っていた。それは人間らしいとても凶悪で、醜く、そして魅力的な笑みであった。心なしか若返っているようにも思えた。


「嘘泣きはよせ。行くぞ。」

「はぁい。」


 先ほどまですすり泣いていた女は泣くのをやめると自分の顔を剥いだ。もちろん血が出るなどのこともなく、偽物の仮面が剝がれただけである。その醜い仮面の下は絶世の美女と称えられるほどに整った顔があった。

 その絶世の美女はグリードと同じような少し暗い黄色の瞳を持ち、微笑を湛えたその表情はその完璧な姿と何より醜かった仮面との対比によって一層美しく思えた。


「権能、救恤。」


 その女の囁くような一言の後に残ったのは何もない路地裏だけであった。


「ってか、カイト様って誰だよ。そんな奴いねぇだろ。」


 いや、ハンスの一言が空しく路地裏に響いた。それを最後に路地裏からは一切の気配が立消えた。


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