瞑想をすると
「凄い。正解だよ、健二」
奈央が褒めてくれる。
「な?だから言ったろ。瞑想すると凄いことになるって」
「うん、ホントだったね」
「あたしも瞑想してみる」
そう言って、瞑想を始めた奈央だったが、一向に子供達の人数が把握出来ないでいた。
「人の気配がするのは、分かるよ。けどそれって、瞑想してなくても同じじゃん」
「そうだな。奈央は十分に隠しパラメーターが上がっていないのかもしれない」
「まだまだ修行の身ってことか」
ガックリと肩を落とした奈央だったが、すぐに違う案を出してきた。
「瞑想でここまで出来るようになったのは、健二の才能じゃない?」
と、とんでもないことを言い出した。
「なんだ、つまり俺には瞑想の才能があるって言いたいのか?」
「そうだよ。それしか考えられない。あたしだって健二のいないLG内で、瞑想をしてたもん」
「だから、俺の方が瞑想してるの!それで隠しパラメーターが上がって、今に至るってわけ」
奈央はイマイチ納得していない。ぶつぶつと文句を言いながら、歩き出す。俺もそれに着いていく。
隣から小声で
「絶対才能だよ」
とか、
「でなけりゃ、子供達の数なんて把握出来るはずないもん」
やら、聞こえてくる。自分が瞑想で成果を出せなかったのが、よっぽど悔しいらしい。
家に帰ってすぐに
「LGで瞑想をする」
と言い出した奈央。
「ああ、空腹度の回復のためにもログインしたら、料理を食べろよ?」
と言うと、素直に
「うん、分かった」
と返事が来た。
俺もLGやるか、と意気込んでいると、一本の電話が鳴った。俺宛にLGの本社からの電話だ。すぐさま電話に出る。
「はい、もしもし」
「もしもし、すみません。伊原さんの電話でお間違いないでしょうか?」
「はい、そうですが、何か御用でしょうか?」
「先日の瞑想の件でお話したくて。今お時間大丈夫ですか?」
「はい、ちょうどLGをしようとしていたので、時間ならありますよ」
「実はですね。こちらでも瞑想をした実験を行ったのですが、LG内では出来た瞑想も現実世界では出来ない、といった調査報告があがっております。大変恐縮ではありますが、本当にリアルでも瞑想が使えるのか、本社でデータを取らせて頂けないでしょうか?勿論、本社までの交通費は全額負担させて頂きます」
「ええ、良いですよ。これから伺ってもよろしいですか?」
「はい、お待ちしております」
「では、二時間後くらいに着くと思います」
「分かりました。失礼します」
「失礼します」
しまった。担当者の名前を聞いておくんだったな、と思ったが、被験者が自分しかいないのだから問題ないだろう。と思い直す。
奈央が心配するといけないので、書き置きをしてから家を出ることにした。
「LGの本社へ行ってきます。ご飯は適当に作って食べてください。俺の分もあると助かる」
っと。鍵は閉めたな。よしよし。
電車に揺られて、一時間半。そこから徒歩で三十分。二時間でLG本社へ着いた。
「こんにちは、瞑想について知りたい、と言われて来た者ですが」
「こんにちは、お待ちしておりました。五階の会議室へどうぞ」
「はい」
俺は案内されるまま、受付嬢から呼ばれた男性社員に着いていった。
ガチャリ。五階の会議室が開く。
「初めまして。ようこそお越し下さいました」
「初めまして。恐縮です」
「早速本題に入らせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょう」
「アイマスクをした状態で、瞑想を行って頂き、この会議室に何人いるか当てて欲しいのです」
「分かりました。やってみましょう」