ケン、ダガー使いになる
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ケンとアックスの二人で鍛え始めて一時間が経過した。
「そろそろ二人でパーティーを組んで、森にでも行かないか?」
とアックスから誘いがかかる。
「良いね。賛成。だけどその前に商店に寄っても良いか?」
「おうよ」
目的の商品を探し、商店を巡る二人。立派なお店には興味がなく、ブルーシートを敷いて営業している人を中心に探す。噴水から離れれば離れるほど、ブルーシートのお店が増えていくようだ。
「あった。あった。ダガー、一本おいくらですか?」
「はい、一本50ゴールドになります」
「じゃあ、十本下さい」
「500ゴールドになります」
「はい、どうぞ」
「ちょうど、まいどあり」
「そんなにダガー買い込んでどうするんだ?」
アックスの疑問は当然である。
「なあに、ちょっとジャグリングするだけさ。それと指でバランスを取ってDEX(器用値)も上げたいだけさ」
「ところで森に行ったことがないんだが、どんなモンスターが出るんだ」
初心者の鎧を装備しながら、ケンが聞く。
「実は儂も行ったことがないんだ。パーティーを組めばなんとかなるかと思って誘ったんだ。モンスターはホーンラビットと、ワイルドボーア、ボスにグレズリーがいるらしいぞ」
「じゃあ、今日は様子見ってことでホーンラビットと、ワイルドボーア狙いで良いのかな?」
「うむ、それが良いだろう」
途中の草原でスライム相手に火吹きを見せた時は、アックスに大層驚かれた。ダガーのジャグリングといい、一体何者なんだと聞かれた。答えは秘密でも良かったんだが、せっかくパーティーも組んでいるのだから教えることにした。
「曲芸師をやっているんだよ」
「曲芸師って難易度ベリーハードの職業か?」
「おそらくそれで間違いない」
「まともに歩けすら出来ないって聞いたぞ?」
「まあ、最初の頃はそうだったね」
「それに加えてアクロバットか。なかなかピーキーな構成じゃないか」
「ああ、使える場面は限られてくるよ」
そんな話をしているうちに、辺りはうっそうとした森林になってきた。木々の間からキラキラと太陽の日差しが入ってくる。
ホーンラビットが現れたのは、そうして木漏れ日に見とれている時だった。
「敵視」
アックスがターゲットを取ってくれる。おかげで楽にダガーをホーンラビットに投げられる。前足二本を串刺しにしたので移動しにくそうである。しかも、移動するたびに追加ダメージが入っている。なんと追加ダメージの方が多い。初心者の鎧に攻撃力-15が付いているので、そのせいだろう。タガーをジャグリングしながら、今度は後ろ足を狙う。移動力のないホーンラビットだったので、簡単に当てられた。
「よし、後は任せろ」
アックスはそう言って、剣を装備しながらホーンラビットへ向かって行く。近づくと剣でホーンラビットを一刀両断にした。
「ナイスだ。アックス」
「儂もまだまだ捨てたもんじゃないだろう」
「ああ」
ドロップ品は100ゴールドとホーンラビットの角一本と肉一切れだった。ダガーは回収している。
木陰に身を隠すとひんやりとして、気持ちが良い。
「少し休んでから狩りをしよう」
とケンが提案する。
「それもそうだな」
アックスも同意する。
こうして森林の中にいると、木陰でうたた寝してしまいそうだ。よく聞くとチチチと、小鳥の鳴く声が聞こえる。すぐそばに小鳥が来たので、ダガーで倒す。ピンキーバードを倒した、と表示される。250ゴールドと鶏肉一切れをドロップした。
「おいおい、今の小鳥もこの森のモンスターなのかよ?情報を更新しないとな」
「名前はピンキーバードだってよ」
名前の通り、ピンク色の小鳥だった。
休んでいる間、俺はダガーをジャグリングしていた。
「そろそろ出発しないか?」
アックスに促され俺も重い腰を上げた。一時間ほど休んだだろうか?今度はワイルドボーアに会う。ワイルドボーアは一直線に向かってきた。前足と後ろ足が短いので、狙うのは難しい。鼻目掛けてダガーを投げた。見事にヒットする。それでも止まらないっ。
「敵視」
アックスがターゲットを取ってくれた。ワイルドボーアがアックス目指して駆け出す。そのおかげで、後ろ足にダガーを命中させることが出来た。
若干突進が遅くなるワイルドボーア。ワイルドボーアの突進に、剣を真っ直ぐ突き立てるアックス。
「ピギャアアア」
とワイルドボーアが鳴いている。そのままアックスに突撃しそうだったので俺もスキルを使う。
「敵視」
すると、ワイルドボーアはターゲットを俺に切り替えた。これでよしと。
ダガーを両手に持って相手を迎え撃つ。突進してきたところを、前宙しながら切り裂く。ポーンと頭の中で音がなった。その後大ジャンプをして、ワイルドボーアの背中にダガーを指し続ける。大ジャンプは今のところ、6メートル程度だ。馬乗りになったままワイルドボーアの背中をつくのは、大変だった。何せ振り落とされるといけない。平衡感覚が鍛えられまくりだった。ポーンとまた頭の中で音がなる。
ワイルドボーアを倒せたのは何十回かダガーを刺してからだった。ドロップ品はワイルドボーアの肉と200ゴールドだった。
「えらく時間がかかったな?」
「すまん。それには理由があるんだ。今の俺は攻撃力-15なんだ」
「なんだってそんなことになっているんだ?深くは詮索しないがな」
「そうしてもらえるとありがたい」
その後はポーンラビットを九体、ワイルドボーアを四体倒して、ドロップ品はポーンラビットの角と肉四本と九切れと400ゴールド、ワイルドボーアの牙と肉二本と四切れと800ゴールドを入手した。
ここで俺達は一度街へ戻ることに決めた。
ステータス画面を見ると曲芸師がレベル12、アクロバットがレベル10になっていた。
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