PvP 夜の部 準決勝2
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宝石商の通りは美女の他に、敵はいなかった。おかげで儂は体力を温存できた。と言っても、後十戦しても体力が底をつくことはないのだが。
次に料理店の方へ行くと、敵がわんさかいた。
「へへへ、おっさん。特別に、この刀の錆びにしてやるよ」
「あいにく、雑魚には用がないのでな」
「なにぃ!」
見たところ二十歳前後の男が飛びかかってくる。遅い、なにもかも。
氷の斧を一振すると、男の剣が真っ二つに折れた。流石レア武器だ。
「ちくしょー、でもおあいにく様。予備の剣は持っているんだぜ」
「随分と用意が良いな」
「さっきの刀は耐久値が減っていたからな」
それなら、なぜ直さなかったのか?と聞こうとしてやめた。このPvPで耐久値が減ったのかもしれないし、武器を使い潰すのが、この男の流儀かもしれないと思ったからだ。
「さあて、次だ。二刀流の強さを見せつけてやるよ」
ほう。この男意外とやるのかもしれない。
「てりゃー、うわあああ」
氷の斧で対抗しただけで、男は腰を抜かしていた。アックスの力強さに、ビビったのだ。
「雑兵は散るが良い」
アックスは男に止めを刺した。
他にも、敵がいたが、ピンと来る敵はいなかった。
目に見える敵を全員なぎ倒したところで、ふと中年男性に気づく。
「儂はアックスだ。名を名乗れ」
「私はジュンジと言います。以後お見知りおきを」
儂は真っ先に料理店の通りへ入ったため、他三人がどの通りを選んだのか分からない。
「ダガー使いの男か、槍使いの女、または弓使いの女と一戦交えていないか?」
「それなら、槍使いの女性と戦いましたよ。名前はスピアと名乗っていましたよ」
「ほう。スピアに勝ったのか。やるじゃないか」
「お褒めにあずかり、光栄です。しかしアックスさんの方が、スピアさんより強そうですね私の審美眼が当たっていればですが」
「正解だ。儂はスピアよりきっと強いぞ」
「強い人と戦うのは楽しみです」
「強敵とあいまみえるのは、嬉しいぞ」
そう言って距離をじりじりと縮めていく両者。先に仕掛けたのは、ジュンジだった。
槍で細かく突いていく。たまに急所を狙うのを忘れない。だが、全ての攻撃は、氷の斧によって防がれた。
今度はアックスのターンである。ブオン、ブオンと風切り音を出しながら、前に進んでいく。しかし攻撃は当たらず、空を切るばかりだった。
「なかなかやるな」
「そちらこそ」
アックスはまだ本気を出していないが、六、七割の力は出していた。一回くらい槍で受け止められるかと思ったが、全てかわされてしまった。嫌な汗が背中を伝う。もしかしたらジュンジは儂より強いんじゃないかと。
「さて、もう一段階ギアを上げますよ」
「よし、かかってこい」
そう言うとジュンジは先ほどよりも速く、槍を突いてきた。これにはアックスも受け止めきれないと見て、氷の斧で槍の攻撃をいなす。更に、攻撃に転じる。
「おお、やりますね」
「お主こそ・・・」
今の攻撃は完全にとらえたと思っていたのに、空を切っていた。
マズイな。アックスは心の中でそう思った。さっきの反撃は本気だった。だからこそ、何かしらダメージを負わせることが出来ると思った。なのに、結果はノーダメージ。勝敗は決したようなものだった。
だがアックスもダメージはもらっていない。それが一筋の光明を差していた。
「うおおおお」
アックスは本気で斧を振り回す。これには流石にジュンジといえど、槍で攻撃を受け止めざる得なかった。
それも二分ほど続いて終わり、ジュンジのターンとなった。ジュンジは正確に速く、首もとを攻撃してきた。氷の斧で防ぎきることは出来ず、せめてもの気持ちで、氷の斧で一太刀入れるのが、精一杯だった。
「負けたよ」
「次はどうなるか分かりません」
そう言われて、少し元気が出るアックス。
「ではリスポーン地点へと行ってくる」