グレーダイヤモンド購入
展示されている灰色の宝石は、どれも光沢を放っていて綺麗だった。
思わず、
「うわぁ、綺麗だな」
と声に出してしまったほどである。
「そうでしょう。うちは特に光沢に気を遣っていますから」
ヤンガスが自信を持って答える。
「ただし、他の宝石商よりはお値段が張ります。でもそこは、品質で負けないためです。この店がこの街で一番、灰色の宝石に自信を持っていると、お約束します」
「分かった。俺はこのお店で宝石を選ぼう」
そう言うと、ヤンガスは嬉しそうにした。
「こちらのボックスをご覧下さい。更に一階級上の灰色の宝石があります」
そちらを見ると、灰色の宝石に星のマークが入った状態だった。
「他にも、赤色の入った灰色の宝石や青色の入った灰色の宝石があります」
「どうして灰色の宝石を集めようと思ったんだ?灰色の宝石は安いんだろう?」
「それは、少しでも需要と供給が生まれれば良いな、と思ったからです」
「灰色の宝石は売れないとされてきました。使い道もないですし、色合いも地味なので、お金持ちの人達にも敬遠されてきたのです」
「ふむふむそれで?」
「うちは代々灰色の宝石を扱っています。コレクション目的の人達にも、誇りを持ってお届け出来るようにしたのです」
「なるほどな」
「誇りを持って商売しているのが分かった。俺はコレクション目的じゃなくて、実用品として灰色の宝石を購入するつもりだぞ」
「ええ!?実用品としてですか?そんなことは聞いたことがありません」
「俺の髪色と目の色を見てみな」
「銀髪に灰色の目です・・・まさか、それが灰色の宝石を扱う為の条件なのですか?」
「ああ、おそらくはそうだと思っている。だからなるべく品質の高い宝石が欲しい」
「分かりました。お任せ下さい」
「こちらはいかがでしょうか?」
オススメされたのは、星のマークがある灰色の宝石だ。
「星のマークがあると、何か良いことあるのか?」
「はい、魔力の質が向上します」
「これ、何点ありますか?」
「五つあります」
俺は少し悩んだ後、
「おいくらですか?」
と聞いていた。
「こちらは一点、10000ゴールドとなっています」
「他の宝石の相場を教えてくれるか?」
「はい、このレベルになりますと、10万ゴールドになります」
「灰色の宝石は滅茶苦茶お買い得なんだな」
「はい、なんと言っても売れないので」
「それじゃあ三つ貰えるか?」
「はい、3万ゴールドになります」
「はい、どうぞ」
「確かに3万ゴールド、受け取りました」
ちょうど灰色の宝石を買い終わったところで、スピアからチャットが入った。
「ちょっとケン。どこにいるの?」
「古い宝石商のお店の中だ」
少ししてスピアが入ってくる。
「もう!広場にいなきゃ分からないじゃない!」
「ごめん。あまりに魅力的なお店だったから、入らずにはいられなかったんだ」
そう言うとヤンガスが照れたような表情を見せる。褒められて嬉しかったんだろうな。
「じゃあお詫びに、あたしにも宝石買ってよね」
「あはは。お財布と相談しながらなら、いいよ」
そう言うと、店内を見渡すスピア。もう既にどれを購入しようか、悩んでいるようだ。
「決めた。この宝石にする」
スピアが持ってきたのは、2万ゴールドの赤色の宝石だった。
「赤色の宝石は、炎属性の強化につながるんだよね?店員さん」
「はい。おっしゃる通りです」
「じゃあこの宝石、折半して買おうよ」
「分かった。仕方ないな」
全額払わされるんじゃないかと、ヒヤヒヤしていたが、杞憂に終わった。
「ありがとう。大事にするね」
すっかりいつものスピアに戻っていた。
評価よろしくお願いします。
ブックマークも忘れず、お願いします。