第五の街 ベルセイユ
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第五の街ベルセイユの大まかな通りを説明しよう。道が四本あって、それぞれホテル街、アイテム作成所、宝石商、料理店と分かれている。
一際賑わっているのは、宝石商のところだ。ひっきりなしに、人が出入りしている。
「宝石を買いたいな」
「ええ、次にログインしたら、思う存分見て回りましょう」
「儂は宝石の産出場所が気になるぞ」
「私もそっちに興味があります」
四人がそれぞれの目的を見つけたところで、今日はお開きとなった。
ホテルに入り会計を済ませる。ベルセイユでは一番安いホテルでも200ゴールドした。流石、お金持ちの街だ。
ホテルにチェックインして、シャワーを浴びる。今日の山登りの疲れが癒えていくようだ。その後、ベッドに横になり、ログアウトする。
「奈央は、まだログアウトしていないのか」
たまには、俺が料理を作って、驚かせたいものだ。台所に立つと、五目ご飯を作り始めた。みそ汁も作り、ブリの照り焼きも作る。
「んん?なんだかいい匂いがする」
奈央のお目覚めだ。
「ええ!?これ全部、健二が作ってくれたの?」
「ああ、俺の方がログアウトするのが早かったからな」
「美味しそう、一緒に食べようよ」
「そうだな。いただきます」
「いただきます」
「美味しいね」
「ありがとう。我ながら美味い」
作った料理を称賛されるのは、嬉しい。自分の子供が褒められたような気分だ。俺らには、まだ子供がいないから分からんけど。
食器洗いは奈央がしてくれた。有難い。少し二人でバラエティー番組を見た。ネタを若手芸人達がやっている。それが面白くて、奈央と一緒に笑いあった。
「あー、おかしい」
「そうだな。面白いな」
と言った具合でテレビを見ていた。
お風呂に入って、髪を乾かす。
「じゃあ俺先にLGやってるから」
奈央にそう告げて、VRの機械をつけようとする。
「分かった。お先にどうぞ」
「おう」
奈央の許可も取ったし、LGにログインだ!
ホテルで目を覚ます。シャワーを浴びて、外に出る。
「さあて、スピアがログインするまで、何しよっかなー?」
思い付いたのは、やはり瞑想することだった。
久しぶりの瞑想だなぁ。緊張とワクワクが合わさって、どこか不思議な気分になる。
瞑想を開始する。街の雑音が消えていく。
「今日も売れないか」
一つの声に俺は反応する。
「やっぱり、灰色の宝石じゃあな。仕方ないのかもしれないな」
それ、ちょうど俺が欲しい宝石だ!と思って、瞑想をやめる。
スピアには悪いが、一足先に宝石を買うことにしよう。そう決めた。
さっきの声の主はどこだ?あそこだ!古い宝石商のお店の前に佇んでいる。俺はダッシュで駆け寄っていった。
「お兄さん、さっき灰色の宝石がどうのこうの言ってなかったか?」
「ああ、言っていたが、あんたは誰だ?私はヤンガスと言う」
「俺はケン。灰色の宝石を買いたいんだ」
「ええ!?それは本当かい?それなら渡りに船だよ、是非見ていってくれ」
「おい、ケンとやら」
近くで話を聞いていた別の宝石商が、話しかけてきた。
「灰色の宝石は他所じゃもっと安く買えるぜ」
「うちは、灰色の宝石に誇りを持っている。他の宝石商じゃ手に入らない灰色の宝石を売っている自信がある!」
「それなら俺は、ヤンガスのお店で灰色の宝石を購入したいな」
「余計な発言だったか。でも他にも宝石商はいくらでもいることを、忘れないでくれよ」
そう言うと、別の宝石商は帰って行った。
「さあ、店に入って、思う存分見ていってくれ」
「是非、そうさせてもらうよ」
ヤンガスのお店の宝石は多種多様なものがあった。そこで目を引くのが、灰色の宝石の並んだボックスだった。