アップルマンゴーの木刀
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「これからどうするの?」
スピアの質問に、俺は
「第五の街へ行きたいと思う」
と答えた。
「第五の街はどんな風なのか、知っているの?」
「ああ、宝石の産出がある街だ」
「宝石?なんだかワクワクするね」
「ただ距離も分からんし、今日のところはギッシュで一晩過ごそうと思っている」
「他には?」
「そうだな。今日のところは、初心者の鎧の修理とアップルマンゴーの幹を加工して、木刀を作ろうと思う」
「りょーかい!」
初心者の鎧はアップルマンゴーの木との戦いで随分消耗していた。初心者の鎧なので、壊れることはないが、修理が必要だった。だから、いつも通りメーターの振り切ったところで、修理していく。
ヒュ、グイーンと針がメーターを振り切ったところでハンマーを打ち下ろす。三回ほど必要だったが、見事に全てメーターを振り切っていた。
初心者の鎧はというと、弱点露出が付き、心臓の部分に大きな穴が空いていた。
これだけはっきりと弱点露出していると、装備する気も起きない。まあそうでなくても、初心者の鎧は武器として使うつもりだが。
続いて作成するのは、アップルマンゴーの木の木刀だ。同じようにメーターが振り切った時に、ハンマーを打ち下ろす。アップルマンゴーの木は刃物に強いようだ。ハンマーを何度も打ち下ろす必要がある。
そうして出来たのがアップルマンゴーの木刀だ。デバフが付いて、斬撃無効になっている。本来なら刃物を使ったのと同じくらい、鋭利なのだろうが、木刀らしく刃の部分は潰れていた。
「別に斬撃が欲しかったわけじゃないから、いっか」
「なになに、斬撃が付くところだったの?」
近くで見学していたスピアが言う。瞑想でもしていれば良いのに、物好きな奴だ。
「ああ、思った以上に鋭利にすることが出来るらしい。俺のは失敗に終わったけどな」
「どうせいつもみたいにメーターが振り切れるまでやってたんでしょう?」
「もちろん、そうだ」
「武器を作るときは、他の職人さん達に任せれば良いのに」
「俺も最初はそのつもりだったんだが、どうしても自分で作りたくなってさ。だって、どんなデバフが付くかワクワクするだろう?」
「えー、デバフが付くのにワクワクはしないけどなー」
「そうか。今回付いたデバフは、斬撃無効だぞ」
「せっかくの斬撃が無効になっちゃってるじゃん。刃先も潰れてるし」
「でもやりようによっては、凄い木刀かもしれないぞ」
「ふーん、そうなんだ」
スピアはたいして期待していないようだ。
だが、斬撃無効は自分だけでなく、相手にも効くはずだ。今までだって、火傷状態も、暗闇状態も相手にも効果があったからだ。つまり俺の作ったアップルマンゴーの木刀は普通の鋭利な刀と、互角にやりあえることになる。
それならば、斬撃無効はむしろ武器になる。いくら鉄の刀と言っても、鋭利にするためには、切れ味重視で、薄くする必要がある。まともにぶつかり合えば、アップルマンゴーの木刀が鋭利な刀に打ち勝つことが出来るかもしれないのだ。
ふふふふ、と笑っていると、スピアから
「気持ち悪」
と言われてしまった。ショックで歩けないと言うのは冗談だが、そんなところにアックスが現れた。
「よう、お二人さん。久し振りのログインだな」
「ああ、リアルが忙しくてな」
「二人でデートしてたの」
「そりゃ良いな。儂も久しぶりに家内とデートでもするかな」
「アックス結婚していたんだな」
「奥さんのこと大事にしてあげてね」
「当然だ。たまの家族サービスくらいやってやるわい」
「子供はいるのか?」
「子供どころか、孫がいるよ。可愛くてたまらん」
ここでスピアが
「へえ、LGやってる時間あるの?」
「あるぞ。息子夫婦とは離れて暮らしているからな」
「そうなんだ。LGと筋トレばかりで、奥さんに構ってあげないと、メッだぞ」
「ハハハ、向こうも多趣味だから問題ありゃせんよ」
「ところでアックス良いところに来た。俺の作ったアップルマンゴーの木刀と氷の斧とで戦って欲しいんだが、お願い出来るか?」
「容易い。がせっかくの木刀が切断されてしまうかもしれないぞ」
「それを確かめる為のテストなんだ。木刀は大丈夫だと思うから、本気で打ち合ってくれ」
「そこまで言うなら仕方ない。木刀を折るつもりでいくぞ」
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