スピアの気持ち2
ブックマークありがとうございます。
ギッシュは、のどかな街だった。武器商人や防具商人も少ない。
「みんなは武器や防具のメンテナンスをきちんとしているか?」
「私はついつい忘れちゃいます」
「儂はメンテナンスを欠かさんよ」
「あたしも最近はサボりがちかも」
「アックスは良い。だがユミとスピアは今すぐメンテナンスをした方が良いと思うぞ」
「炎の槍や風の弓が壊れてしまったら、悲しいだろ?」
「そうね」
「その通りです」
という事で広場でカンカンと音を出しながら、修理大会が始まった。俺もダガーのメンテナンスをする。しかし、ダガーの耐久値が元に戻っただけだった。
ユミもスピアも修理が終わったようだ。
「耐久力も戻ったし、散策しよう」
スピアに従って、みんなで歩く。八百屋さん、八百屋さん、八百屋さん。八百屋さんばかりだ。
「いい加減、違う店が出ろー!」
とスピアが吠えた時、一本違う道に見えたのが
「スポーツジム?」
だった。
「良いねスポーツジム。行ってみようよ」
「賛成」
「賛成だ」
「賛成です」
全員賛成で、スポーツジムに行くことになった。
「ちなみにみんなのスポーツ体験は、どんな感じ?」
と俺が聞くと、
「私は全然です。ただしリアルで弓道はやっています」
とユミ。
「あたしはバスケにバレーボールをやってきたかな」
スピア談。
「儂は陸上とボディビルを何十年かやっている」
とアックス。
「俺は剣道を九年間やっている」
と俺の発言。
「この中じゃまともに球技が出来るのは、スピアくらいなもんだな」
と俺はため息をついた。
だけど、アックスは、
「スポーツジムには、筋トレ用具が必ずと言って良いほどおいてあるぞ」
と興奮気味だった。
「それなら体も鍛えられるし、いっか」
納得する俺
近づくにつれ、その大きさが尋常でないことに気付く。その、とは、スポーツジムのことである。
「体育館何軒分あるんだ。このスポーツジムは」
アックスが驚くのも無理はない。何せ体育館六十から七十軒ほどの大きさのジムなのだ。こんな田舎のような街に、急に現れるとビックリするに決まっている。
入場料は一日500ゴールドだった。一時間100ゴールドや半日300ゴールドなどがあったが、一番お得なコースにした。
「一日丸々は遊べないだろうけどな」
俺がそう言うと、
「でもとってもお得ですよ」
ユミが励ましてくれる。
それぞれやりたいことが違うので、バラバラに行動することになった。ユミは弓道場へ、アックスは筋トレルームへ行くことになった。そして俺とスピアの二人は、当てもなく彷徨うのだった。
「スピアはバスケ上手だろ?俺と一緒にしようぜ」
とスピアを誘ってバスケを始めることにした。1on1で勝負する。
鎧を脱がずにやったので、第一戦の結果はボロ負けだった。そして靴も脱いでいなかった。自分自身に腹が立つ。
鎧と靴を脱いで、バスケットシューズをレンタルする。スピアも靴を変えていなかったので、今履き替えている。
そこからは、俺の追い上げが凄かった、とだけ言っておく。
あたし、スピア。今日は竹林を抜けて、ギッシュに着き、料理を作って、そして今、スポーツジムにいます。ケンとバスケをしたんだけど、最初は楽勝だった。
でもそれは最初だけだった。鉄の鎧と靴を履き替えたケンの動きは、まるで別人だった。バスケをやっている私でも追い付けない、スピードと反射神経で、得点を積み重ねていく。ディフェンスについてもそうだ。あたしのゴールを容赦なくブロックしてくる。
この時間楽しいな。そんなことを思う。