ビッグヌマエビ狩り
今回のクエストの報酬は、ガスマスクだった。討伐数に関係なく、クエストに参加していなかった冒険者も、住人も貰えたようだった。
ゾンビを何体討伐しても、報酬はガスマスク一つに、落胆する冒険者達が多かった。
一方俺は、そんなもんかと気楽に構えていた。自分がログインしていない時にも起こりえることだから、当たり前といえば当たり前の話だ。
「じゃあ、今度こそ寝よう」
「うん、分かった」
別々の部屋を取り、シャワーを浴びて、眠りにつくケンとスピア。
起きて、いよいよビッグヌマエビ狩りだ。スピアは少し緊張しているように見える。
「どうした?珍しく緊張しているように見えるぞ」
「強敵だって聞いたからね。二人だけでの討伐となると緊張もするよ」
「そうか。でも大丈夫だぞ。星魔法があるからな」
「えっ、何?聞き取れなかった」
「星魔法があるから、安心して良いぞ」
「何があるから、安心して良いって?」
「星まほ・・・っは!」
もしかして星魔法という単語が、聞き取れないようになっているんじゃないだろうか。
「とにかく、安心して良い。とっておきがあるからな」
「それなら、ケンにお任せするよ」
「コラコラ、スピアもちゃんと戦うんだぞ」
「了解です」
ビシッ、っと敬礼するスピア。
そんな話をしながら、俺達は沼地の奥へと入っていった。ビッグヌマエビと遭遇する。
「己で作られた逆刃刀の威力をくらえ」
その瞬間、ビッグヌマエビのハサミと逆刃刀が砕けた。
「なんだと!?」
よく考えてみれば、ビッグヌマエビのハサミから逆刃刀は作っているので、打ち合ったら両方砕けるに決まっているのだ。
「大丈夫?」
スピアが援護に入る。思えばデバフで苦労したのは今日が初めてだった。今まではデバフと言っても何かしら恩恵があった。ただし逆刃刀は斬撃も出来るが、滅法使いづらいし、同じ硬度のビッグヌマエビのハサミにぶつかれば、壊れてしまう脆さがあった。
「大丈夫だ。まだダガーも魔法もある。なんだったら初心者の鎧もあるからな」
「初心者の鎧も武器に分類しちゃうの?どうなってるの、武器構成」
笑いながら、スピアが聞いてくる。
そうしたら俺も笑えてきた。
「そうだな。俺の武器構成はどうなっているんだろうな」
笑顔になる。
「ここからはいつも通りの戦い方でいくぞ!」
そう言うと、俺はダガーを二本投げる。ビッグヌマエビの目に当たり、視界を奪う。
スピアは炎の槍でビッグヌマエビを翻弄している。炎のダメージも着実に入っているようだ。
俺はダガーを八本ジャグリングしながら、ビッグヌマエビに刺していく。そして無理矢理引き抜く。ダガーには、返しがついているので、相当な出血量になった。
最後は星魔法で決める。そう決意して、星魔法を行使する。
「星魔法」
キラキラと光る星魔法がビッグヌマエビを貫いた。
「シュワ、チクチク」
ビッグヌマエビは痛がっているようだ。どうやら星魔法の方ではなく、ダガーを無理矢理引き抜いたことが原因のようだ。
「星魔法」
容赦なく星魔法を連発する。星魔法も相当効いているようだ。
「星魔法」
「星魔法」
「星魔法」
三連発するとビッグヌマエビは倒れた。
ポーンと頭の中で音がする。曲芸師師範がレベル18に精密遠投がレベル4に星魔法がレベル7になった。
ドロップ品は、350ゴールドとビッグヌマエビのハサミと身、一本と一尾だった。ハサミが一本なのは、もう一本のハサミを壊してしまったからだろう。
「すまんな。俺がハサミを壊してしまったからドロップ品のハサミが一本減ってしまった」
「良いよ。別に気にしなくて」
「そんなことより、日本刀壊れてしまったみたいだけど、大丈夫?」
「ああ、逆刃刀か。また作れば良いし、もし失敗しても、他の武器があるから大丈夫」
ここで俺は話題を変える。
「ビッグヌマエビの身で調理頼めるか?俺は二尾持っているんだが」
「任せて。エビフライで良い?」
「おう、よろしく頼む」
沼地から戻って、広場で料理をするスピア。瞬く間にエビフライ三本が出来上がった。
「どうかな?美味しい?」
「うん、美味い!」
泥臭さもなく、普通のエビフライだ。それだけで俺は満足していた。