逆刃刀
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リンの大勝利だった。
「おめでとう、リン」
「おめでとうございます、リンさん」
「二人ともありがとう」
「リンもダガー使いだったんだな」
石畳を歩きながら聞いてみる。
「手持ちがダガーだっただけで、カットラスも使うぞ」
「へー、そうなんですね」
カットラスも武器として存在するのか、良いことを聞いた。この調子だと、サーベルや日本刀もありそうだ。ただし、日本刀が曲芸師に似合うかどうかは別だが。
「さて、帰って一杯でもやるかね?」
とリンが言うと
「さっきの火吹きはなんだ!反則だ、あんなもの」
「あれが曲芸師の戦い方だ、馬鹿者。顔面を火だるまにされなかっただけマシと思え」
「ちくしょー」
「というか住人とコロシアムで戦うことが出来たんだな?」
ケンは疑問をリンに投げ掛ける。
「ああ、普段冒険者をやっている住人はPvPにも積極的に参加していると思うぞ」
ふむ。普段は俺達冒険者とNPCを分ける為に使われる、冒険者という単語だが、やはりNPCの中にも冒険をしている者達がいるらしい。
「それはどれくらいの数なんだ?」
「お前さん達、冒険者に比べれば、全然少ないが数百から数千人いると思うぞ」
意外と多かった。実は知らないだけで、隣のパーティーがNPCだったり、するのかもしれない。
「住人だと見抜く方法はないのか?」
「今のところはないな」
曲芸師ギルドに帰ると、リンがお酒を出してくる。
「昨日はケンの奢りだったし、今日の飲み代はいいや」
とのこと。ユミもタダだ。
カクテルを一杯、二杯と呑んでいく。
「ユミ、今日はほどほどにしておけよ」
と俺が注意すると
「了解です」
とのこと。任せて良いもんか、迷う。
三杯目に口をつけたところで
「これくらいにしておこう、ユミ」
と言うと
「分かりました」
と冷静な返答。
「もう行くのかい?」
とちょっと寂しそうなリン。
「ああ、また酔いが発生しても困るからな」
「私も二日連続は遠慮しておきます」
「お前さん達の居場所はずっとここにあるからな」
と言われ、ちょっぴり涙ぐむ俺。
「分かってるよ。またな」
「では、また今度です」
「ああ、また今度だな」
「この後ユミは予定があるか?」
「はい、弓士ギルドへ行く予定です」
「じゃあここでお別れだな」
「はい、また誘って下さい」
「それは俺からも頼むぜ」
そしてユミと別れた俺は武器作りに勤しむのだった。
使うのは、ビッグヌマエビのハサミ二本。メーターが振り切ったところでコンコンと叩いていく。二時間かけて作ったビッグヌマエビの武器は、ビッグヌマエビのハサミの日本刀と表示された。おいおい俺は曲芸師なんだぞ、と思いながらも嬉しい気持ちがあった。自分で作り出した初めての武器だからである。
性能は、逆刃刀がついた。日本刀の普通に斬る湾曲した外側の部分では斬れず、逆に内側の方が斬れるというものである。
逆刃刀とは、また珍しい性能がついた。デバフをつけようと思っているのだから、当たり前なのかもしれないが。
内側が斬れるということは、つばぜり合いになった時、こちらが危ないということだ。外側は鈍器で叩くような格好になるだろう。これはますます、STR(筋力値)を鍛え上げて逆刃刀でも、相手に効く力を手に入れねばならない。
ポーンと頭の中で音が鳴った。剣職人がレベル-16になっていた。
星の剣もあるが、しばらくはこっちの逆刃刀で良いだろう、という結論に達した。どんなものなのか試してみたい。その欲求だけで俺は草原へと足を踏み出した。
スライムと会う。逆刃刀で斬るというより、叩く。スライムは弾けとんだ。やはり鈍器のような性能だ。まるで、先端の細いハンマーである。
やがて逆刃刀は劣化状態になり、打ち直すことになった。ここは草原でモンスターも出現するが、基本的にスライムしか出現せず、居たとしてもホーンラビットくらいなものである。
劣化状態を直すため、逆刃刀を二度叩く。+10キログラムがついた。それも持ち手の部分についたので、今まで以上に速くモンスターを叩けるようになった。威力が上がっているかは正直分からない。
これで、ホテルに戻ってログアウトすることが出来る。ホテルに戻り、シャワーを浴びてベッドに横になる。そしてログアウトした。
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