リンの涙の理由
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今夜もホテルに泊まる。酔いを発生しているユミが心配だ。
シャワーを浴びて、ベッドに横になる。眠ってしまうと夢を見た。
「この宝石は要らんな」
そう宝石商は言って、灰色の宝石を捨てていく。すると別の宝石商が、
「何が売れるか分かりませんよー」
と言って、灰色の宝石を拾っていく。
「おいおい、金色の宝石とピンクの宝石、白の宝石と黒の宝石は使い道がなくとも、綺麗と言うだけで、買っていく人達がいるんだぜ。それに引き換え、灰色の宝石は、使い道がないだけでなく、収集意欲も湧かない。一部の物好きがコンプリート目的で買いに来るだけだぜ」
「それでも買いに来る人がいるんですから、持っておきますよ」
「勝手にすれば良い」
「きっと何かしら効果のある宝石に違いない。大量買いする人が現れるまで、あきらめないぞ」
そう別の宝石商が言ったところで夢は終わった。
「宝石商の人でも捨てる宝石なんだな。灰色の宝石って。いや夢だから分からないけど」
そんな独り言が出てしまった。
でも裏を返せば灰色の宝石は、大安売りされているっていうわけだろう?大チャンスじゃないか。
早く宝石の売っている街へ行ってみたいな、と思う気持ちと、そのためにはもっと鍛練しないといけないだろうな、と思っている。
シャワーを浴びて、目を擦りながらホテルを出る。
今日は誰がログインしているかと、確認してみると、ユミがログインしている。ユミが起きてくるまで、筋トレをすることにした。STR(筋力値)を意識して鍛えることにした。今までは、意識せず、防具の重さで勝手にSTR(筋力値)が上がっていっていると思っていたが、どうやらそうでもないようだからである。上がるには上がっているが、意識していると上がり方が違う気がするのだ。
防具を外して腕立て伏せをする。少しキツイ。やはりSTR(筋力値)は上がっていたのだ。でなければ少しキツイ程度では、済まない。
腕立て伏せの後はスクワットである。靴は石畳なので外すわけにはいかないが、太ももとふくらはぎによく効く。筋トレはやはり辛い。肉体的に辛いのは当たり前だが、精神的に辛いのもある。数をこなすというのは、そういうことだ。
そうして待っているとユミがやってきた。
「おはようございます・・・少し頭が痛いです」
「そりゃ、二日酔いだな」
「はい、ズキズキします」
「銀髪で灰色の目をしている人には共通点がある、それでいいですね」
「ごめん。答えられないんだ」
「それはLGの仕様でですか?」
「ああ、その通りだ」
「なるほど、それなら仕方ありません」
ユミが引いてくれた。
「ユミも筋トレしないか?この前の登山で筋トレの重要性が嫌というほど分かっただろう」
「そうですね。私もご一緒します」
そこからはユミも一緒に筋トレを始めた。三十分を過ぎたあたりで、
「もう限界です」
とユミが言ってきたので、
「俺もちょうどやめようと思っていたところだ。シャワーを浴びてこよう」
と意見を合わせ、促した。
シャワーも終わり、昼食を食べようという話になった。俺の空腹度はそんなに減っていなかったが、ユミに付き合うことにした。
「このあたりに美味しいイタリアンのお店があるんですよー」
「へー、それは知らなかったな」
「あっ、そうだ!」
ユミは何を思い付いたのだろう?
「リンさんも誘いましょうよ」
「良いな、それ」
曲芸師ギルドは道を二本挟んで、まだまだ先なので、先にお店だけ確認しておく。
「ここです」
「随分ボロ・・・んんっ!素朴なお店だな」
「ですよね。本音と建前は必要です」
じゃあ、リンを迎えに行こうという話になった。結構歩いたところにある曲芸師ギルドは、外観も内実も綺麗だ。きっとリンが掃除を頑張っているからだろう。
「こんにちは、リンさん。昨日はご面倒をおかけしました」
「こんにちは。別に構いやしないさ」
「それでですね。今日は、リンさんと一緒に食事会でも開こうと思いまして、いかがでしょう?」
「うーむ。いやしかし、店番があるもんでな」
「俺とユミしか使ってないんだから、店先に臨時休業の紙でも張っておけばいいさ」
リンは涙をこぼしながら
「そうか。それなら行けないことはない」
と言った。
慌てたのは、俺とユミである。リンの近くに立ち寄って背中をさすりながら
「どうした?リン」
とか
「何かまずいことでも言いましたか?」
と疑問を投げ掛けた。
「いやぁ、嬉しくて涙が出てしまったようだ。こうして食事に誘われるなんて、初めての経験だからな」
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