ビッグヌマエビ狩り
AYAが仮眠から帰って来た。
「いやぁ、お待たせ。あれ?そっちの子はユミちゃんだよね?久しぶり」
「お久しぶりですAYAさん」
「クエスト 要人警護ぶりだね。その後の調子はどう?」
「はい、良い調子です」
再開を喜ぶ二人。
「それじゃあ、ビッグヌマエビ狩りに行こうか」
俺はそう言って、先陣を切った。
「ビッグヌマエビって、要は大きいエビなんでしょ?気持ち悪くないと良いなぁ」
「あ、それ私も思いました。でもきっと気持ち悪いですよ」
女性陣二人はビッグヌマエビの容姿について話している。
「武器を取ってくるらしいから、慎重にな」
「それはダガー使いのケンさんが一番気をつけるべきじゃないですか?」
「それは安心してくれ。全てのダガーに返しがついたから、引っこ抜くには苦戦すると思う」
「でもそれって、自分で引き抜く時も大変なんじゃないの?」
「ああ、そうだ。けど力任せに引き抜くのもありだと思うぞ」
「それはモンスター側に大ダメージですね」
「おう。それを狙っている」
沼地も、膝下らへんまで泥がつくようになってきた。景色は変わらずどんよりと曇ったままの状態だ。匂いは泥の匂いか土の匂いがする。
そんな時に、ビッグヌマエビが現れた。
「ビッグヌマエビの弱点は、魔法と体の足のある部分だ。狙っていくぞ」
「「おー!」」
ビッグヌマエビは、最前線にいる俺を、ハサミのついた前足二本で狙ってきた。
「空中浮遊」
浮きながら避ける俺。
その時ビッグヌマエビの弱点である足のある部分があらわになるのを見逃さなかった。ダガーを五本飛ばす。弱点に刺さった。ユミも矢で弱点を攻撃している。
「へへへ、そのダガーは早く取らないと、継続ダメージが入っていくぜ」
火傷状態と凍結状態が刺さっているので、ビッグヌマエビには、継続ダメージが入っている。
「おまけにこれだ!」
暗闇状態 強 のダガーを投げつける。見事に弱点に刺さり視界が暗闇になったことで混乱しているようだった。
AYAの剣がビッグヌマエビの足を二本切り落とす。
「やっぱり気持ち悪いわね」
「ええ、手足が沢山あって、気味が悪いです」
ビッグヌマエビが混乱している間は、攻撃し放題だった。残り五本となったダガーを、曲芸師らしくジャグリングしながら、弱点へ刺していく。ようやく、冷静になったビッグヌマエビが、ダガーを取ろうと必死になっている。だがダガーを引き抜こうとするだけでも痛みが走るようで、
「シュウゥゥゥ」
と力ない声を発するだけだった。
一方でユミの矢は回収されているようだった。そして矢をこちらへ放ってきた。俺の胴体に命中する、という時に、鉄の鎧がプルンと動いて矢を受け流した。
「そうか、軟化の効果か」
それにしても、軟化のついた鉄の鎧が+15キログラムになっているとは、傍目からは分からないだろう。
ビッグヌマエビから放たれた矢はユミを直撃していた。ユミの体力が二割ほど減る。これはうかうかしていられないぞ、と思った俺は、短期決戦を挑むことにした。
「AYA魔法は使えるか?」
「残念。使えない」
「了解。じゃあ俺はビッグヌマエビの懐に飛び込むから援護を頼む」
「分かった」
俺がビッグヌマエビの懐に飛び込むと、援護として、AYAがついてきた暗闇状態 強 でも認識出来る範囲に俺が来たことで、ビッグヌマエビの闘争本能が刺激されているようだった。
ビッグヌマエビの両手のハサミが、俺を狙ってくる。だが、そこで両腕を切り落としたのはAYAだった。
「まるでミロのヴィーナスね」
そう言って俺にスペースを作る。
後は無属性魔法を、ありったけぶちかますだけだった。
「無属性魔法!」
八回目の無属性魔法でビッグヌマエビは倒れた。
「いよっし!」
「やったね!」
「素晴らしいです!」
歓喜でその場が包まれる。
ドロップ品は350ゴールドとビッグヌマエビのハサミと身が、二本と一尾だった。
ポーンと頭の中で音がする。曲芸師師範がレベル17に。空中浮遊がレベル3に。無属性魔法がレベル20になっていた。
ついに無属性魔法がレベル20になった。進化先が選べるようだ。