ヒトミとの会話
ガラントの広場で待っていると、さっきの三人組が転送されてきた。
「くっそー、負けちまったか」
「ボスモンスターが強かったに過ぎん。次こそ勝つ」
「にしても遅かったよなぁ。あれ?さっき会った人じゃん。情報待ち?」
「はい、夜間限定のボスモンスターについて教えてくれませんか?」
「良いけど、情報料は頂くぜ。1000ゴールドだ」
「分かりました。支払います」
といってゴールドを手渡す。LGでは100万ゴールドまで硬貨が揃っているので、今の1000ゴールドも一枚で渡した。
「じゃあボスモンスターについてだけど、名前はビッグヌマエビだ。名前の通りヌマエビを超デカクした感じだな。こいつも魔法攻撃には弱いが、武器を奪う習性があってな。不用意に武器を突き刺したりすると、引き抜いて自分の武器として使ってしまうんだ。戦闘が終われば武器は返ってくるがな。手も何本もあるから、使った武器全てを使われる時もある」
「弱点はないんですか?」
「おそらくは目と体の足のある部分だ。特に体の足のある部分は剣が刺さりやすい。引き抜かれて持ち武器にされる可能性も高いがな」
ここでアックスが帰ってくる。
「どうだった?」
アックスが三人組に聞く。すると三人組は、首を横に振って、
「ダメだったぜ」
「死に戻りしました」
と近況を教えてくれた。
「ボスモンスターについては、よく聞いておいたよ。明日の朝情報共有しよう」
と俺が言うと
「分かった」
とアックスが頷いてくれた。
この日は解散して、ホテルで寝ることにした。シャワーも忘れず、浴びる。
そして次の日の朝、アックスと合流し、ボスモンスターの共有を行う。リアルでお昼ごはんを食べないといけないので、ここで二人ともログアウトすることにした。
ログアウト後、俺はラーメン屋さんへ急いでいた。今ならまだ間に合うはずだ。ラーメン屋さんへ着くやいなや
「チャーシュー麺大盛で」
と頼んだ。
お昼ごはんを食べ終わると、なんだか眠くなってきた。昼寝もLGでは睡眠として認められるのだろうか?気になる。
洗濯物を取り込んで、折り畳むと、一気に昼寝したい気がしてきた。今日は奈央も休んでいるし、俺も休憩しようとベッドに横になる。VRの機器は外したままだ。
気づくと、夕方の六時だった。夕飯を作って食べる。皿洗いして、お風呂に入ると夜の八時だった。
「さて、LGでもやるかな?」
LGにログインする。ヒトミがいた。
「どうもー、ヒトミです」
「はい、どうも。ヒトミちゃん」
「もー、子供扱いしないでくださいよ、ケンさん」
「それより、今日は何の用?」
「それはケンさんが質問したいことがあるんじゃないですか?」
「ああ、昼寝は寝たことに入るのかな?と思ってさ」
「正解は・・・オッケーです。夜間勤務の方々もいらっしゃいますからねー」
「もしかして今日のヒトミの出番って、これのため?」
「はい、その通りです。疑問を汲み取るなんて有能なゲームでしょう?LGは」
「確かにその通りだ」
「星星の人達について具体的に知ってしまいましたね、ケンさん」
「おう。銀髪で灰色の目をしているってやつだろ」
「イエス!その情報を知っているのはケンさんで五人目です。なお箝口令が敷かれていますので、他のプレイヤーに話そうと思っても話せません」
「便利で良いな」
「LGの秘密ですよ?みんなに話してみたいと思わないんですか?」
「うーん。話してみたくないと言えば、嘘になるが、自分だけの秘密ってのは、気持ちの良いものだと思うぞ」
「それも、そっかー」
「沼地のボスモンスターに挑むつもりなの?」
「ああ、ビッグヌマエビだ。無属性魔法をレベルアップさせるには、ちょうどいい相手だぜ」
「星魔法が、使えるようになると、確信しているみたいだね」
「なんだ、その棒読みは?まさか、星魔法が使えないのか?」
「さあ、どうでしょう?」
「だから、なんで棒読みなんだ?」
「情報を与えないためですよー」
こうしてヒトミの相手をしているだけで、時間が過ぎていくのだった。