みんなでウルフマン狩り
「さて俺は図書館へでも行ってみるかな」
そう言うとスピアは
「それならあたしは荒野へ行ってくる」
と言うので、
「ちょっと待て、一人で荒野は危ないぞ」
と止めた。
「何?心配してくれるの?」
「当然だろ。いくら炎の槍を持っているからって自信過剰だよ」
するとスピアが反発する。
「炎の槍を持ってるからって、調子には乗ってない」
「じゃあ昨日のウルフマンとの対決を忘れたのか?一対多数じゃまだまだ戦えそうにないぞ」
「それならどうするの?着いてきてくれるの?」
「ああ、図書館はやめだ。荒野へ着いていく」
と言い合っていると、
「儂も参加して良いか?」
「私も連れていって欲しいです」
と、アックスとユミ。
「じゃあ、あまり夜遅くならないように出発だ」
四人でパーティーを組んで出発した。
パーティーを組むとどんなメリットがあるかというと、同一のモンスターを倒した時、同じ分だけのドロップ品が貰える。後は、ステータス画面でみんなの居場所を確認出来ることだ。これが意外と役に立ち夜間でもはぐれることはない。
夜の荒野はウルフマンだらけだった。そういえば、最初にウルフマンに会ったクエストも夜だった。
暗視というスキルを持たないため、遠くにいるウルフマンには、命中率が下がる。といっても露骨に外すわけではなく、眼球を狙って投げたダガーが、鼻に当たる程度の命中率の下がり方だ。毎日の瞑想が効いているのかもしれない。おかげで集中出来て、両目を潰すことも出来ているのだ。両目を潰せた時はラッキー。片目だけ潰せた時は普通。両目にダガーを外したときは、鍛練不足として扱う。
両目にダガーを外したウルフマンがこちらへ来る。久しぶりの接近戦だ。反射神経の上げどころだな、と思った。
ウルフマンの爪が顔の近くを通り過ぎる。スキル反射神経と空中浮遊のおかげでなんとかなっているようなものだ。初心者の鎧を取り出して、横殴りする。隠しパラメーターのSTR(筋力値)が上がっているおかげか、想像以上にウルフマンに効いている。
それにしても、初めて空中浮遊を使ったが、妙な感じだ。自分が宙吊りにされているかのような錯覚に襲われた。使いこなすには練習あるのみだ。ということで、現在進行中で空中浮遊を使っている。やはり宙吊りにされている気分だ。襲ってくる爪は反射神経を使って避ける。頭の中でポーンと音がする。反射神経がレベル10、空中浮遊がレベル2になった。
初心者の鎧だけでウルフマンを倒してしまった。流石重量+10キログラム。鉄の鎧は+15キログラムだから、さらに攻撃力が増しているだろう。
初心者の鎧で倒したウルフマンは、よろけて倒れたところを、ここぞといわんばかりに頭を狙って叩き続けたのが効いたのだろう。
すっかり武器として使われるようになった初心者の鎧だが、胸当ての効果で胸元の部分までしかないのが、使い回しやすくて良い。
敵視を使える人間が二人いるので、ウルフマンを混乱させやすい。
「敵視」
とアックスが使ってから、十秒後には
「敵視」
とケンが使うというサイクルで動いていた。それぞれが役割を果たし、最高のパフォーマンスを繰り広げていた。
特にユミは、一撃でもウルフマンに矢を当てれば良いので、荒稼ぎしていた。後方支援とはいえ、その力は馬鹿に出来ない。ウルフマンの両目を潰すこともあった。
「良いぞユミ」
「ありがとうございます」
ウルフマン十五体を倒したところで、今日はお開きになった。俺は十体に関わっていたので、ドロップ品は、2500ゴールドとウルフマンの毛皮、爪、牙がそれぞれ十枚、五枚、三本だった。
マグナスの冒険者ギルドへ行くと、担当はレイアに代わっていた。
「レイア。お久しぶりです」
「良いよ。敬語なんて。もう何回か会ってるんだからさ。もう少し打ち解けようよ」
今まで敬語を貫いてきた俺だが、その一言に折れた。
「分かった。普通に話す。番号札をくれ」
「そうそう。それで良いの!はい、92番ね」
「ありがとう」
一度タメ口になると、気持ちが緩む。しっかりしなくては、ならないな。
少し待つと、
「92番の方ー」
とレイアの声がした。
「はい、よろしく。ウルフマン十体を倒してきた」
「じゃあ2500ゴールドね」
「ウルフマンの毛皮や爪、牙は売らなくて大丈夫?」
「おう。使うあてがあるから、大丈夫だぞ」
「そっか、分かった。ご利用ありがとねー」
「こちらこそ、また今度」
四人分の清算が終わってから、ホテルをとる。
シャワーで体を洗い、着替えてベッドに横になる。そしてログアウトした。