隠しパラメーターの存在
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休憩が終わると、また山頂まで歩く作業の再開だ。直射日光が当たらないので、そこまで汗はかかない。何がキツいのかと言われれば、それは斜面の角度である。登りがかなりキツい。帰り道は降りられるのかと考えるくらいにはだ。
スモール・コングはいつの間にか出なくなっていた。それだけ勾配がキツいということなのか。
「ハア、ハアッ」
息が切れる。それはみんなも同じだった。アックスだけが平常運転だった。
「よし、休憩しよう」
「アックスは、なんでっ、息、切れてないのっ?」
スピアの疑問に
「なんでだろうな?」
と考えるアックスだった。
「毎日っ、筋トレしてるからっ、じゃないか?」
と俺が言うと、
「それだ!」
とアックス。
「みんな筋トレは良いぞ。順調に隠しパラメーターが上がっていたようだな」
本当にその通りで、筋トレ一つでもこんなに変わるものなのか、と感心した。
そうすると、最初はDEX(器用値)を鍛えていて、次に初心者の鎧でVIT(体力値)を鍛え、つい最近は瞑想でMNO(精神値)を鍛えている。どれくらい鍛えたことが身になっているのだろうか?疑問に思う。鉄の鎧も重いから、VIT(体力値)を鍛えることにもなっているだろう。
休憩も終わり、再び山頂を目指す。すると、どこからともなく、甘い香りがしてきた。
「なんだろう、これ。どこかで嗅いだことあるよ」
「どこだったでしょうか?確か家のキッチンかリビングで嗅いだことのある香りですね」
「分かったぞ。蜂蜜だ」
「「それだ」」
「それです」
香りの正体を見抜いた俺は、一気にヒーローになった。この甘ったるい匂いは蜂蜜なのだ。
「凄いじゃないか、ケン」
「本当に凄いですよ、ケンさん」
「やるじゃないの。ケン」
しかしそれは蜂がいることを証明しているようなものだった。蜂蜜は欲しいが数千匹から数万匹の蜂は勘弁願いたいものだ。蜂に気をつけて歩かねばなるまい。
予想に反して、蜜蜂などが来ることはなかった。一体どうなっているんだ?と頂上に到着すると、そこには大きな大きな蜂の巣があった。ただ詰まっているのは蜂蜜だけだ。蜂の子などは、一切いない。その蜂蜜を守るように、鎮座しているのが、シルバービーだった。巨体で150センチメートルはありそうだ。
シルバービーは体全体が、銀でできており、とても硬い印象を受けた。ダガーが刺さるか心配だ。それは他のみんなも同じらしく、シーンと静まり返ってしまった。
「こんな空気じゃいかん。せっかく上手くいくもんもいかなくなる」
アックスの注意喚起を受けて、我に返る。そうだ、出来ることをするしかないんだ。
「シルバービーの装甲が本当にシルバーだとしても、儂の斧で切り裂いてみせようぞ!」
力強く言ったアックス。頼むぞ。
「では、戦闘開始だ」
髪を掻き上げて、視界を良好にする。それからダガーを、シルバービーの両目に当てた。それはユミも一緒で、矢がシルバービーの眼球に当たる。だが、シルバービーは目が見えているように、俺とユミの方へ向かってきた。
その隙をついて、スピアがシルバービーの右目を突いて落とす。ターゲットがスピアに変わった。おしりの針でスピアが刺されそうになる。
「敵視」
アックスからナイスフォローが入る。これでターゲットはアックスに変わった。アックスはシルバービーの左目を切り落としてくれた。
「敵視」
と俺も使ってみるが、反応がない。視界がある時でないと、効かないようだ。
アックスは、シルバービーのおしりの針からなんとか逃げる。ここからは遠距離組の出番だ。ユミは矢を、俺はダガーを飛ばして、じわじわシルバービーの体力を奪っていく。スピアも中距離から安全に攻撃しているようだ。
シルバービーはついに、おしりの針を飛ばしてきた。
「おっと危ない」
側宙で避ける。他のみんなも無事なようだ。
「ここからは短期決戦でいくぞ!」
アックスが気合いを入れる。
「おう」
「はい」
「ええ」
アックスがシルバービーの腕を切り落とす。そして俺のダガーがシルバービーの羽に穴を空ける。一気に均衡が崩れる。総攻撃だ。それでシルバービーは倒れて消えた。
ドロップ品は300ゴールドとシルバービーの羽だった。
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