クエスト スライムを狩れ
朝目覚めると、七時ちょっと過ぎだった。寝ぼけた目を擦りながら、起きる。んー、と背筋を伸ばして、シャワーを浴びると、ようやく目が覚めた。目覚めのコーヒーを頼んで待つ。静かなホテルの一室で、チクタクと時計だけが音を出して動いていた。
コーヒーが届くと、スライムゼリーも用意する。ブラックコーヒーに砂糖とミルクを入れて完成。スライムゼリーを食べながら、甘くなったコーヒーを飲む。その時間は静かで貴重な時間だった。
ホテルを出て、噴水の前に立つ。今日も瞑想しようと決め、座禅を組む。しばらく噴水の音を集中して聞く。
ピコーンと頭の中で音が鳴る。なんだ?と思って確認すると、クエスト スライムを狩れ が始まっていた。時間は今日の夜7時までだ。アックス達にメッセージを送る。
アックスからは
「もう参加しているぞ」
とチャットが返ってくる。
他の三人からのメッセージは、まだだ。待たずにスライム狩りに行く。城壁の周りは既にスライムが狩られていた。草原を少し進んでいき、
「敵視」
でスライムの注目を集める。向かってきたスライムをダガーで順調に倒す。スライムキングが出てくる。スライムキングが出すスライムだけを狙って倒す。だが、
「スライムキングは10pt!?」
それじゃあ仕方ないとスライムキングを倒す。ドロップ品は100ゴールドだった。
その後は、スライムキングを探して倒しまくった。敵視が活きたのは言うまでもない。アクロバットも使って他の冒険者からスライムキングを奪う。ドロップ品は1200ゴールドだった。ポーンと頭の中で音が鳴る。曲芸師師範レベル9、アクロバットレベル18、反射神経レベル7になった。
そして結果は・・・ケンは2位だった。一位はシルバーバレットの長シルバーだった。
「惜しかった」
そう口にすると、今回のクエストの報酬が届いた。二位5000ゴールド、スライムゼリー百個、スキルレベル+5を手に入れた。これで倒したスライムのスライムゼリーも合わせて、食いきれないほどのスライムゼリーが集まった。
ベストスリーまで、顔写真つきで名前が公表されるらしく、さっきから街の中を歩いていると、チラチラと見られた。
「三位になったのは、カイって男か」
見たことのない男だ。これだけ人がいるからな。分からないのも無理はない。
チャットでお祝いが来ていた。
AYA
クエスト二位おめでとう また今度遊ぼうね!
ユミ
クエスト二位おめでとうございます! 次のクエストは負けませんよー。
スピア
クエスト二位おめでとう 怪しい勧誘に気をつけてね。
アックス
クエスト二位おめでとう! PvPを持ちかけられるかもしれないが、素直に断って良いんだからな 気をつけるんだぞ。
嬉しい。四人にありがとうチャットを返しておく。
「ちょっとそこの君。クエストで二位になったんだろう?おめでとう!早速で悪いんだけど、俺とPvPで戦ってくれないか?」
見知らぬ男性に声をかけられる。
「それは良いけど、名前は?」
「リキヤだ。よろしく」
「ケンです。よろしく」
俺の名前は知っているんだろうな、と思いながらも礼儀として挨拶しておく。
「それじゃあ、そこのコロシアムでPvPしよっか」
くだけた感じで話してくるリキヤ。しかし嫌さはない。
ポーンとメッセージが届く。PvP 1v1 武器使用制限なし 以上でよろしいですか? はい いいえ
これには、はいで返す。
「じゃあPvPは十分後だ。それまでお互いにウォーミングアップでもしよう」
「ああ、じゃあ瞑想でもしていようかな」
「な!?瞑想だと!手の内を晒す気は毛頭ないってか。それなら俺は見えないところでウォーミングアップさせてもらうぜ」
座禅を組んで十分後、コロシアムの競技場の中に入る。意外と十分は短かったな、と感じた。
「さあ、勝たせてもらうよ。ケン」
「負ける気はないよ、リキヤ」
さあて、どう攻撃してやろうか?最初に狙うべきは目だ。そう考え、ダガー二本を投擲する。両目に当たり、リキヤは失明する。
「うお、どうなってんだ。これ」
火傷状態のダガーと凍結状態のダガーが当たったので、右目は熱く、左目は寒いだろう。それに継続ダメージも入っている。
リキヤが混乱しているうちに、次の手を打つことにした。酒をリキヤにかけて、火吹きをしようとしたのだ。しかしそれは、すんでのところで思い止まった。曲芸師は人々を楽しませる。その目的を忘れてはいけないと思ったのである。
代わりに、リキヤ相手に玉乗りを始めた。
「なにをする!」
リキヤが必死に振り落とそうとしてくる。その中で、ダガーを取り出し、リキヤの背中や腹へと刺していった。そうして五分が過ぎるころ、リキヤはHPを失って倒れて消えた。
歓声が聞こえる。
「兄ちゃん、どんなスキル構成してるんだ」
「とっても強かったぜ」
「少々残酷ではありましたけどね」
それらの歓声を背にコロシアムを出るケン。
「もう一戦だ!」
リキヤがそう言ってくるが、
「悪いがそんなに暇じゃないんだ」
と言って、追い返す。
他にもPvPの申し込みをしてきた奴がいたが、全て断った。曲芸師は人々を喜ばせるのが仕事。他のことにうつつをぬかしている場合じゃないのである。
冒険者ギルドへ行って、レイアにスライムキングを倒した報酬1200ゴールドを受け取る。




