リンとおしゃべり
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久しぶりに曲芸師ギルドに顔を出すことにした。扉を開くとカラン、カランと音が鳴った。ちょっと変わったな、思いながら、リンを呼ぶ。
「おーい、リン。来たぞ」
「おお、久しぶりだな、ケン。全然顔を見せないから何かあったのかと思ったぞ」
心配しているようだが、声が明るい。無事にやっていると見抜かれたようだ。
リンは銀髪でグレーの瞳、身長は160センチメートルほどだ。今更ながらの紹介だが、どことなくアンニュイな感じをさせる。銀髪とグレーの瞳がマッチしている。
「今日はどうした?」
「いや、特に用はないんだ。おしゃべりしにきただけなんだ」
そう言うと、リンは表情が緩み、笑いだした。
「そうか、そうか。このリンとおしゃべりしにきたのか。良いぞ、付き合ってやる」
なぜか上から目線だが、そこがリンっぽい。
「今日図書館で、きょくげいしってなあに?って本を読んだんだ」
「ふむ」
「そうしたら、曲芸師は人々を楽しませる職業だって書いてあったんだよ」
「ほう、そうか。そこまでたどり着いたか」
「だから、リンのくれたお酒も人々を楽しませる目的で使おうと思ってる。今まで通りモンスターを火吹きで倒す時も使おうとは思ってるけどな」
「うむ。いい心がけだ。そこまで分かっているなら追加で五本お酒を持っていくと良い」
「それといつの間にか、ジャグリング100回また達成しているぞ。報酬の100ゴールドだ。」
「おお、ありがとう」
「して、曲芸師のレベルはどれくらいになった?」
「実はもう曲芸師師範レベル6なんだ」
「なんだ。もう曲芸師師範になっていたのか」
「あまり驚かないんだな?」
「そりゃまあ、ケンならそんなこともあるかもしれないなと思っていただけさ」
「リン・・・俺精進して立派な曲芸師師範になるから。その時は、人々を喜ばせようと思う」
「今その目標を持っているだけで、十分立派な曲芸師師範だよ」
そう言ってお互いに笑い合う。今日曲芸師ギルドへやって来て良かった。
「まあ、お酒でも飲んでいきな」
「こんな真っ昼間からかい?」
「ああ、私達は自由だ」
それでリンと俺はカクテルで乾杯した。
「旨いなぁ。結構良い酒を使っているんじゃないのかい?」
「良いウイスキーを使っているよ」
「そういえば、どうしてリンは曲芸師の受付をやっているんだ?」
「私は・・・そうだね、曲芸師という素晴らしい職業を世に広めたいからだよ」
「曲芸師を世に広めたいからか。それなら俺が一役買っても良い」
「え!?良いのか?」
「さっき言ったろう。俺は精進して立派な曲芸師師範になる。そして人々を喜ばせるんだ」
「そうだね、そうだったね」
リンは涙を瞳にためている。泣き上戸か?
「でも今は真っ昼間からお酒を呑んでいるだけだけどね」
と、リン。前言撤回。ただ感極まっただけだったようだ。
「曲芸師の数は増えてきているのか?」
話題を変える。
「いや全然。ケンとユミくらいだよ。曲芸師をやっているのは」
「そっかー。新規参入が見込めないとなると厳しいものがあるな」
「本当だよ。おかげでいつも暇さ」
「じゃあ今日は来て良かったな」
「ああ、いつでもまたおいで」
そう言われて、俺は曲芸師ギルドを出た。
ステータス画面には、酔いの二文字が加わっている。また図書館へ行く、というわけにはいかないようだ。そこで俺は剣士ギルドの存在を思い出した。行ってみると、
「君は曲芸師ギルドへ行くべきじゃないか?」
と、前と同じように追い返されてしまった。
「なんでだ?剣職人は持っているのに・・・まさか!?」
掲示板などを必死に検索するが出てこない。俺が調べているのは、マイナス値に関することだ。しかし、情報の秘匿のためなのか、はたまた運営の仕業か、それともマイナス値を上げようとしている物好きは俺だけなのか、検索にヒットしない。
でもよく考えれば、剣職人-10なんて、剣士として認めたくないよな。そんなガッカリした気分で俺は街をさまよい、歩いた。そんな時だった路地裏から、ぎゅっと手を一掴みにされると誘い込まれた。
「なんだ!?」
思わず声が出た。
するとそこには子供達がいた。
「なあ、あなた。マイナス値をつけてる職人でしょう?俺達の武器にもマイナス値をつけてくれませんか?」
「「お願いします」」
三人の子供が頭を下げる。一人貧乏そうな子供が混ざっている。
「二つ質問がある。一つ目は、どうして俺がマイナス値をつけれる人間だと分かった?二つ目は、どうしてマイナス値の武器を欲しがる?」
「一つ目の質問は簡単です。剣士ギルドを追い出されていたからです」
そこで一息つくと
「二つ目の質問は、大人達をギャフンと言わせたいからです」
「大人達をギャフンと言わせる?どうやって?」
「マイナス値の大きな武器を大人達に使わせて、何とかして勝つんです」
どうやらこれは一種のイベントらしい。右上にイベント 子供達からの依頼 と出ている。
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