ハードダーツ
夕食を食べて、苺のショートケーキを食べる。お祝いに言っていたが、それにたがわず、苺の大きなショートケーキだった。
「美味しいね」
「そうだな。美味い」
そろそろ出かける準備をしてと、
「いってきます」
「いってらっしゃい」
歩いてバーまで行く。小鳥遊さんはもう来ていた。
「お早いですね」
「誰かさんに負けて、悔しかったからな」
「そうでしたか」
「じゃあまず、ハードダーツを選ぼう」
「分かりました」
と言っても、ソフトダーツに比べてハードダーツは極端に種類が少ない。三種類しか置いていなかった。
「とりあえずこれで」
真っ直ぐなバレルのハードダーツを選ぶ。
「1万円になります」
これでも安いんだろうな、と思う。なぜなら、選手がプロデュースしているダーツは高いからだ。
「伊原さんのところにも、ダーツのプロデュースの話がいずれくるさ」
小鳥遊さんにそう言われて、ドキッっとした。心の中を見透かされたかと思ったからだ。
「その時は、最高のものが作れるようにしますよ」
「よし、それじゃ、ハードダーツやっていこうか」
ソフトダーツよりもハードダーツの方が若干重い。20のトリプルを狙ったが、一本も入らなかった。
「ハードダーツは基本的にブルは狙わないんだ。なぜだか分かるかい?伊原さん」
「えっと、分かりません」
「インブルが50点、ただのブルが25点だからさ。ソフトダーツではブルでも50点だろ?」
「なるほど、そういうことだったんですね」
小鳥遊さんは20のトリプルに一本入れた。
「ソフトダーツより距離は近いが、ハードダーツは的が小さい。20のトリプルに入れるのは至難の技だぜ」
「ではちょっと、集中する時間をくれませんか?その間ハードダーツをして頂いて構いません」
「分かった」
瞑想を開始する。小鳥遊さんの動きに注意して、心の目で見る。
・・・ハードダーツでトンエイティーを出すには、その動きが必要なのか。と、勉強になった。
「もう大丈夫です。やりましょう」
十分ほどで瞑想をやめた。
俺の先攻で、ハードダーツは始まった。リリースの瞬間、指先に力を込める。トンエイティーを出した。
「まさか、信じられん」
小鳥遊さんは絶句していた。そりゃ、そうだろう。さっきまで20のトリプルにすら当てれなかったのだから。
「この調子なら、マジで世界一があり得るぞ!」
かと思えば、急に元気になったりして、忙しない人だ。
「まだ始まったばかりですから」
「それでも、トンエイティーを出したことに変わりはない。逸材だよ、君は」
結局、トンエイティーを六回、ハイトンを十回出したところで、今日はお開きとなった。
「集中したい、と言ってから、動きが良くなったね。何か秘訣でもあるのかい?」
「いえ、単に集中するために、瞑想をしているだけですよ」
動きをトレース出来ることまでは、話さなかった。
「そうか。秘訣は集中力か。あい、分かった。今日はありがとな」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
俺が敬語を崩さないのは、小鳥遊さんが歳上かつ、ダーツ歴の長さが上だからだ。
家に帰ってきたのは、二十二時半だ。
「ただいま」
「お帰りなさい」
奈央は眠らず、俺の帰宅を待っていてくれた。
「夜食にカップ麺でも食べる?」
「食う」
持ってきてもらったカップ麺に、お湯を注ぐ。
「それにしても、今日は疲れたな」
「健二は今日はゆっくり寝た方が良いよ。あたしはLGやるけどね」
ズルズルとカップ麺を啜る。
「そうだな。今日はゆっくりと寝させてもらおう」
歯磨きをして、就寝した。
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