ハードダーツのお誘い
ブックマークありがとうございます。
「ハードダーツは日本では人気がなくてな。ソフトダーツの方が主流なんだよ」
「へー、そうなんですね。それでなぜ私に声をかけたのですか?」
「伊原さんなら、ハードダーツの世界でも活躍出来ると思ったからだよ。一緒にタッグ組んで世界一を目指さないか?」
「それは良いですね。ところで世界大会にはタッグでも出れるんですか?」
「ああ、出れるとも。日本代表として出るんだ」
「へー、興味があります。もう少しお話しを聞いても良いですか?」
「勿論だとも。俺は小鳥遊。そちらの方は?」
「森崎と言います。以後よろしくお願いします。小鳥遊さん」
「それじゃあ、喫茶店にでも移動してお話しの続きをしましょう」
俺がそう提案すると、二人は頷いた。
喫茶店にて。
「さて、ハードダーツが普及していないのには、理由がある。危険さもだが、ダーツショップが儲からないからだ」
「特に演出もなく、点数計算も自分達で行わないといけない。更に、ハードダーツは的が小さく、狙いがつけづらい」
「っと、こんなところだな」
小鳥遊さんが説明を終える。
「じゃあ、どこでハードダーツの練習をするんですか?」
「良い質問だ。俺の行きつけのバーでハードダーツの練習が出来る」
「連絡先だけ確認しておこう」
そう言われて、チャットの交換をした。
「ちなみに賞金ってどれくらいなんですか?」
「世界一になればソフトダーツは1300万円ハードダーツは7050万円くらいだ」
「そんなに違うものなんですか!?ハードダーツに興味が湧いてきました」
「そうだろう?ハードダーツには、夢がある。と言ってもさっきのは個人で挑戦した場合だけどな」
「タッグではそこまでいかないということですか?」
「まあ、そうなるな。俺は日本人初のタッグトーナメントでの世界一が夢なんだよ」
「世界一が目標ですか。良いですね。乗りましょう」
「本当か?助かるよ、伊原さん」
そう小鳥遊さんは告げると、熱い握手をしてきた。
「お二人とも頑張って下さい」
森崎さんも応援してくれた。
「早速、今夜にでもハードダーツの練習を始めよう」
教えられた場所は、俺の家から徒歩30分のところだった。
「ここなら、今夜からでも行けます」
「よし、決まりだな。夜の八時に集合だ。森崎さんはどうする?」
「私は辞退させて頂きます。お二人の練習の邪魔になるといけないので。それと私は、まだまだソフトダーツの研鑽を積まなくてはならないようです」
「そういうことなら分かった。大会終わりだから、筋肉痛に気をつけてな」
「大丈夫です。疲れるほど、投げていませんから」
そう森崎さんが言った後、俺達はそれぞれの帰路へと着いたのだった。
「ただいまー」
「お帰りなさい。ダーツの結果はどうだった?」
「無事優勝したよ。スポンサーもたくさんついてくれたしな」
「優勝おめでとう!お祝いしなくちゃね」
奈央はそう言うと、キッチンから白い箱を持ってきた。
「さて、箱の中身はなんでしょーか?」
「すまん。皆目見当もつかない」
「ヒントはお祝い事です」
「あ、分かったぞ。さてはケーキだな」
「ピンポン、ピンポン。大当たりー。夕食後に食べようね」
「おう」
さては、優勝していなかったとしても、ケーキを食べる予定だったんだろうな。と思いながら、自室で着替える。
「今日は夜の八時にダーツに誘われているんだ。寂しい思いさせて悪いけど、留守番頼めるか?」
「平気!ダーツ頑張ってね」
「それと優勝賞金150万円だけど、何に使おうか?」
「ダーツの会場って日本中各地にあるんでしょ?交通費として貯金しておいたら?」
「ごもっとも。そうさせてもらうよ」
奈央が欲しいものがあれば、買ってあげようかと思ったが、この調子だとはぐらかされて終わるに違いない。