ダーツ大会前夜
「明日、ダーツの大会があるんだって。だから明日、丸一日いないから」
「りょーかい。気をつけて行ってきてね。明日はあたしも、外食にするかな」
「それも良いな」
「んで、今日はLGどうするの?」
「少しやろうと思う。一時間やっただけでも、LGなら五時間分だからな」
「それならあたしは、大事を取って今日は普通に寝るよ」
「分かった。奈央のくれたダーツで一生懸命努力するからな」
「うん」
夕食を食べた後、LGにログインする。
ヒトミとの会話もそこそこにLGを始める俺。
シャワーを浴びた俺は曲芸士ギルドへ急いだ。
「よってらっしゃい!」
曲芸士ギルドの前ではリンが威勢良く、売り込みをしていた。いつもはアンニュイな感じなので、正直驚いた。
「リン、曲芸士ギルドのダーツの機械を使わせてくれ」
「良いぞ。鍵なら開いているから勝手に入って良い。ただし、使用料1000ゴールドは払うことだ」
「分かった。5000ゴールド払う」
「まいどあり。五時間自由に使いな」
「おう」
そう返事をすると、早速ダーツをしに向かった。二時間は自主練に使い、ハンバーガーを食べた後は、瞑想して、リンとの一騎討ちをすることになった。ちなみにハンバーガー代はリンから
「サービスだ」
と言われ、払わずに済んだ。
「まずはいつも通り、カウントアップからするか?」
「いや、リアルでの大会が明日あるから、01とクリケットに絞って相手を頼む」
「分かった。このリン以上の相手はいないだろうからな」
リンの言うとおり、01もクリケットもオンラインでは敵なしだった。リンほどの相手であっても勝ち越す自信があった。
01が始まる。リンの先攻で、一ゲーム目は取られてしまった。あれほど、誰にも負けないと決めていたのに、負けるときは一瞬だ。だが、ゲーム全体で勝てば良いのだ。次はクリケットで俺の先攻だ。容赦なく、トリプルに入れ続けて、俺の完勝だった。俺が先攻の時は01でもクリケットでも、一度も負けていない。後攻でも勝利して、俺とリンのバトルは、俺の勝利で終わった。
こんなことを三時間もぶっ通しでやっていたから、疲れてきた。
料金は、三時間前からリンもやっていたとして、1500ゴールド返ってきた。
「練習付き合ってくれてサンキューな」
「我もダーツをしたかったから、ちょうど良かったぞ」
「明日の大会も万全の状態で挑めそうだぜ」
そう言ってダーツをギュッと握る。スピアにもらった、リアルそっくりのダーツが金属音をあげる。そうだ、スピアの為にも勝つんだ。
「今日はこれくらいにしておくよ。じゃあな」
「ああ、また来ると良い」
この頃には、すっかり元のアンニュイなリンに戻っていた。
ダーツは俺の全勝だった。普段なら適当に手を抜くところだが、大会前日ということもあって、練習試合にも熱がこもった。
ホテルに行き、リアルに戻ると、まだ二十一時だった。
「まだ奈央は起きてるかな?」
リビングに行くと、奈央がいた。
「あ、練習終わったんだ?どうだった?」
「おう。奈央がくれたダーツで絶好調だったぜ。これならホントに明日の大会も優勝出来るかもな」
「そっか。寝る前だけど、コーヒー飲む?」
「いただきます」
奈央がコーヒーを入れてくれる。ホッと一息つきながら、コーヒーを飲む。
「優勝したらどうなるのかな?」
「まずは賞金でしょ。いくら貰えるの?」
「・・・森崎さんから、そういう話全然聞いてないや。参加料もかかるんだよな」
「もう、テキトーなんだから!あたしがウェブで検索してあげるよ」
「よろしく頼みます」
奈央がウェブ検索してくれている隣で、コーヒーを飲み終わってしまった俺は、コーヒーカップを洗いにキッチンへ行く。
「あったよ。150万円だって!」
「ほう。思ったより少ないな」
「それでも、国内の大会にしては一番多いらしいよ」
「俺は世界一を目指しているからな。国内の大会で負けるわけにはいかないな」
「うん。応援してる。参加料は2万円かかるらしいよ」
といったところで、今日は就寝となった。
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