唐揚げ作り
おっと、そろそろ時間だ。
「スピア、おいとまするとしよう」
「うん、リンまたねー」
「おお、またな。ケン、スピア。また楽しみにしているぞ」
リンが見送ってくれた。
ホテルに行き、ログアウトする。
奈央より先にログアウトしたので、料理に取りかかる。今夜は鳥の唐揚げだ。鶏肉を一口大に切って、おろししょうがと醤油に漬け込む。
ここで奈央がやって来た。
「今日は何かなー?」
随分、上機嫌だ。
「鳥の唐揚げだよ」
と教えると、
「唐揚げ好きー!」
とのこと。
「じゃあこっちに来て、手伝ってくれ」
「ラジャー」
右手で敬礼した奈央がやってくる。
薄力粉と片栗粉を混ぜ合わせ、溶き卵に鶏肉を浸してから、つけていく。そして熱した油で五分間揚げる。
「出来た!」
「手を洗って先に食べててくれ。俺は片付けするから」
「うん。それじゃ遠慮なく、いただきます」
油ものの片付けは面倒だ。だがしかし、唐揚げを作ることに決めたのは自分だ。きちっと最後まで、後片付けをする。
後片付けも終わり、俺も食卓に着く。我ながら美味そうな唐揚げだ。
美味いな、と心の中で思っていると、
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったよ」
と奈央が言ってきた。
「そりゃ、良かった」
とだけ、返しておく。
ご飯を食べ終わると、
「食器洗いは任せて」
と奈央が言ってきた。甘えることにする。
「じゃあ、頼む」
俺は瞑想をすることにした。
十分後、瞑想を終え、隣を見ると、奈央も瞑想していた。
奈央の邪魔をしないように、こっそりダーツ道具を持ってくる。
ちょうど奈央も瞑想が終わったようだ。
「ダーツ道具取りにいっといで」
「うん」
その後ガスの元栓を閉めたか確認してから、二人で出かける。
今日も暑い日が続いたようだ。夏だから当たり前だけど。
でも今は違う意味で顔が熱い。奈央と恋人つなぎをしているのだ。
「なあ、奈央。いい加減手を放してくれないか?恥ずかしい」
「ダメでーす。このほうが恋人っぽいから、これで良いんです」
ワクワクの奈央には、何を言っても無駄だった。
十九時半にダーツバーに着いた。森崎さんはもう来ていた。
「こんばんは、早いですね」
「こんばんは、伊原さんも早いですね」
「では、ウォーミングアップにカウントアップでもしましょうか」
「良いですね」
俺は20のトリプルしか狙わない。全弾命中して森崎さんは引いていた。
トン エイティーと機械からいつもの声が出る。
「うしっ!」
LG内でスピアに貰ったダーツのおかげで、調整はバッチリだ。
森崎さんはブルに三本入れて、ハットトリックを出していた。流石プロ、外さない。
奈央も参加し、ブルに一回入れた。可愛い。
「よーし」
奈央なりに好成績のようだ。
カウントアップは、トン エイティーと ハットトリックの出し合いで、結果俺の勝ちになった。
俺は20のトリプルを一度も外さなかった。
「凄いですね!伊原さん。トッププロでもなかなか出来ませんよ」
「そうなんですか?20のトリプルは得意なので嬉しいです」
しかし、トッププロでもなかなか出来ないとなると、世界レベルだ、と言われた意味もよく分かる。
「次は01をやりましょう」
「その前に飲み物を頼んでも良いですか?」
「あ、はい。気がつかなくてすみません。どうぞ。私も頼みます」
せっかくのバーだ。お酒を頼もう。
「ゴッドファーザーを一つお願いします」
「あたしもそれを」
「では、私も同じもので」
タッチパネルを操作してゴッドファーザーを三つ頼む。
「では01ですね。やりましょう」
「「はい」」
森崎さんと奈央が返事をした。