コウの気持ち
「ユミも知っているのか。じゃあ来たい時は、ケンかユミを頼ると良い」
「分かりました」
そんなリンとコウの会話を聞きつつ、ダーツに集中する。もはやケンは、カウントアップでは20のトリプルしか狙わなくなっていた。しかも一本も外さない。
自分でも絶好調過ぎると思う。後はリアルでダーツをするときにどう緊張をほぐすかだが、それには瞑想が一番だと思っている。
俺はもうこの時点で、ダーツプロになることを決意していた。そうと決まれば話が早い。誰にも負けなければ良いのだ。
これは容易なことではない。特にクリケットの後攻を引いた時なんかは、相手のミスを願うしかない。それでも負けないと決めた以上、負けないように戦うしかない。
プロはどんな人達がいるのだろうか。楽しみで仕方ない。
そんなこんなでオンラインのダーツをしていると、リンから声がかかった。
「熱中するのは良いが、せっかくのコーヒーが冷めてしまうぞ」
そうだった。すっかり忘れていた。
「サンキュー。リン」
温くなったブラックコーヒーを飲む。苦いけど、それが良い。
「コウはリンとおしゃべりしていると良い」
とアドバイスしてダーツに戻る。
ダーツがオンラインにつながっているという話だが、これはリアルのダーツの機械ともつながっている。おかげで対戦相手には困らない。
真剣に遊んでいると、スピアからチャットが入った。
「今から曲芸師ギルドに行っても良い?」
「良いぞ」
「じゃあ十分後くらいに着くね」
「了解」
「リン。今からスピアが来るそうだ。良いか?」
「ああ、大歓迎だぞ」
「ありがとう。十分後くらいに来るそうだ」
「了解した。さあ、続きを話そうぞ。コウ」
リンとコウも良い感じでおしゃべり出来ているようだ。
僕はコウ。
ケンお兄ちゃんに連れられて曲芸師ギルドにやって来た。ギルド長のリンお姉ちゃんは親しみやすく、話していて飽きない。例えば
「トマトレタスハンバーガーを作るのは、どうやって思い付いたんですか?」
「ケンにハンバーガーの存在を知らされてな。だけどその時は、コッペパンにハンバーグを挟んでしまってな。大笑いされたもんだ」
「確かにLGになかった食べ物ですものね。コッペパンに挟んでしまうのも無理はないと思います」
「そうだろう。大笑いされたことが未だに忘れられないんだ」
とか
「コウは爪使いだろう。使い勝手はどうだ?」
「はい、使い勝手はとても良いです。接近戦が得意なので合ってる感じですね」
「ほう。接近戦が得意とな。実はここに度数の高い酒があるんだが」
「未成年にお酒をすすめるな」
とケンお兄ちゃんが会話に入ってきたりと面白くなっている。
「なあに、火吹きを教えようとしただけだ」
「それは曲芸師の技だろう」
「そうだった。すまん、コウ。教えられない」
と謝られたりした。
僕としては、火吹きにそんなに興味があったわけじゃないから良いんだけどね。
そんな風に楽しくお話していると、スピアお姉ちゃんがやって来た。
「ども、お酒を一杯貰える?」
「ああ良いぞ。お任せで良いか?」
「はい、お願い」
そうしてスピアお姉ちゃんは、僕の隣の席に座った。
「コウ君もいたのね?」
「はい、ケンお兄ちゃんと一緒にハンバーガーショップを手伝いました」
「それで、曲芸師ギルドに招待されたわけか。納得、納得」
スピアお姉ちゃんも砕けた感じで話しやすいです。そんな感じで僕の気持ちは終了です。