コウと曲芸士ギルド
それからは図書館らしく、黙読しながら朝を待った。朝になると、俺は本を返却し、コウに声をかける。
「俺は行くところがあるけど、コウはどうする?」
「僕もケンお兄ちゃんに着いていこうかな?」
「分かった。じゃあお手伝い要員だな」
「?」
首をかしげるコウ。分からないのは当然だ。
「じゃあ、曲芸師ギルド前に行くぞ」
「うん」
曲芸師ギルド前、ハンバーガーショップが混雑していた。
「今から、あのハンバーガーショップのお手伝いをする。良いか?コウ」
「うん、勿論だよ」
「リン。手伝いしに来たぞ」
「おお、ありがとう。ん?その子供はどうした?兄弟か?」
「いや違う」
「初めまして、リンお姉ちゃん。爪使いのコウです」
「初めまして、曲芸師ギルドのギルド長をしているリンだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「ということで、俺とコウの二人でハンバーガーショップを手伝うぞ」
二時間後。ハンバーガーショップは閉店となった。
「二人ともありがとう。報酬は何が良い?」
「俺はいつもので、コウはトマトレタスハンバーガーとジュースで良いんじゃないか?」
「うん、僕はそれが良いです」
「分かった。我に任せておけ。ようこそ、コウ。我が曲芸師ギルドへ」
「どうだ、コウ?爪士ギルドと違いはあるか?」
「うん。あれが爪士ギルドにはない」
と言って、指差したのは、ダーツの機械だ。
「あれは最近導入されたんだ。ダーツ機だぜ」
「へえ、ダーツですか?」
「興味があるなら、コウもやってみるか?」
「ううん。遠慮しときます。僕にはトマトレタスハンバーガーがありますから」
そこへリンがやって来て、
「二人とも飲み物は何が良い?」
と聞いてきた。
「俺はブラックコーヒーを頼む」
「僕はオレンジジュースを頼みます」
「はいよ。コウはタメ口でも良いんだぞ」
「ありがとうございます。けど、これは僕のアイデンティティーみたいなものなので」
「なあに、強制はしないさ」
そう言って奥に引っ込むリン。
俺はオンラインでダーツをしていた。連戦連勝だ。
「もしかして、ケンお兄ちゃんってダーツがとても上手いんですか?」
「おう。なんでも世界レベルらしい」
「そんなに凄いんですか!?もしかしてプロですか?」
「いいや、アマチュアだ。まだ始めてから三日目だしな。リアル換算だと」
「たった三日間でそこまで上手くなったんですね。凄いです。尊敬します」
「アハハ、ありがとう」
そういえば瞑想するのを忘れてたな、と気づく。それでもこの結果なのだから、ダーツが凄く上手いのだろう。
「はいよ、トマトレタスハンバーガーとオレンジジュース。ブラックコーヒーお待ち」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
俺達は礼を言って、一口飲む。うん、入れたてだから、熱くて飲めない。俺もジュースにすれば良かったかな?コウはゴクゴク飲んでいる。そして、トマトレタスハンバーガーにかじりついた。
「美味しい!」
「そりゃ良かった。作ったかいがあるよ」
「本当に美味しいです。毎日食べたいくらいですよ!」
リンはいつものアンニュイな表情でコウを見ている。だが、口元がほんのり笑っていることに、俺は気づいた。
「リンも喜んでいるみたいだぞ。コウ」
「ホントですか?それなら僕も嬉しいです」
「ハンバーガーショップのお手伝いという貴重な経験を積ませてもらった上に、トマトレタスハンバーガーまで頂いて、有難いです」
「そうか、そうか」
リンが相づちを打つ。
「それで、また曲芸師ギルドへ来ても良いですか?」
「ケンかユミの付き添いなら良いぞ」
「あ、ユミって言っても分からないか?」
「いえ、ユミお姉ちゃんも知っています。フレンド交換もしているので、バッチリです」
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